終わってみれば0-2の完敗。メキシコとの差が詰まっていないことを実感させられた文字どおりの順当負けだった。 メキシコは…
終わってみれば0-2の完敗。メキシコとの差が詰まっていないことを実感させられた文字どおりの順当負けだった。
メキシコは、W杯ベスト8こそ自国開催の1986年大会まで遡らなければならないが、ベスト16となると、1994年アメリカ大会から前回ロシア大会まで7大会連続という大層な記録を持つ実力国だ。
2002年日韓共催大会、2010年南アフリカ大会、2018年ロシア大会でベスト16入りしている日本が、目標に定めている国でもある。
体格が似ていることも、"追いつけ追い越せ"の精神に拍車を掛ける。2018年ロシアW杯に出場した日本代表の平均身長が178.8センチで、全32チーム中30番目だったのに対し、メキシコは179.2センチで28位。スタイル的にもパスワークに美意識を抱くサッカーで、シンパシーを感じる。
そのメキシコとどれほどの戦いができるか。目標を「W杯ベスト8以上」(森保一監督)に据える日本代表の現在地を知るうえでも、見逃せない試合だった。
その結果が順当負け。ショックは大きい。森保サッカーに対して懐疑的にならざるを得ない試合となった。

メキシコに0-2で敗れた日本代表
キックオフ当初こそメキシコペースで進んだが、ほどなくすると日本は立て続けに惜しいチャンスを掴んだ。前半10分、鎌田大地が魅せた。左サイドでステップを踏み、チャンスボールを真ん中に送り込み相手を慌てさせる。12分には、原口元気がGKギジェルモ・オチョアを泳がすミドルシュートを見舞う。さらに15分には、鈴木武蔵がGKと1対1になるシーンを作り出した。
となると、話はつい、「ここで1点でも取っていれば、試合の展開は別の展開になっていたかもしれない」とか、「決めるべきところを決めていれば......」という方向に傾きがちだが、日本が絶対に決めなければならないシュートを外したわけではない。原口、鈴木のシュートが決まらなかったシーンは、相手GKの好セーブを称えるべきだろう。
前半10分以降の15分間は、明らかな日本ペースだった。しかし、前半の半ば過ぎから日本は、徐々にチャンスが作れなくなっていく。
そして後半に入ると、流れはメキシコにすっかり傾いた。後半18分にラウル・ヒメネス、後半23分にはイルビング・ロサノに連続ゴールを許すと、反撃はすっかり期待できないムードとなった。
メキシコと日本の差について語ろうとした時、指標となるのはボール支配率だ。56対44。メキシコに試合をコントロールされたことを裏付ける数字だ。もちろん、ボール支配率で劣っても、試合に勝つことはある。支配率が高い方が勝利を収めても、一概にそれを順当勝ちと称すことはできない。例外は多々あるが、同系のサッカーをするこの両者間の戦いにおいては別。重要な物差しになる。
どちらのチームのほうがプレッシングは効いていたか。パスコースが多く、パスがよく回ったか。プレスの掛かりが弱い両タッチライン際を有効に使えたか、等々を知る手がかりになる。もちろんボール操作術の優劣も大きな要素になるが、メキシコを相手に、ゲームをコントロールできなければ、W杯でメキシコ以上の成績(ベスト8以上)は見えてこない。
体格の小さな選手が、技術を活かしパスを繋ぎ、奪われるや、勤勉にプレスを掛け、ボール奪取を狙うサッカー。日本が目指したいことをメキシコにされてしまったという印象だ。メキシコという本家に、伝統の違いを見せつけられたという言い方もできる。両者が対峙したことで、森保采配が抱える中途半端さが浮き彫りになったという感じだ。
この試合、注目された布陣は4-2-3-1だった。3-4-2-1で戦った前戦パナマ戦とは、打って変わった布陣で臨んだ。「いろんな戦い方をしたい」とは、パナマ戦、メキシコ戦を前にした森保監督の弁だが、両者のコンセプトはまさに対照的な関係にある。
パナマ戦のように、最終ラインに人員がダブつきやすい3-4-2-1は、言い換えれば、後ろで守る守備的で、少人数で攻めるカウンター系、速攻系のサッカーに適した布陣である。さらに付け加えるならば、非メキシコ的だ。メキシコを見習うべき相手とするならば、このパナマ戦の戦い方はなんだったのか。
このところ、森保監督はこの2つのコンセプトが異なる布陣を、試合ごとに使い分けているが、このやり方を続けていると、スタイルは定まらなくなる。どちらも中途半端に終わる。練習時間の少ない代表チームの場合はとりわけ、だ。
メキシコがそうであるように、代表チームのスタイルはたいてい普遍的だ。試合ごとにコロコロと変えない。さらに言えば、監督が交代してもコンセプトは保たれる。日本代表には浸透していない文化だ。サッカー協会が一定のコンセプトに基づいて監督探しをしていない証拠だと言っても言いすぎではない。
メキシコはサッカーのスタイルとして、本当に見習うべき国なのか。そこが詰められていない気がする。0-2という結果は、その産物に見える。
「日本と同じロシアW杯ベスト16の国でも、これだけ差があるのだということを全員が自覚して、もっとレベルアップしないといけない。自分たち(日本)がやりたいことをやっていた。奪われた後のプレスであったり......」とは、試合後の吉田麻也のコメントだが、根本的な原因は、コンセプトを試合ごとで変えることにある。
修練されているサッカーと、修練されていないサッカーの差を見た試合。日本代表のサッカーはかくあるべしという方向性が定まっていない、日本の弱さを露呈した試合。メキシコ戦は日本サッカーの半端さを浮き彫りにした試合と言える。