江草仁貴氏「『プロになってみたい』という純粋な気持ちで挑戦しました」 日本野球機構(NPB)と株式会社コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共催するプロ野球eスポーツリーグ「eBASEBALL プロリーグ」が12月5日に開幕する…

江草仁貴氏「『プロになってみたい』という純粋な気持ちで挑戦しました」

 日本野球機構(NPB)と株式会社コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共催するプロ野球eスポーツリーグ「eBASEBALL プロリーグ」が12月5日に開幕する。3シーズン目となる今季も厳しいプロテストを通過したトッププレーヤーたちが1球団4人のチームを結成。プロ野球同様に、セ・パ両リーグに分かれて日本一の座をかけて争う。選手を選抜するプロテストに、1人の元プロ野球選手が挑戦していた。元広島投手の江草仁貴氏だ。

 実は江草氏は、「eBASEBALL プロリーグ」のプロプレーヤーを目指し、オンライン予選に挑戦していた。不合格になったものの、プロプレーヤーが集まる研修会では講師として登壇し、プロとしての矜持を説いた。2017年に現役を引退し介護事業の運営をスタート。翌2018年春からは、大阪電気通信大野球部のコーチにも就任した江草氏。なぜプロゲーマーを目指したのか――。江草氏はこう話した。

「eBASEBALL プロリーグ」というパワプロのプロリーグがあると知って「プロ野球選手とeBASEBALLのプロ選手の両方をやった人はいないな」と思ったことがきっかけでプロテストを受けました。パワプロは中学生のころからずっとやっていたので自信はあったんですが、全く歯が立ちませんでした(笑)

 練習を積んでオンライン予選に挑戦しましたが、終わってみたら56位。合格ラインは20位だったので、プロの壁を感じましたね。「配球なら負けねえぞ」と思って球を待っていましたが、読み通りに来ても、ちょっとカーソルがずれたら打てないんです。

 実際の野球と同じように、『パワプロ』でも攻め方は人によって全然違う。試合の途中で「この人はこういう攻め方なんだな」ということに早く気付いて、確率が1番高いところで待っている…という風にプレーしていました。実際もキャッチャーによって攻め方が違いますし、「このキャッチャーはどこ投げさせたいんだな」とか、「このバッターはどこ待っているな」と現役時代も考えていました。

 プロテストには、とにかく「プロになってみたい」という純粋な気持ちで挑戦しました。ゲームでプロになるってやっぱりすごいことだし、僕にとってあこがれの職業。しかも、今はすごい人数がやっている。その中でプロになるって憧れですよね。夢を与える仕事なので、憧れられるというのはとても大事。そういう人が増えてくると、国内のeスポーツも盛り上がってくると思います。ただ、それで学校に行かないとかということになってしまうとそれは問題。バランスをとりながらやれたらいいですね。

プロプレーヤーが集まる研修会では講師も「自分を見失わずに自分の練習を」

 研修会では、選手の皆さんに「負けたときにこそ自分を見失わないことが大事」という話をしました。次の日も次の日も試合。だから引きずっていても仕方ない。忘れて、練習して、自信を持つということが大事です。引退してからは大阪電気通信大(阪神大学連盟2部)でピッチングコーチをしていますが、うまくいかなかった選手のフォローをするときにはその経験が役に立っているのかもしれません。

 エース投手が何試合か打たれてしまったりスピードが出なかったことがあったのですが、フォームを変えてみたり、球種を増やしてみたり、色々なことをやりすぎて迷走していたんです。彼が最初にやったのは、千賀くん(ソフトバンク)のマネをすること。その次は山本由伸くん(オリックス)のマネをしていたので、ちょっと待てよと。今一番大事なのは、自分を見失わずにしっかり自分の練習をすることだと話をしました。結局彼は立ち直って、元通りしっかり投げている。そういうところでプロの経験が役に立ったのかなと思います。

 プロ野球選手のセカンドキャリアと言えば“飲食店経営”というイメージですけど、今は自分のやりたいことをやれる人が増えてきたように感じます。情報収集が難しかった昔と違って、今は携帯ひとつでなんでも調べられる。そういうところからセカンドキャリアに対する選択肢も広がってきているんだと思います。

 次はプロ野球選手専門の不動産屋をやりたいと考えています。選手には「マンションを買いたい」「家を買いたい」というタイミングが絶対にあるんです。そういうときに、野球選手だからこそわかるアドバイスができると思っています。

 この「eBASEBALL プロリーグ」のようにNPBがeスポーツに力を入れて、実際の野球も「eBASEBALL」も一緒に盛り上がっていけたら本当にいいことだと思います。そのためにも、これからもっともっと力を入れて取り組んでほしいですね。

〇江草仁貴(えぐさひろたか)
盈進高(広島)から専大を経て、2002年のドラフト自由枠で阪神に入団。左の中継ぎ投手としてリリーフの一角を担い、2005年は51試合に登板しリーグ優勝に貢献した。2011年途中にトレードで西武に移籍。2012年は開幕前にトレードで広島に移籍した。2017年に現役を引退。プロ通算349試合に登板。22勝17敗、48ホールド。防御率3.15。(安藤かなみ / Kanami Ando)