11月7日から15日にわたる9日間、国内最大級のソーシャルデザインをテーマにした東京・渋谷の都市フェス「SOCIAL INNOVATION WEEK 2020」(以下、「SIW2020」)が今年も開催。今年はウィズコロナの時代の都市型イベントとして、渋谷エリアの多拠点会場とオンライン配信を並行し、各コンテンツが展開される。
「SIW2020」の一環として11月12日、スポーツのチカラをテーマに、多様性、公平性、包括性を考えるパネルディスカッション「Next Generations x DAZN presents アカデミー課外授業 スポーツのチカラについて語ろう!」(以下、「スポーツのチカラについて語ろう!」)が学生を対象にYouTube Liveで配信、その模様をFINEPLAYがレポートする。
ストリート界を牽引するBBOY Taisuke、瀬尻稜、YUIが登壇
「スポーツのチカラについて語ろう!」にはスピーカーとしてRed Bull BC One All Stars のメンバーであり、個人としても「Red Bull BC One World Final 2008」日本人初の準優勝という快挙を成し遂げているBBOY Taisuke(ブレイキン)、Street League日本人初出場の経歴を持ち、世界で活躍するスケーター瀬尻稜(スケートボード・ストリート)、世界大会「DOUBLE DUTCH CONTEST WORLD」3連覇という偉業を達成しているプロダブルダッチチームREG STYLEのYUI(ダブルダッチ)という、ストリートスポーツ / カルチャーを牽引する3名が登壇。松岡けい(DAZN Japan Head of PR and Communications)がモデレーターを務めた。
「USオープンで見事優勝した大坂なおみ選手の行動から受け取ったメッセージについて」など、さまざまなトピックについてディスカッションを実施、「スポーツのチカラ」についての熱心な議論が行われた。
松岡けい photo by 金子修平
アクションスポーツの“チカラ”
パネルディスカッションでは、「新型コロナウィルス感染症の拡大によって生活や活動にどのような変化があったか」という問いをいとぐちに、「新しい生活様式」や「オンラインコンペティションが持つ可能性」について語られた。
皆が一様に活動を制限される中で、それぞれがネガティブになるのではなく、ポジティブに「今の状況だからできる活動」を行なっていたという。瀬尻は「撮影を中心に今までのスケボー人生で感じたことがなかったことを、たくさん知ることができた一年」だったと振り返る。
さまざまな大会が中止や延期となる中、新たな試みとして各スポーツで開催されている「オンラインコンペティション」について、BBOY Taisukeは「大会を主催している側でも、出場する側でもあるので両方の気持ちが分かってよかった」と語った。スポーツの特性によってオンライン化の進捗は違えど、「現場の良さを再確認した」という意見や、「これまで世界大会に出場できなかった新たなプレイヤーがオンライン化を機に頭角を表している」といった新しい試みによって発見された新しい価値観が議論の中でいくつも提出された。
また、同時期の大きなトピックとして「Black Lives Matter」のムーブメントに関わるアクションスポーツアスリートの動向についても議論、BBOY Taisukeや瀬尻のSNSでの投稿を松岡が取り上げ、差別や平等についての問題が話し合われた。
議論の中でBBOY Taisukeがダンスを通じて感じた、アクションスポーツの人種や性差を超える(あるいは最初から垣根のないカルチャーである)チカラについて強く語り、YUIは「自分なりにできる身近な範囲で行動を起こすことが大事なのでは」と提言。
後半ではさらに議論を推し進め、いまだ聴き慣れないDiversity Equity Inclusion(多様性、公平性、包括性)という言葉について考えるディスカッションを実施。
それぞれの経験を通じた公平性にまつわる意見を出しあいながら、とりわけ、「アクションスポーツにおける男女の差について」注目して議論が進んだ。
これまでアクションスポーツにおいては性別、さらにいえば障がいの有無に差はなく、競技化が進む昨今においてカテゴリを分けるか否かの議論がはじめて交わされたのだという。
YUIによれば「ダブルダッチは女の子が始めたスポーツだというルーツもあって、大会によっては女の子が必ずチームに入っていることというルールがあり、男女混合のチームが多く、男女別の分け方はしていない」のだという。「チーム競技なので、全員が男性のようにパワフルである必要はないし、それぞれに異なる役割をもって互いに尊重しあうことが最も必要なんです」。
加えて瀬尻もスケートカルチャーにおけるスタイルの差について次のように語った。
「足にハンデがあるスケーターでも、あぐらをかいたような状態で手を使ってスケボーに乗って、一般の選手と一緒に世界大会に出場しています。その選手がかっこいいトリックをメイクすれば会場は盛り上がるし、普通のスケーターとして分けるということはありません」。
それに対して「カルチャーを押し出しているどの競技でも、分けてしまえば逆にそれが差別につながってしまうのでは、と思っている人も多いと思うんです。だからこそ、それがEquityについて難しいところだと思いますね」とBBOY Taisukeもいう。
性差や身体的特徴によってカテゴリを分けるべきか、否かについての結論を出すことは難しいが、松岡による次のような言葉もあった。
「アクションスポーツには、全体的に暖かい雰囲気があるというか、カルチャーの側面があるからこそ、もしかすると他のスポーツよりもDiversity Equity Inclusionに近い何かがあるのかもしれませんね」
それこそが、アクションスポーツが持つ“チカラ”なのかもしれない。
その他にも昨今のSNSで発言することの責任についてや次の世代へ3人が贈るメッセージ、質疑応答などが行われ、パネルディスカッションは幕を閉じた。
