吹き付ける風が肌寒さを感じさせる中、イレギュラーなシーズンとなった今年も、伝統の一戦は無事に開催された。ここまで唯一負けなしで首位に立つ早大は、堅い守りで白星を重ねる慶大と対戦。前半、慶大がPGで先制するが、その後早大がディフェンスからリ…

 吹き付ける風が肌寒さを感じさせる中、イレギュラーなシーズンとなった今年も、伝統の一戦は無事に開催された。ここまで唯一負けなしで首位に立つ早大は、堅い守りで白星を重ねる慶大と対戦。前半、慶大がPGで先制するが、その後早大がディフェンスからリズムを作り出し、12-6で折り返す。迎えた後半、16分に早大がPGを決めると直後に慶大がトライ。4点差まで追い上げられるものの、26分にも追加点を挙げダブルスコアで試合終了。伝統の一戦を制し、6戦全勝で宿敵・明大との試合に臨むこととなった。

 試合開始直後は、両者譲らぬ展開が続く。先に得点したのは慶大。自陣深くでの反則からPGを決められてしまう。追いつきたい早大は19分、敵陣5メートルの位置でラインアウトを獲得し絶好のチャンスを迎えた。ラインアウトから右に展開したあと、SO吉村紘(スポ2=東福岡)がスペースを突いてインゴールに飛び込み、5-3と逆転に成功。その後は自陣でプレーする時間が続き、一時はゴール前数十センチメートルのところまで攻め込まれた。しかし、早大は集中した守りでトライを阻止する。そして32分、左右に展開しながら前進し、FB河瀬諒介(スポ3=大阪・東海大仰星)の的確なパスからWTB槇瑛人(スポ2=東京・国学院久我山)がディフェンスを振り切りトライ。難しい角度からの吉村のゴールキックも成功した。前半終了間際、再び反則から慶大にPGによる得点を許したものの、12-6とリードして前半を折り返す。


決定力の高さを見せつけた槇

 後半は、序盤からキックで陣地を取り合う展開となる。8分、早大は反則により自陣5メートルでのラインアウトを与え、ゴール際まで迫られるが、粘り強いディフェンスでインゴールを割らせない。そして15分、敵陣に少し入った位置でペナルティーを獲得し、6点差を踏まえてショットを選択。吉村が確実に決め、15-6とする。しかし、続く16分、慶大選手のキックチャージを受けて早大はたまらず反則を犯す。自陣5メートルまで迫られ、最後はモールで押し込まれて被トライ。15-11となる。点差を突き放したい早大は22分、ラインアウトからFWとBKを織り交ぜた早大らしい攻撃を重ねる。18フェーズにも及ぶ猛攻の末、最後は河瀬が慶大ディフェンスを突破し右隅にトライ。その後は、両校とも好機を得点に結びつけられず、22-11でノーサイドとなった。


今季初めてFBとして出場し、本領を発揮した河瀬

 4連勝と勢いに乗る慶大相手に勝利を収めた早大。今試合は、慶大のゴール前からのモールの強さと前に出てくるディフェンスに警戒して挑んだという。守備面に関しては、ゴールライン際まで迫られながらも守り切るなど、練習の成果を十分に発揮できたと言えよう。また、攻撃面でも、仕掛ける姿勢を持ち続けてFWとBKが連動したアタックを見せた。加えて、関東大学対抗戦(対抗戦)初出場となったSO伊藤大祐(スポ1=神奈川・桐蔭学園)がビックゲインを見せるなど、新戦力の活躍も光る。しかし、「ジャッカルを何本かされてしまったのは改善ポイント」(NO・8丸尾崇真主将、文構4=東京・早実)と語るように、ブレイクダウンの攻防はさらに強化したいところだ。「まだまだ成長過程」(相良南海夫監督、平4政経卒=東京・早大学院)。奇しくもこれは帝京大戦後の明大・田中澄憲監督と同じコメントである。ここからの2週間でそれぞれがどのような成長を遂げるのかが、早明戦で勝負の鍵を握る。対抗戦全勝優勝へ、早大フィフティーンは走り続ける。

(記事 初見香菜子、写真 安岡菜月、細井万里男)

