「終盤には少なくとも4つ、GKとの1対1の機会を作ったが、ことごとく外してしまった。大量得点で勝利すべき試合だったと言え…

「終盤には少なくとも4つ、GKとの1対1の機会を作ったが、ことごとく外してしまった。大量得点で勝利すべき試合だったと言える。それを最後まで接戦にしてしまった」

 スペインの名伯楽、ミケル・エチャリは、パナマに1-0で勝利した日本代表の一戦をそう振り返っている。エチャリは、フアン・マヌエル・リージョ(マンチェスター・シティヘッドコーチ)、ウナイ・エメリ(ビジャレアル監督)、ガイスカ・ガリターノ(アスレティック・ビルバオ監督)など、多くのスペイン人指導者に影響を与えてきた慧眼の持ち主だ。

 そのエチャリは、パナマ戦をどうスカウティングしたのか?



パナマ戦の後半から出場し、流れを変えた遠藤航

「森保一監督が率いる日本は、3-4-2-1の布陣を選択している。中央でプレーを作ってから、サイドに活路を見出す。大まかに言えば、その戦略だったはずだ。

 しかし、前半は戦術的にノッキングしていた。

 パナマは、4-2-3-1で後ろからプレーを組み立て、最前線ではガブリエル・トーレスがフィジカルの能力とシュートに持ち込む技量を見せた。ダブルボランチは強固で、トップ下のアダルベルト・カラスキージャは前線と中盤をつなげていた。プレー全体がいくらかスローだったものの、堅実な攻守を見せ、徐々にペースを握った。

 日本はビルドアップからプレーを作り出そうとするが、パスがつながらない。序盤、植田直通のロングパスから南野拓実が走り込んでシュートにいく形もあったが、攻撃は散発的。チーム全体でプレーが遅く、ゴール前に行きかけても、いつものコンビネーション精度の高さがなかった。

 何より、左ウィングバックの長友佑都のポジションが気になった。高い位置で柴崎岳、久保建英、南野などと連係するプレーが求められたのだろう。しかし、焦りからか、準備段階で立ち位置が前過ぎた。そのため、相手にプレーを予測されてしまっていた。虚を突くように攻め上がって、相手を脅かすことができなかった。

 右ウィングバックに酒井宏樹を起用しなかった理由がわからないが、それもこのシステムが機能しない要因のひとつになっていた」

 エチャリは、前半にチームが不調だった理由を明快に説明している。そして、後半の改善についても語った。

「後半、日本はボランチの橋本拳人に代え、遠藤航を投入している。開始直後は、立て続けにシュートを受けるなど危ない場面もあった。しかし、その後は縦パスを南野がいい形で受ける形が増え、相手を押し込むと、リズムを生み出せるようになる。

 中盤に入った遠藤は、プレーにダイナミズムを感じさせた。攻守両面で、プレーの原動力になった。ポジショニングのよさのおかげで、不調だった柴崎を励ますなど、周りが潤滑に動くように促している。

 しかし、決定的な変化が訪れたのは、後半13分に長友と交代で、原口元気を左のウィングバックに投入してからだろう。

 原口は左サイドでの攻め上がりのタイミングがよく、プレーにスピードもパワーも感じさせた。交代直後、左サイドの攻め上がりで折り返しを室屋成に合わせ、パナマを凌駕。その存在によって、柴崎にパスコースを与え、久保にも攻撃を仕掛ける余裕を与えていた。サイドを破られる不安を与え、中央での優勢をものにしたのだ。

 原口投入から3分後だった。遠藤の縦パスを久保が受け、裏に走り込んだ南野が敵GKに倒されてPKを得る。これを南野が冷静に決め、決勝点となっている」

 エチャリは、原口を投入後、プレー全体が劇的によくなったことを強調した。事実、それ以後は完全に日本のペースとなった。攻守が好転し、あまたの決定機を作ったわけだが...。

「日本は、別のチームになった。柴崎、久保、原口、南野はコンビネーションから何度もゴール前に迫っている。

 77分には交代出場の浅野拓磨が裏へ抜け出し、GKルイス・メヒアに倒され、レッドカードを誘発。数的優位に立ったことで、完全に優勢になった。その後、浅野や三好康児は、GKと1対1になる決定機を少なくとも4回は迎えている。しかし、これを決めることができていない。大量リードで勝つべき試合が、接戦となってしまったのだ」

 エチャリは、その勝ち方に言及した。そして、パナマ戦をこう総括している。

「前半は忘れるべき内容だったが、後半は希望を感じさせた。懸念されるのは、カメルーン戦、コートジボアール戦でも、前後半で大きな波があった点か。攻守が安定していない証左だ。

(戦術や選手の)テストをする、というのは悪いことではない。しかし、戦い方というのは選手の力量やキャラクター次第.。今後は、チームとしてスタイルを確立する試みも重要になってくるだろう」