卓球の「Tリーグ2020-2021シーズン」が11月17日、待ちに待った開幕を迎える。未だ収束しない新型コロナウイルス感染拡大の影響で年内はリモートマッチ(無観客試合)となるが、年明けは状況を見極めながら有観客にしていく見通しだ。

先行き不透明な中での開幕ではあるが、リーグ公式戦が行われるのは2019-2020シーズン最終戦が行われた今年2月以来。9カ月ぶりの舞台に選手はもちろん、ファンからも喜びの声が上がっている。

水谷隼・早田ひな 写真:西村尚己/アフロスポーツ


新体制の3rdシーズンでKM東京が3連覇を狙う

 今シーズンのTリーグは今年6月に初代チェアマンの松下浩二氏が退任したのを受け、日本卓球協会専務理事の星野一朗氏が理事長に就任。新体制で開幕することとなった。

参戦チームはこれまでと変わらない男女各4チーム。男子は2連覇中の木下マイスター東京、昨シーズン2位の琉球アスティーダ、さらに岡山リベッツ、T.T彩たまというラインアップだ。

女子も2連覇中の日本生命レッドエルフを筆頭に、2シーズン連続2位の木下アビエル神奈川、日本ペイントマレッツ、トップおとめピンポンズ名古屋がしのぎを削る。

 選手の顔ぶれを見ると、やはり男子チームで抜けているのは木下マイスター東京だろう。何しろ東京五輪代表の張本智和、水谷隼(ともに木下グループ)というダブルエースを擁する。また、今シーズンはTリーグ初参戦となる弱冠13歳の松島輝空(JOCエリートアカデミー/星槎)が加入し話題となっている。

ただ張本は男子ワールドカップを終え、19日に開幕するITTFファイナルズ出場のため開幕戦を欠場。帰国後、12月に合流する予定で、中国現地から「水谷キャプテン、開幕戦勝利お願いします!」というビデオメッセージが届いた。キャプテンとしてチームを率いる水谷も、「開幕戦での注目度というのはすごく大事。これからの1年を測る意味でも大事になってくると思う」と語り開幕戦での勝利と3連覇を誓っている。

水谷隼 写真:アフロスポーツ


戦力アップした琉球アスティーダ

 初年度最下位から昨シーズン2位に躍進した琉球アスティーダは全日本王者の宇田幸矢と同3位の戸上隼輔(ともに明治大学)といった伸び盛りの若手を獲得。

 チームのムードメーカーであり、リオ五輪団体銀メダルの実力を誇る吉村真晴(愛知ダイハツ)を中心に開幕戦から主力をそろえ、昨シーズンは新型コロナの影響で中止となったプレーオフファイナル進出に気炎をあげる。

 岡山リベッツも代表クラスの選手がそろった。エースには丹羽孝希(スヴェンソン)。さらに「世界卓球2020韓国(団体戦)」<3月22〜29日/釜山>代表メンバーの森薗政崇(BOBSON)、キャプテン上田仁(岡山リベッツ)ら主力たちがチームをけん引する。丹羽も張本同様、中国遠征中のため開幕戦には出場しない。

 T.T彩たまは本来ならば、黃鎮廷(香港)やピッチフォード(イングランド)といった国際舞台でも活躍する外国人選手が大きな戦力だ。しかし、新型コロナによる渡航制限で来日の見通しが立たず、彼らが合流するまでは神巧也、松平健太(ともにT.T彩たま)が屋台骨となる。腰を痛めて大事を取っていた神は開幕に間に合った。


選手層の厚い日本生命レッドエルフ

 女子チームは全日本女王で初年度年間MVPの早田ひな、2ndシーズン年間MVPの森さくら(ともに日本生命)擁する日本生命レッドエルフが抜けた存在。東京五輪代表の平野美宇(日本生命)が腰痛で休養中だが、安定感のある前田美優(日本生命)、リオ五輪シングルスベスト8のユー・モンユー(シンガポール)らもいて選手層は厚い。

新型コロナによる渡航制限が緩和されれば、チョンジヒ(韓国)、陳思羽(台湾)ら世界トップクラスの選手たちが加わることとなり、さらに戦力がアップする。

 2シーズン連続2位の木下アビエル神奈川は今シーズンこそリーグ制覇を果たしたいところだ。開幕戦は絶対エースの石川佳純(全農)が女子ワールドカップ、ITTFファイナルズの中国2連戦に出場のため、木原美悠(JOCエリートアカデミー/星槎)、長﨑美柚(JOCエリートアカデミー/大原学園)の高校生コンビが留守を預かった。

「Wみゆう」の愛称で呼ばれる2人は2019年の年間王者を決めるグランドファイナル女子ダブルスの優勝ペア。1試合目のダブルスを取って波に乗りたい。

早田ひな 写真:西村尚己/アフロスポーツ


新型コロナの影響で海外選手の来日にハードル

トップおとめピンポンズ名古屋でも世界ランク上位の鄭怡静(台湾)、ハン・イン(ドイツ)といった主力の海外勢を欠いて開幕戦を迎える。来日が叶うまでは戦力的に厳しい状況だが、異質ラバーの使い手として知られる出澤杏佳(大成女子高校)ら日本人選手がチーム力を結集して乗り切る意気込みだ。

 日本ペイントマレッツも加藤美優(日本ペイントホールディングス)が中国遠征中のため、エース不在の開幕戦となる。世界ランカーのフォン・ティエンウェイ(シンガポール)との契約継続に加え、リオ五輪団体銀メダリストで女子選手には珍しいペン表のシャン・シャオナ(ドイツ)を獲得。だが、こちらも開幕戦には出られず、最下位脱出の鍵を握る実質的な戦力補強は先送りされた格好だ。

 リーグ開幕に先駆け12日に開かれた記者会見では、宮﨑義仁理事長補佐から「すでに入国をして2週間の隔離中の(海外)選手が数名いるという報告は受けています」との説明もあったが、開幕戦の合流はほとんどのチームで間に合わないと見られる。

異例づくしの3 rdシーズンは2021年3月まで開催の予定。白熱のレギュラーシーズン、そして昨シーズンは実現しなかったプレーオフファイナルを目指し男女計8チームが激突する。


(文=高樹ミナ)