コメント

相良南海夫監督(平4政経卒=東京・早大学院)※記者会見より抜粋

――試合を振り返って

 両校とも持ち味を出した引き締まった試合で、勝利を収めることができたのは素直にうれしく思っております。

――相手のディフェンスに阻まれましたが、勝因は

 筑波戦が終わってからの2週間、慶應の激しいディフェンスを想定した練習を日々やってきたので、練習したことが出せた結果だと思います。

――SOのハイパントは準備していたプレーですか

 準備していたことです。

――伊藤選手をリザーブにした背景と、バックロー入れ替え起用の背景を教えてください

 その週その週で状態のいい選手を、というのが大前提としてあります。伊藤に関しては、インサイドバックスをカバーできるところとスコアにつながるインパクトを与えられるところが魅力だと思います。苦しいゲームになることが予想されたので、そういう点に期待して彼を起用しました。バックローに関しては、やはりアタックでインパクト与えられ、かつブレイクダウンでボールを取り返すことのできる選手ということでこういう布陣になりました。

――ディフェンスをこじ開けられない中トライを挙げた吉村選手、河瀬選手の評価は

 吉村は岸岡(智樹、令2教卒=現クボタ)など去年までの選手に対するプレッシャーもあったかもしれませんが、ゲームの組み立てに関しても非常に冷静に、かつ周りとのコミュニケーションも練習中から活発にしてくれて、本当に一戦一戦成長していると評価しています。今日もキック・パス・ランをよく選択してくれたと思います。河瀬についてはボールキャリーが魅力だと思うので、(ディフェンスを)こじ開けてスコアしてくれたのは彼の良さが出たんじゃないかなと思います。

――フランカー村田陣悟選手(スポ1=京都成章)の評価は

 大学ラグビーの強度やスピード、テンポに慣れてきて、彼のフィジカルの強さがゲームの中で生きてきていると感じます。今日も彼がゲインする場面がよくあったので、そういう意味では「推進力になる」というのが彼の良さだと思います。

――シーズン当初からチームとして一番成長した部分は

 ゲームの中で修正する力が付いたところと、自分たちがやってきたことをゲームの中で自信を持ってできるようになってきたと思います。

――順調にきすぎていることに懸念はありますか。チーム力をもう一段階上げるために考えていることは

 結果として勝ちを積み重ねているのでそういう風に見えるかもしれませんが、限られた時間の中で飛躍的に成長するというのはなかなか難しいことです。とにかく毎週、前の試合でよかったところはよりよく伸ばす、悪かったところは修正するという、そういうステップを踏んだ結果としてうまくいっているという段階だと思います。次の明治戦に向けても、自分たちがやれることをやれる日数のなかでやるだけですし、その積み重ねです。「結果に一喜一憂しない」というのを選手にも言ってきているつもりなので、我々スタッフも含めて結果というよりも自分たちに意識を向けて今後もやっていきたいと思います。

――ここから早明戦までの2週間、どこを伸ばしていきますか

 これからどんどんタフなゲームになっていくので、成長、修正していく点としては、プレーの選択も含めひとつひとつのプレーの精度を上げていくこと。今日も我慢強いディフェンスができたので、それはさらに成長させていきたいです。ただ今日は規律の部分で乱れたところがあったので、そこは映像をみて課題を洗い出し改善していければと思います。

――早明戦に向けて

 まだまだ成長過程だと思うので、次の明治戦に向けて一日一日いい準備をして、持てる力をぶつけたいと思います。

NO・8丸尾崇真(文構4=東京・早実)※記者会見より抜粋

――試合を振り返っていかがですか

 このようなコロナ禍で試合を迎えられたこと、そして勝利で終えられたことをうれしく思います。本日はありがとうございました。

――競った試合になったのはどこに要因があったと思いますか

 慶應大学さんを圧倒しようと臨みましたが、出足の早い激しいタックルに何度か(トライを)取り切れない場面があったことが、競った試合になった要因かなと思います。アタックでエラーが出るのは想定内だったので、アタックがだめならディフェンスと立ち返る部分を持ち続けられたことが勝因だと思います。

――伊藤選手の評価はいかがですか

 非常に堂々としたプレーをしてくれて心強かったです。もっとのびのびと自由に気にせずやってほしいなと思うので、(伊藤選手に向けて)がんばって(笑)。

――村田選手の評価は

 身体の強さや運動量、アタック・ディフェンス共に激しいプレーができるので、一戦一戦成長していますし、堂々とプレーしていて信頼しています。

――慶應大学のジャッカルを止めていた場面が多くありました。何を意識してプレーしていましたか

 アタックの部分では慶應よりも二人目の寄りのスピードや強さをこだわろうと言い続けたのですが、何本かジャッカルをされてしまったので、そこは良かった部分というよりは改善ポイントだと思っています。今の段階では(ジャッカルを)されたなと思っているので。もっともっと突き詰められる部分だったと思います。

