バルセロナからアトレティコ・マドリードに移籍したルイス・スアレスが、早速得点ランク上位を争っている。プレー先がなかなか…

 バルセロナからアトレティコ・マドリードに移籍したルイス・スアレスが、早速得点ランク上位を争っている。プレー先がなかなか決まらなかったエディンソン・カバーニも、マンチェスター・ユナイテッドで点を取り始めた。日本では、セレッソ大阪で活躍したW杯得点王、ディエゴ・フォルランの活躍が記憶に新しい。

 彼らは皆、南米の小国ウルグアイのストライカーだ。人口約340万人の国からなぜ、世界的なストライカーが排出されるのか。その理由から日本サッカーが得られるヒントはないだろうか。ウルグアイサッカーに造詣が深く、選手や指導者へのインタビューを通して世界レベルで活躍する南米サッカーのストライカー事情を研究している、解説者の松原良香氏に話を聞いた。

 環境を整え、才能を確実に吸い上げることで、人口が少なくても多くのタレントを世界に送り出しているウルグアイ。日本がウルグアイのように優れたストライカーを育てるためには、なにをする必要があるのだろうか。


日本サッカーのなかに本当の世界基準をつくるのが大切と、松原氏は言う

 photo by Sportiva

「日本は、実は日本のサッカーをあまり知らないと思います。海外にもっと目を向ければ、日本のサッカーを客観的に見られるし、なにが足りないかを知ることができる。ウルグアイは常にブラジルやアルゼンチンと比較したり、ビッグクラブで活躍する自国の代表選手もチェックして、タバレス監督を中心に協会、リーグ、サッカー界全体で世界におけるウルグアイの立ち位置を理解しています。自分たちに何が必要なのかを意識してきた繰り返しで、今があるわけです。

 そのうえで、日本もウルグアイのように、①ゴールを奪うストライカーの育成とゴールを守るGKの育成強化、②組織論だけでなく個人を伸ばすことに重きを置く、③環境づくり、といった強化プロジェクトが必要だと思います」

 近年では日本人選手も多くがヨーロッパへの移籍を果たしているが、それだけでは足りない。

「やはり選手だけがヨーロッパで勝負しているようではいけない。指導者やマネージメント側の人間も海外に出て、常日頃から本気の勝負をすることが重要です。彼らも欧州の5大リーグの場に出ていけるよう、まずは日本のS級指導者ライセンスをヨーロッパでも使えるようにするなど、環境を整えることが先決だと思います。

 我々が思っている以上に世界のサッカーの流れは速いです。世界との比較で日本に何が足りないのか、本質的なところを理解したうえで、なにを整える必要があるのかを、聞いた情報だけではなく、直接の自分の肌で感じるのが大事だと思います」

 いいストライカーを育てるために特別な魔法はない。必要なのは、本当の世界基準を日本のなかにつくることだ。

「彼らはいいストライカーを育てるために、特別なトレーニングをしているわけではない。例えばスアレスやカバーニは左右両足のシュートに加えて、ヘディングのシュートもうまい。それはヘディングシュートの練習もよくしているからです。ただ、彼らはヘディングの練習が重要だとは言いません。なぜかと言えば彼らにとっては当たり前だから。でも日本人に対して話す時、『ウルグアイの選手はよくヘディングの練習をする』となりますよね。この時点でもう考えている基準が違うわけです」

 近道はない。世界との差を常に比較しつつ、日本のサッカーを知り、日本になにが足りないのかを知ることで、いいストライカーを生み出すための土壌を築く一歩が踏み出せる。小国ウルグアイが生き抜くためにそうしてきたように、日本も本当の意味での世界基準を意識する必要がある。

松原良香
まつばら・よしか/1974年8月19日生まれ。静岡県浜松市出身。現役時代は、ウルグアイのペニャロール、Jリーグのジュビロ磐田など、日本、ウルグアイ、クロアチア、スイスなどの12クラブでプレー。96年アトランタ五輪のU-23日本代表でも活躍した。引退後はサッカースクール・クラブの指導、経営の傍ら、サッカー解説者を務める。18年に筑波大学大学院人間総合科学研究所スポーツ健康システム・マネジメント専攻修士学位(体育学)を取得。現在は博士号取得に向け論文を執筆中。著書にストライカーを研究した「ストライカーを科学する」(岩波ジュニア新書)がある。