「ボタフォゴを愛するすべての人へ」 そうタイトルを銘打って、本田圭佑がポルトガル語の長文のメッセージを自身のSNSに投稿…

「ボタフォゴを愛するすべての人へ」

 そうタイトルを銘打って、本田圭佑がポルトガル語の長文のメッセージを自身のSNSに投稿した。

 これまで、本田が直接ファンに語りかけるようなことは、ほとんどなかった。多くのサポーターが、キャプテンなのに何も語ってくれない本田に少し物足りなさを感じていたのは事実だ。一部では、多少の皮肉も込めて「静かなるキャプテン」とも呼ばれていた。とにかくチームの中心である彼が何を考えているのか、誰もが知りたがっていて、今回はそれに応える形となった。

 メッセージの中で、本田はボタフォゴの財政難を取り上げ、どうしたらこの困難を乗り越えられるかを、具体的に提案した。サポーターもチームも皆がひとつになり、その場限りではないきちんとしたプランにそって着実に進むことで、健全なスポンサーを呼び寄せることができる――。

 選手がここまで踏み込んでチーム再建を提言することは、ブラジルではまず見たことがない。本田の書いたことそれ自体は、それほど目新しいことではなく、ごく当たり前のことだ。しかし、それをあえて発信した勇気には拍手を送りたい。



ボタフォゴのファンに向けてチーム改革を訴えた本田圭佑 photo by AFLO

 本田がツイートをするやいなや、多くのボタフォゴサポーターが反応した。そのほとんどは、本田がこれほどまでにチームのことを考えてくれていることに対して感謝するコメントだった。「こんなにチームのことを考えてくれるなんて感激した」「選手としてだけでなく人としてもすばらしい」「この際、本田にチームを運営してもらえ」......。

 ボタフォゴサポーターだけでなく、他のチームのサポーターからも称賛の声が上がった。また、元ブラジル代表で現在フラメンゴの背番号10ジエゴもこのツイートにいたく感激したようで、本田のインスタにこうコメントした。

「ありがとう友よ! 外国人がこれほどブラジルサッカーのことを心配してくれるのをうれしく思う。まさに君の言うとおりだ。こうしていけばブラジルサッカーはもっとよくなるだろう。我々ブラジル人も彼をもっと見習って、サッカーの向上に努めていかなければいけない。君と君のチームにとって、いいシーズンになりますように!」

 しかし、この盛り上がりはその1日だけで終わってしまった。翌日には、皆の興味はもう別のところに向かってしまった。とにもかくにも、タイミングが悪かった。

 本田がツイートしたのが11月6日の夕方。その前々日の4日、ボタフォゴはコパ・ド・ブラジルに敗退しており、2日後の8日には次のリーグ戦、バイーア戦が迫っていた。この試合を落としたなら、ボタフォゴは完全に降格圏内に入るという状況だった。そして実際にボタフォゴはその試合を落としてしまった。

 サポーターには不甲斐なさすぎるチームに対する怒りしかなく、本田の再建案は忘れ去られてしまったのだ。

 実際、ボタフォゴは今、がけっぷちに立たされている。

 10月の末、就任から1カ月もしないうちにブルーノ・ラザローニ監督が解任され、その後しばらくは、監督ライセンスも持たないGKコーチがチームを率いていた。ブラジル内外の8人以上の監督に打診したが、ことごとく断られた。

 ようやく引き受けてくれたのがラモン・ディアス。ヨーロッパや日本でもプレーした元アルゼンチン代表のスターだ。失業中だったこともあるが、何よりブラジルサッカーの大ファンであるということで、このオファーを受けたらしい。今シーズンのボタフォゴの監督はディアスで4人目。これほど多く監督の首をすげ替えているのは、セリエA(1部)ではボタフォゴだけである。
 
 ディアスは息子を含む4人のスタッフを連れてくるという条件でボタフォゴにやってきた。しかし就任すぐに喉の手術が必要なことが分かり、初ベンチのはずだった11月17日のブラガンチーノ戦では、息子のエミリアーノ・ディアスが指揮を執った。

 この試合でボタフォゴはまるで子供のようなミスを繰り返し、1-2で敗れた。リードしていたのに結果的に負けたのは今年に入って7度目である。そして順位はついに20チーム中19位となってしまった。

 ブラジルの州立大学の統計によると、現在ボタフォゴのセリエB落ちの可能性は58%。直近のリーグ戦でボタフォゴは2連敗しているが、次節、22日のフォルタレーザ戦を落としてしまうと本当につらいことになる。

 なぜなら、ここまでの対戦相手は中位以下のチームだったが、これからはトップ4を占めているアトレチコ・ミネイロ、フラメンゴ、サンパウロ、インテルナシオナルと強敵との試合が続く。シーズンは2月まであるとはいえ、降格圏から抜け出せなくなることも大いにあり得る。

 本田の呼びかけに対して、チームからの反応はなかった。チーム幹部たちは幹部たちで、11月23日に迫った会長選挙の根回しに忙しい。選手のSNSにいちいち反応してなどはいられなかった。この選挙の後には、幹部役員の顔ぶれも一新される。

 本田の熱いメッセージは空回りに終わってしまった。せっかく投げかけるなら、もう少しタイミングを見計らえばよかったと、残念に思うのだ。