「卓球ジャパン!」では「卓球ジャパン!クロニクル」の第5弾として、世界卓球2014東京大会、日本女子31年ぶりの銀メダル獲得への戦いを当時の女子日本代表監督の村上恭和氏(現・日本生命レッドエルフ総監督)をゲストに招き、2週にわたって振り返った。11月7日放送では、いよいよ後編、銀メダルがかかった準決勝の対香港戦に迫った。

準々決勝の対オランダ戦(10月31日放送)で、オーダーで裏をかかれた日本だったが、この対香港戦でもオーダーが裏目に出る。ツインエース扱いの平野早矢香を直前に2連敗している呉穎嵐に当てないように3番に下げたのだが、なんと香港はそれを読んで呉穎嵐を3番にし、平野に当てに来た。

「香港は全員が中国で練習している言わば中国の2軍のようなチーム」(村上氏)という強敵。その強敵がオーダーで定石を崩してなりふり構わず一点を取りに来たのだ。

第1試合は石垣優香が健闘するも李皓晴に0-3で敗れ、第2試合は石川佳純と姜華クンのエース対決となり3-2で勝利。日本1-1香港となったところで、いよいよ勝負の行方を大きく左右する第3試合、平野と呉穎嵐の対戦となった。呉穎嵐は両ハンドで緩急のあるプレーでミスを誘うスタイルで、世界ランキング33位の21歳。

不安は的中し、試合は最悪の展開となる。第1ゲーム、第2ゲームとも逆転で取られゲームカウント0-2と追い込まれてしまったのだ。第3ゲームも出足のスコアは1-4。何をやっても入らない状態。たまらず村上監督がタイムアウト。卓球の鬼と言われた迫力ある表情が「仏像のよう」(MC武井壮)になってベンチに戻る平野。



いつもはベンチでしゃべりまくる平野が「エサの足りない小鳥みたいな顔」(武井)で村上監督に助言を求める姿に、平野本人も失笑。「何で点を取られているのかわからなかった。本当にどうしていいかわからなかったんです」と心境を振り返った。

タイムアウトが明けた後も平野が立て続けにミスをして1-6。

「私の関係者はこのあたりでテレビのチャンネルを変えたと言ってました(笑)」(平野)

その後も差は縮まらず、とうとう4-9。誰がどう見ても絶望的だ。「これは勝てるはずがないと思いましたね。この流れで勝った経験もない」と村上氏が言えば「3-0の完敗、ごめんなさいって感じでした」と平野。

ところがここから試合は思わぬ展開を見せる。平野が取って6-9になったときだった。

「相手が変わったのがわかりました。勝ちたくなって入れにくるプレーになったんです」(平野)

ここから平野は気魄のこもったプレーで1本ずつ返し、とうとう9-10。次のラリーで平野はいきなりレシーブからフォアハンドフリックを決めて10-10!あまりに思い切ったプレーに武井も「うわーっ、危っぶねえ、怖えーっ」と漏らす。当のMC平野も「何でここで思いっきりフリックしに行ったのか自分でもわからない」と不思議がる。勝負の不思議さだ。

この神がかったプレーで追いついた平野が、ついに12-10でこのゲームをもぎ取った。そして第4、5ゲームも取り、とうとう値千金の勝利をものにした。



「必死でした。もう一回やれって言われても絶対できない試合です」(平野)

「1、2ゲームと勝てるゲームを落とした後の3ゲームであんな逆転する試合は経験がありません。私の監督史に残る試合でした」と感極まり涙を拭う村上氏。

平野の奇跡の大逆転劇で2-1とリードした日本、第4試合は石川vs李皓晴。世界ランキングは石川が若干上だが実力は互角。一進一退の試合で第5ゲームまでもつれ込み、最後は11-7で石川が勝利し、世界卓球1983東京大会以来31年ぶりの女子団体決勝進出を決めた。

しかし決勝では中国の壁は厚く、石垣、石川、平野がぞれぞれ丁寧、李暁霞、劉詩ブンに0-3で敗北を喫し、金メダル獲得はならなかった。

「福原愛の欠場で一瞬気持ちがバラバラになりそうになりましたけど、終わってみれば良いチームでしたね」(村上氏)

「今でもよく(石川)佳純と話すんですけど、本当に5人のうち1人でも欠けてたら勝てませんでしたね。(福原)愛ちゃんの思いも背負いながら自分ができることを何でもするという気持ちをみんなが持っていた、本当に良いチームだったと思います」(平野)

気になるのは中国との差だ。「中国との実力差は8:2ぐらいでした」と村上氏。現状は7:3程度に差は縮まっており、これを6:4ぐらいまでに近づけることができれば可能性が見えてくると言う。その鍵は「中国選手は凡ミスをしないので、スピード、回転、コース、逆モーションとかで中国選手が返せないような決定打を磨くこと」と村上氏。日本女子の今後の奮起に期待したい。

番組の最後では突撃取材の第3弾として東京五輪代表の丹羽孝希に迫った。丹羽独特の飄々とした受け答えにMC陣も爆笑。丹羽の魅力が全開のインタビューとなった。

11月14日の「卓球ジャパン!」は、日本女子の8ヶ月ぶりの実戦となる女子ワールドカップの最新試合をDEEP解説する予定。お見逃しなく!