11月の欧州遠征で、橋本拳人(ロストフ)、浅野拓磨(パルチザン・ベオグラード)が日本代表に復帰することになった。 橋本…

 11月の欧州遠征で、橋本拳人(ロストフ)、浅野拓磨(パルチザン・ベオグラード)が日本代表に復帰することになった。

 橋本の場合、10月の欧州遠征では、オランダで開催されたことで、新型コロナウイルスによる規制があって、ロシアからの入国許可が出なかった。今回の開催地はオーストリアで、入国許可が下りたという。そうした事情がなかったら、前回も順当に選ばれていただろう。

 今年7月、ロシアに渡った橋本は、日々成長を遂げている。はたして橋本は"混迷"の森保ジャパンに何をもたらすのか?



昨年12月のE-1選手権以来の代表招集となる橋本拳人(ロストフ)

 橋本はロストフでこれまでヨーロッパリーグも含めて13試合に出場し、5得点を記録している。直近6試合は連続先発出場。今やバレリー・カルピン率いるチームで欠かせない選手だ。

 10月31日、ロストフは首位を走る古豪スパルタク・モスクワと敵地で対戦したが、橋本は中盤の一角を担い、0-1の勝利に貢献している。前半からインターセプトを連発。まるで背中に目があるように、背後のスペースをケアしながらも、鋭い出足で前の敵に忍び寄り、タコが獲物を捕獲するように、手足を伸ばしてボールを絡め取った。

 守備だけでなく、ゴール前へ積極的に入り、攻撃にも厚みを加えていた。もともと、クロスに入る感覚に優れ、ヘディングやボレーの当て勘も備えている。しかし、ロシアでプレーするようになってから、攻撃に関与する機会が増え、ゴールセンスが開花したように映る。

「どんなポジションでも、どんな役割でも対応できるのは、自分のいいところだとは思っています」

 橋本は自らのプレーをそう分析している。

 FC東京時代から、ユーティリティ性が特徴だった。ボランチだけでなく、サイドバック、センターバック、サイドハーフ、トップ下、FWでも適応力を見せていた。抜きん出た戦術的センスは、日本人MFでは唯一、長谷部誠に追随するだろう。

 カルピン監督が率いるロストフは、マンマーク戦術で戦っている。スタートポジションは4-3-3で中盤のインサイドハーフに近いが、マンマーキングのため、変則的で不規則な動きと立ち位置の中、攻守両面の働きが求められる。息もつかせない究極的な1対1の果し合いで、相手を上回ることが使命だ。

 運動量は生半可ではない。試合ごとの疲弊は激しいが、戦闘的スタイルをアップデートさせつつある。

「自分は、相手選手とガチャンと当たって、ボールを奪うようなプレーが好きで。海外の選手はそこで勝負して来るんですよ。そこでの駆け引きができるのは、シンプルに楽しみだな、と」

 橋本はロシアに発つ前から、そう語っていた。人に対する強さ。そのアドバンテージのおかげで、カルピン監督のマンマーキングにも順応することができた。

「日本人選手は、あまりぶつかり合いを好まないです。すぐにボールを下げるし、距離を置くので。それが日本のスタイルだとは思うんですけど。俺は、自分の間合いに敵が入ってきたら、"削りに行くぞ"という勝負に興奮するというか......。ロシアではコンタクトプレーがしたい。ここに来いよと誘って、入ってくるところで勝負したいですね。欧州を舞台に、ぶつかり合いをやりたいです」

 橋本は、その希望通りの戦いを示している。

 マンマークの闘争の代償として、走行距離が増えた。1試合平均で12~13キロ。Jリーグのシーズントップ10に迫る走行距離と言えるが、それだけではない。相手に合わせながら全力疾走せざるを得ないので、相当なスプリント回数も求められる。自分たちがボールを持ったら、一気に敵陣に殺到してゴールも狙うだけに、攻守に間断がない。加えてロシアリーグは体格が大きな選手が多く、空中戦も含めた球際の強度も必然的に高くなる。

「最初は(マンマークに)慣れずに、(監督に)めっちゃ怒られていました。『これも行っていいの?』に『全部行け!』って言われて」

 橋本は現状を語るが、何かを乗り越える楽しさを感じている。

 11月7日、スパルタクに代わって首位に立ったCSKAモスクワとの一戦は代表合流直前の試合になった。

 ここでも橋本は獅子奮迅の働きを見せている。イゴール・アキンフェエフ、アラン・ジャゴエフなどロシア代表を多く擁する相手に対し、一歩も引かない。1対1で誘い込むと、完全にボールを取り切る場面もあった。

 攻撃面でもシュートをお膳立てし、際どいボレーを放っている。後半のCKでは、相手選手の肘を顔面に受け、チームにPKをもたらした。これを味方が外し、結局は2-0とされて敗れたが。

 異国で刺激を受けながら、橋本は着実に適応している。もはや、FC東京時代とは同じ選手ではない。プレーの幅は広くなり、底は深くなった。

 成長した雄姿を、今回の日本代表欧州遠征で見せられるか。