いますぐに答えを求めることは、誰にとっても難しいことだが、ディスカッション中に3人が何度も口にした「話し合うことでお互いを認め合い、尊重することで成長し合うことができる」ということは重要な言葉だと感じる。
ライブ配信を見逃した方も、NEXT GENERATIONS YouTubeチャンネルにてアーカイブ配信が視聴可能だ。
ぜひ、この機会に「スポーツのチカラ」、そしてDiversity Equity Inclusionについて一緒に考えよう。
写真左から松岡けい、BBOY Taisuke、YUI、瀬尻稜 photo by 金子修平
NEXT GENERATIONS へのメッセージ
BBOY Taisuke「人間」はひとりひとり多様な価値観を持っていて、ひとりひとりに発言権があると思っています。
人それぞれ考え方も多種多様なので、もし自分を閉ざしてしまっている人がいるのだとしたら間違っていてもいいので、発言をしていくことを大事にしてほしいです。
「言葉を発するというひとつのアクションで何かが変わる」、そう思って生活してほしいと思います。
女性、男性、上司、後輩関係なく思ったことは言ったら良いと思うんです。
それがカルチャーと呼ばれている、僕たちがやっているアクションスポーツの良い部分でもあると思うので、アクションスポーツをやっていない人もそれを上手く使ってほしいなと思います。
BBOY Taisuke photo by 金子修平YUI
コロナウィルス感染症の流行が拡大する昨今で、できなくなったことやネガティブなことに対して目が行きがちだとは思いますが、これまでも時代は変わってきたはずなので、変わること自体は悪いことではないと思うんです。
大きな変化を体験している最中だと考えると、変わることは怖いけれどもこの状況をポジティブに捉えて、前向きに変化を取捨選択していければ良いのではないかと思います。
YUI photo by 金子修平瀬尻稜
いろいろな人と話すといろいろな意見があって、そこにヒントが転がっていることもあります。普段はスケーターとしか会わないけれど、スケボーをまったくしない人と喋ったら、新たなアイディアが生まれることもあります。
時には意見が食い違うこともあるかもしれませんが、それが人間のいいところかもしれません。皆違った環境で生まれて育っているから、考え方もそれぞれで、いろいろな人間がいます。だからお互いに尊敬しあって生きていくことが大切で、お互いに認め合って生きていければ、お互いに成長しあってポジティブに生きていけるのではないかと思います。
瀬尻稜 photo by 金子修平
見学者の感想
パネルディスカッションを見学していた2人のBBOY & BGIRLに今回の感想を聞いた。2人は、BBOY Taisuke、瀬尻稜、YUIの議論を聞いてどんなことを感じたのだろうか。
写真左からBGIRL HONOKAA、BBOY ISEKI photo by 金子修平BGIRL HONOKAA
今回のパネルディスカッションを通じて、自分が興味を持っていること、SNSに流れている情報や社会問題について自分なりの考えを持って発信していくことが大切だと感じました。
BBOY ISEKI今日は普段過ごしていたら知ることができないことや、新しい価値観を知ることができたので勉強になりました!
NEXT GENERATIONS
Next Generationsは、ストリートスポーツ振興とマナー啓蒙を目的とし、若年層U-15 (中学生以下)を対象とした通年のプロジェクトです。ストリートスポーツコンペティションの実施を基軸に、体験イベントやスクール事業など、包括的に展開しています。
ストリートスポーツには、体育や部活などの教育文脈とは違った学びがあります。コミュニティの中で社会のルールを身に付け、シーンに触れることでカルチャーを学ぶことができます。ストリートスポーツを振興することにより、街や公園に学び場を創出し、子供たちに新たな発見を与えます。
DAZN
「DAZN(ダゾーン)」は、スポーツファンが好きなスポーツを、いつでもどこでも楽しめる、スポーツ・チャンネル。明治安田生命Jリーグやプロ野球をはじめとする国内コンテンツに加え、プレミアリーグ、ラ・リーガ サンタンデール、セリエA TIMなど欧州サッカーも放映。さらにF1
、テニス、バスケットボール、格闘技など、130以上のコンテンツ、年間10,000試合以上を提供し、「ライブスポーツが一番観られる」サービスとして世界最高峰のあらゆるスポーツの興奮を届けている。月額1,750円であらゆるスポーツのライブ中継のみならず、見逃し配信やハイライト、特集番組などのコンテンツも見放題。テレビ、スマートフォン、PC、タブレット端末、ゲーム機などマルチデバイス対応しており、いつでもどこでも、ワンプライス・ワンプラットフォームでスポーツ観戦を楽しめる。
「DAZN」は日本、ドイツ、オーストリア、スイス、カナダ、イタリア、アメリカ、スペイン、ブラジルの世界9カ国で展開しており、 世界的スポーツメディアグループDAZNが提供している。
SOCIAL INNOVATION WEEK 2020
国内最大級のソーシャルデザインをテーマにした東京・渋谷の都市フェス。
未来志向の起業家やクリエイターの価値観にふれ、多様な企業や新規事業コミュニティとネットワーキングし、これからの社会をリードするアイデアやソリューションを体感する。
社会をつくるすべての人のココロとアタマを刺激する9日間。
渋谷エリアの多拠点会場とオンライン配信を並行して展開 。
今年のSOCIAL INNOVATION WEEKは、オンライン会場とオフライン会場を並行し活用しての開催。
ウィズコロナの時代の都市型イベントのあり方を模索・提案しながら、前向きにあらたな「!」を求めていきます。
photo / text by 金子修平
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