優位にあった栃木、終盤の散漫なプレーでリズムを崩す土曜の第1戦では22点差の完敗を喫していた京都ハンナリーズ。第2戦も立ち上がりから栃木ブレックスに圧倒される。栃木は攻守ともに出足が鋭く、特にディフェンスでは猛烈なプレッシャーをかけ、京都の…
優位にあった栃木、終盤の散漫なプレーでリズムを崩す
土曜の第1戦では22点差の完敗を喫していた京都ハンナリーズ。第2戦も立ち上がりから栃木ブレックスに圧倒される。
栃木は攻守ともに出足が鋭く、特にディフェンスでは猛烈なプレッシャーをかけ、京都のボールホルダーにルックアップする余裕さえ与えない。攻撃も渡邉裕規がアップテンポなゲームメークで京都のインサイドを攻め立て、第1クォーターでコートに立った8選手が全員得点。さらには渡邉から熊谷尚也の『和製アリウープ』が飛び出すなど、完全に主導権を握った。
京都は外国籍選手オン・ザ・コート「2」の第2クォーターこそローレンス・ヒルにボールを集めて持ち直したが、「1」となった第3クォーターは高さとパワーのミスマッチを再び突かれてしまう。45-63で第3クォーター終了。この時点で京都に望みはないものと思われた。
第4クォーター、大逆転劇のきっかけを作ったのは栃木の散漫なプレーだった。イージーなパスミスによるターンオーバーを連発し、自らリズムを狂わせる。こうして生まれた綻びを京都は見逃さなかった。岡田優介がリスクを承知で難しい3ポイントシュートを思い切りよく狙い、マーカス・ダブとローレンス・ヒルはジェフ・ギブスとライアン・ロシター相手に一歩も引かずに激しくぶつかり合う。
岡田の3ポイントシュートが大反攻のきっかけとなり、残り7分17秒、フリースローを苦手とするダブが2本ともねじ込んで54-63と点差を1桁にまで縮める。
素早いトランジションを狙ったパスでターンオーバーを連発してしまった栃木は、慌てる必要はないとじっくり攻めるが、ハーフコートオフェンスになると今度は京都のゾーンディフェンスを崩せない。残り5分を切ってようやくロシターがこのクォーター初のフィールドゴールを決め、66-57と持ち直してオフィシャルタイムアウトを迎える。9点のリード、本来の栃木であれば、セーフティとは言わないまでも、十分余裕を持って戦える点差だったはずだ。
強豪の貫禄を見せる栃木だが、京都の勢いが上回る
タイムアウトの後に訪れた短い均衡が崩れたのは残り3分50秒だった。京都の籔内幸樹が放った3ポイントシュートが外れるもダブが長いリーチを生かしてオフェンスリバウンドを押さえ、セカンドチャンスで岡田が3ポイントシュートを放つ。これもリングに弾かれるが、全員がボールウォッチャーになってしまった栃木に対し、京都は最初にシュートを放った籔内がしっかりとゴール下に走っていた。その籔内がオフェンスリバウンドを取ったところでファウルを受ける。
これで栃木はチームファウルが5に到達。以後、じわじわとフリースローで失点をすることになる。ただ本当の意味で栃木を苦しめたのはリバウンドだ。特にオフェンスリバウンドでは、栃木は第3クォーターまでに13本取っていたにもかかわらず、最終クォーターには1本しか取れず、セカンドチャンスが作り出せなくなっていた。
それでも、猛追を受ける中でロシターがミドルジャンパーを沈め、残り2分31秒の時点で70-62とリードを8点に広げる。京都が追い上げるも栃木がしのいだか、と思わせる重要な得点だった。
ところが京都の勢いは止まらない。ここから試合終了のブザーまで、栃木の得点を許さず10-0のランで逆転する。足をつっていた岡田を始めどの選手も疲労困憊であるのは明らかだったが、マイナス要因すべてを気力でひっくり返した。
ゴール下まで切り込んだ村上直からキックアウトを受けた岡田が余裕十分の3ポイントシュートを沈め、続いては岡田が3ポイントシュートを相手に意識させておいてスピンターンで切り込みファウルをもぎ取る。フリースローを当然のように2本とも沈めて67-70。
最大の勝因は勝負どころでの100点満点のディフェンス
残り40秒でヒルが値千金の3ポイントシュートを沈めて追い付くと、田臥からロシターへと繋ぐ栃木の『勝ちパターン』のシュートをダブが叩き落す。このボールを受けた村上がリングへ一直線に走り、これに連動して走った岡田がファウルをもぎ取る。このフリースローもきっちり2本決めて72-70。残り17.9秒、京都がこの試合で初めてのリードを奪った。
京都の最後の守りはマンツーマン。インサイドにボールを入れさせず、ロシターにタフショットを打たせる。これがリングに弾かれてのリバウンドもダブがきっちり抑え(この試合、ダブ17個目のリバウンド)、試合終了のブザーを聞いた。
最後の2つのポゼッションで京都は決定的なブロックとリバウンドを成功させている。猛攻ばかりが目立つが、攻めでは村上がイージーレイアップを落とすなどミスがなかったわけではない。ゴール下のダブを中心とするディフェンスの、勝負どころでの100点満点のプレーが最大の勝因だ。
岡田はシーズンハイの29得点を記録。うち21得点が後半に決めたものだった。代名詞である3ポイントシュートは11本中7本、さらにはフリースローは6本中6本決めている。21得点のヒル、17リバウンドのダブの活躍も光った。
岡田は言う。「だんだんステップアップして、強豪チームと対等に戦えるようになってきた。まだまだ未熟なところもたくさんあるので、常にチャレンジャー精神で戦っていきたい」
栃木は第3クォーターまでは完璧な出来だったが、最終クォーターで7-27という信じられないスコアでの逆転負け。ヘッドコーチのトーマス・ウィスマンは「昨日もゾーンディフェンスを攻められず、今日は修正できるだろうと思ったが、オープンだったシュートを打たなかったり、打っても決めきれないなど、言い訳のしようがない」とご立腹。
確かに終盤、シュートを打つ積極性を欠き、マークの厳しいロシターにボールを託してタフショットを打たせてしまう場面が目立った。ウィスマンが何よりも問題視しているのはこの部分だろう。
京都はアルバルク東京、栃木ブレックスと続く難しい2節を2勝2敗で乗り切った。通算12勝13敗とまだ負けが先行しているが、フィジカルとスキル、そしてメンタルが噛み合い、プレーからも自信が感じられる。今後のリーグ戦、そしてオールジャパンが楽しみだ。