1999年にスタートしたJ2リーグは、今年で22シーズン目を数える。J2最大の見どころは、当然ながら「どのチームがJ1…
1999年にスタートしたJ2リーグは、今年で22シーズン目を数える。J2最大の見どころは、当然ながら「どのチームがJ1に昇格する権利を手にするのか?」という点になるが、もうひとつ無視できない注目ポイントがある。
それは「誰がJ2の得点王に輝くのか?」という点だ。

群を抜くスピードでゴールを量産した札幌のエメルソン
「得点王を擁するチームは昇格の確率が高い」とは、以前から度々指摘されてきた、いわば勝利の方程式。実際、あらためて過去21シーズンの得点王を見てみると、J2では"反則級"ともいえるレベルの選手が昇格の原動力になっていることがわかる。
たとえば、これまでJ2得点王に輝いた7人の日本人選手は豪華絢爛。
1999年に栄えある初代J2得点王を手にした神野卓哉(大分トリニータ)をはじめ、2008年の佐藤寿人(サンフレッチェ広島)、2009年の香川真司(セレッソ大阪)、2010年のハーフナー・マイク(ヴァンフォーレ甲府)、2011年の豊田陽平(サガン鳥栖)、2014年の大黒将志(京都サンガF.C.)、そして2018年の大前元紀(大宮アルディージャ)といった面々だ。
とりわけ香川は、昇格後の2010年にJ1で11試合7ゴールをマークし、シーズン途中でドイツのドルトムントに旅立った日本サッカー界屈指のビッグネーム。それ以外の選手もJ1で実績を残している実力者ばかりで、しかも全員が日本代表経験者だ。
ちなみに初代J2得点王の神野は、国際Aマッチの出場こそないものの、横浜マリノス時代にハンス・オフト日本代表監督に招集された経験を持つ快速ウインガーで、1992年バルセロナ五輪のアジア予選では日の丸をつけてプレー。ヴィッセル神戸、FC東京時代にもJ1で活躍したオールドファンにはお馴染みの選手だ。
一方、半数以上を占める外国人選手のJ2得点王は、さらに豪華さを増す。
2000年からは8シーズン連続で外国人選手が得点王に輝いているが、その顔ぶれはエメルソン(コンサドーレ札幌)、マルコス(ベガルタ仙台)、マルクス(アルビレックス新潟)、ジュニーニョ(川崎フロンターレ)、パウリーニョ(京都パープルサンガ)、ボルジェス(ベガルタ仙台)、フッキ(東京ヴェルディ)と、いずれもJリーグ史上屈指の助っ人に数えられる面々だ。
そのなかでも、エメルソンとフッキはJ1でも圧倒的な存在感を示したサッカーファンお馴染みのスーパー助っ人。若くして来日し、Jリーグでの活躍をきっかけにステップアップしたという共通点を持つ。
21歳で当時J2の札幌に加入したエメルソンは、いきなり34試合31ゴールを記録してJ2得点王に輝くと、翌年にJ2川崎に移籍して18試合で19ゴールを量産。その実力が認められ、シーズン途中でJ1浦和レッズに引き抜かれた。
浦和での活躍ぶりも、圧巻のひと言だった。在籍した2001年夏から2005年夏までの間に、クラブ史上初となるナビスコカップ(現ルヴァンカップ)優勝とJリーグのステージ優勝に大きく貢献。個人としても、2003年にJ1年間最優秀選手賞、2004年にJ1得点王、2002年からは3シーズン連続でJリーグベストイレブンに選出されている。
カタールのアル・サッドに引き抜かれてからは、名前と年齢の詐称や国籍取得問題でそのキャリアに傷がついた格好だが、それでも2012年にはコリンチャンスの一員として来日し、クラブ世界一を決めるクラブワールドカップで優勝を果たすなど、日本で残したインパクトは申し分のないものだった。
2005年に18歳の若さで川崎に加入したフッキは、さらにその上をいく。来日3年目の2007年にJ2東京ヴェルディにレンタル移籍すると、規格外の決定力を披露。2004年のジュニーニョ(川崎)に並ぶJ2史上最多タイとなる37ゴールをマークし、2008年夏にポルトガルの名門ポルトへと羽ばたいた。
その後の活躍ぶりもすさまじく、ポルトガルやロシアでもリーグ得点王に輝いたフッキは、2014年に地元ブラジルで開催されたワールドカップでもブラジル代表の主軸としてプレー。世界にその名をとどろかせるほどのワールドクラスへと成長を遂げている。
また、加入初年度に34ゴールを記録した仙台のマルコスは、翌年のJ1でも18ゴールを量産した実力者。名前は一文字違いだが、2002年から2年連続でJ2得点王に輝いたマルクスも、昇格後の2004年にJ1で18ゴールを記録して川崎に引き抜かれるなど、昇格の原動力かつJ1でも活躍した助っ人として、それぞれのサポーターに今も愛されている。
もちろん、それはジュニーニョとパウリーニョにもいえる。J1での活躍ぶりはもちろんのこと、彼らがJ2得点王に輝いたことがチームの昇格につながったことは疑いようのない事実だ。
佐藤、香川、ハーフナー・マイク、豊田と、2011年まで4年続いた日本人得点王の時代も含め、2000年以降ではチーム成績が5位に終わった2006年のボルジェスを除き、勝利の方程式は2012年にJ1昇格を果たしたヴァンフォーレ甲府のダヴィまで続いた。
7年ぶりにその方程式が途切れた2013年にJ2得点王に輝いたのは、ジェフユナイテッド千葉のケンペス。以降、勝利の方程式が成立したのは、2015年のジェイ(ジュビロ磐田)、2016年の鄭大世(清水エスパルス)のみ。2018年の大前を含め、2017年のイバ(横浜FC)、2019年のレオナルド(アルビレックス新潟)が得点王を獲得したシーズンに、所属チームの昇格は叶っていない。
残念ながらケンペスは2016年11月28日に当時所属していたシャペコエンセ(ブラジル)で飛行機事故に遭い、他界してしまうという悲劇に見舞われたが、J2得点王たちはそれぞれ他クラブに移籍しても結果を残している。
ジェイは札幌、鄭大世は新潟、イバは大宮。そしてJ3ガイナーレ鳥取→J2新潟→J1浦和とステップアップしていったレオナルドは、今季もゴールを量産してJ1でも通用することを証明している。
果たして、佳境を迎えた今シーズンのJ2得点王に輝くのは誰になるのか?
目下J2得点王ランキングでトップを快走しているのは、京都のピーター・ウタカ。2015年にJ1清水に加入し、2016年には広島でJ1得点王に輝いたほか、FC東京(J1)、徳島(J2)、甲府(J2)でも活躍したお馴染みの元ナイジェリア代表ストライカーである。
4年ぶりに勝利の方程式が成立するのかも含め、2枠を競い合う今後のJ1昇格バトルの行方に注目が集まる。

1999年〜2019年の歴代J2得点王一覧