「球場に来たお客さんを楽しませるピッチングがしたい」 10月26日のプロ野球ドラフト会議で、広島東洋カープからドラフト3…

「球場に来たお客さんを楽しませるピッチングがしたい」

 10月26日のプロ野球ドラフト会議で、広島東洋カープからドラフト3位で指名された八戸学院大学・大道温貴(おおみち・はるき)は、プロ入り後の目標のひとつにそれを掲げた。



広島からドラフト3位で指名された八戸学院大の大道温貴

 今秋は、北東北大学野球の開幕戦となった岩手大戦のノーヒット・ノーラン(7回参考記録)に始まり、第3節の青森大戦の5安打完封、富士大学戦ではリーグタイ記録となる18奪三振をマークするなど、圧倒的なピッチングを披露した。

 ストレートの最速は150キロ。アベレージは145キロ前後だが、ベース付近でも威力が落ちないボールは目を見張るものがある。

「速いです。低めの球は昨年と違って、ちょっと消えるような感じもあって......」

 そう語ったのは、何度も大道と対戦経験があるノースアジア大の杉渕英佑だ。彼のポジションはキャッチャー。チームメイトには来年のドラフト候補で、147キロ右腕の中村彪(なかむら・ひょう)がいる。日頃から中村のボールを受けている杉渕からすれば少々のスピードボールには驚かないはずだが、大道のストレートは「消える」とまで表現した。

 今秋のリーグ戦で大道は36イニングを投げて60奪三振。奪三振率は驚異の15.00を記録した。

 10月31日に行なわれた東北地区大学野球王座決定戦の1回戦。「東北最強」の呼び声高い東北福祉大戦でもその実力を遺憾なく発揮した。5回からマウンドに上がった大道は、4番・小椋元太を得意のスライダーで空振り三振に仕留めると、この回だけで2つの三振を奪う。

 さらに7回から8回にかけては、佐藤悠輝、元山飛優、小椋、楠本晃希と4者連続三振。いずれも全国的に名の通った強打者ばかりで、元山にいたっては今秋のドラフトでヤクルトから4位指名を受けた選手である。

「(元山)飛優と楠本との対戦は本当に楽しかったです。お互いに連絡しあう仲で、意識していたので......」

 公私とも仲のいいライバルとの対決に思わず笑みがこぼれた。

「ストレートはリリースに合わせられているので、(打者には)150キロぐらいに見えているのかなと。今日も力感のないイメージで投げられたので、ああいうピッチングができれば、上(プロ)でもやっていけると思います」

 またひとつ自信を深めた大道だが、プロの世界に向けて戦う準備は着々と進めている。

「今日はカットとかは投げていないんですけど、プロではカットやスプリットがメインになるかもしれないというのはわかっています。もしスライダーが通用しなかった時に使う次のボールも練習しているので、そうなったとしても慌てずにやりたいと思います」

 現在の大道の球種は、ストレートのほかに最も得意としているスライダー、正村公弘監督が絶賛するスプリット、昨年まで決め球に使っていたチェンジアップ、そしてカットボールだ。

 先の東北福祉大戦で延長10回に楠本からこの日2つめの三振を奪ったのだが、決め球となったのはスプリット。大道は「スプリットの精度には僕自身もビックリしています」と手応えを感じている。

 この試合でも6イニングで10個の三振を奪ってみせた。視察に訪れていた広島の近藤芳久スカウトも期待どおりのピッチングに目を細めた。

「ストレートもカットボールもよかったです。先発でも中継ぎでもどっちもできると思います。フォアボールで大崩れするようなピッチャーではないので」

 大道自身は1年目から先発ローテーションに食い込むつもりでいる。その意気込みが伝わったのか、近藤スカウトは次のように語った。

「闘争心があって、うちにはいないタイプ。そういう部分がプロでは大事です。大学生ですからすぐに上(一軍)でと思っています。もう体もできていますし、素材型とか悠長に構えていたら大卒の選手はすぐに終わってしまいますから」

 現在、広島投手陣は大瀬良大地が右ヒジの手術を受け、野村祐輔も10月に右鎖骨下静脈血栓症除去手術を受けるなど、来季のメドは立っていない。当然、1年目の大道にかかる期待は大きい。

 奇しくも今秋のドラフトで、広島は上位5人を投手で固めた。その指名について、大道は次のように語る。

「全員(上位5人)ピッチャーということは"助け"を求められているのかなと思うので、役に立てるように精一杯結果だけを求めていきたいなと思っています」

 次は真っ赤に染まったMAZDA Zoom-Zoomスタジアムで、快刀乱麻のピッチングを期待したい。