――早明戦に向けて

 2週間あるので、今日出た課題を修正して臨むことと、力の出し合いになると思うので、自分たちから仕掛けてアグレッシブに行くこと。そして攻守ともに我慢強くやりつづけることにこだわっていきたいと思います。

SO伊藤大祐(スポ1=神奈川・桐蔭学園)※記者会見より抜粋

――今日の試合を振り返っていかがですか

 早慶戦という伝統の試合に出ることができて楽しく、うれしい試合でした。まだまだ自分のレベルの低さを感じたのでチームにもっとマッチできるように頑張っていきたいです。

――自分としてはどのくらいやりたいことができましたか

 点数をつけるなら50点くらいかなという感じです。もっと正確なプレーができたところもあったのでそこをしっかりやることと、もっと大胆に行くところはチャレンジしてプレー出来れば、より点数が上がってくるのかなと思います。

――早明戦に向けて

 今日出た自分の課題を修正して、もう一回レベルを上げられるように、自分に全てベクトルを向けて準備をする、それだけだと思います。

 

関東大学対抗戦
早大スコア慶大
前半後半得点前半後半
1210
22合計11
【得点】▽トライ 吉村、槇、河瀬▽ゴール 吉村(3G)
※得点者は早大のみ記載
   

早大メンバー
背番号名前学部学年出身校
久保 優スポ4福岡・筑紫
 後半36分交代→17横山  
宮武 海人政経3東京・早大学院
小林 賢太スポ3東福岡
 後半36分交代→18阿部  
大﨑 哲徳文構3東京・国学院久我山
 後半27分交代→19桑田  
下川 甲嗣スポ4福岡・修猷館
相良 昌彦社2東京・早実
村田 陣悟スポ1京都成章
◎丸尾 崇真文構4東京・早実
小西 泰聖スポ2神奈川・桐蔭学園
 後半36分交代→21河村  
10吉村 紘スポ2東福岡
 後半33分交代→22伊藤  
11古賀 由教スポ4東福岡
12平井 亮佑スポ4福岡・修猷館
13長田 智希スポ3大阪・東海大仰星
 後半40分交代→23南  
14槇 瑛人スポ2東京・国学院久我山
15河瀬 諒介スポ3大阪・東海大仰星
リザーブ
16川﨑 太雅スポ1東福岡
17横山 太一スポ3東京・国学院久我山
18阿部 対我社3東京・早実
19桑田 陽介スポ3愛知・明和
20田中 智幸政経3東京・早大学院
21河村 謙尚社3大阪・常翔学園
22伊藤 大祐スポ1神奈川・桐蔭学園
23南 徹哉文4福岡・修猷館
※◎はゲームキャプテン、監督は相良南海夫(平4政経卒=東京・早大学院)
 
関東大学対抗戦Aグループ得点表(11月23日現在)
チーム勝ち点試合得点失点得失トライ
早大2466002809518543
明大2065012397816137
帝京大16640243211831464
慶大1664022736920440
筑波大1263032181784031
日体大8620470289‐2199
青学大0600672441‐36910
立大0600662378‐3168
勝ち:勝ち点4、引き分け:勝ち点2、負け・不戦敗:勝ち点0、不戦勝:勝ち点4
 
関東大学対抗戦Aグループ星取表
 明大早大帝京大筑波大日体大慶大青学大立大
明大12/6 14:00秩父宮◯39‐23◯33‐17◯不戦勝●12-13◯82‐10◯73‐15
早大12/6 14:00秩父宮◯45-29◯50‐22◯70‐5◯22‐11◯47‐21◯46‐7
帝京大●23‐39●29-45◯54‐17◯98‐1012/6 14:00熊谷◯122‐0◯106‐7
筑波大●17‐33●22-50●17‐5412/6 11:30熊谷◯30-19◯80‐15◯52-7
日体大●不戦敗●5‐70●10‐9812/6 11:30熊谷●0‐74◯32-26◯23‐21
慶大◯13-12●11-2212/6 14:00熊谷●19‐30◯74‐0◯78‐0◯78‐5
青学大●10‐82●21‐47●0‐122●15‐80●26-32●0‐7812/5 13:00大和スポーツセンター
立大●15‐73●7‐46●7‐106●7-52●21‐23●5‐7812/5 13:00大和スポーツセンター

※秩父宮は秩父宮ラグビー場、熊谷および熊谷Bは熊谷ラグビー場、帝京大Gは帝京大学百草園グラウンド、早大Gは早大上井草グラウンド、明大Gは明大八幡山グラウンド、上柚木は上柚木公園陸上競技場、大和は神奈川大和スポーツセンター競技場。