新型コロナウイルスの感染拡大により、7月中旬に幕を開けた2020年のスーパーGTも、残すところあと2レース。シリーズ第7戦は11月7日・8日、栃木・ツインリンクもてぎで開催された。圧倒的な速さでもてぎを制したホンダNSX-GT勢 その「も…

 新型コロナウイルスの感染拡大により、7月中旬に幕を開けた2020年のスーパーGTも、残すところあと2レース。シリーズ第7戦は11月7日・8日、栃木・ツインリンクもてぎで開催された。



圧倒的な速さでもてぎを制したホンダNSX-GT勢

 その「もてぎ」で速さを見せたのは、地元ホンダ勢だ。

 予選ではナンバー64のModulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹)が今季2度目のポールポジションを獲得。2番手にはナンバー8のARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)、3番手にはナンバー100のRAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)がつけ、予選上位をホンダ陣営ががっちりと固めた。

 迎えた決勝レース、その3組のなかから主役の座を掴んだのは8号車だ。10周目に野尻がトップに浮上すると、トラブル車両の処理のために導入されたセーフティカーでさらに後続との差を広げる。そして後半を担当した福住もミスのない走りで店、46秒もの大量リードを築いて今季初優勝を飾った。

 GT500クラスへの昇格1年目の福住は、7戦目にして待望の初優勝。レース後、パルクフェルメで号泣していたのが印象的だった。

「レース後半は1周1周がすごく長く感じて......。今年は勝てそうで勝てないレースが続きましたし、ほかのカテゴリーでも順位を下げてしまうことがありました。そういった悪夢が頭をよぎりましたが、とにかく目の前のことに集中しました。本当に勝ててよかったです」(福住)

 ポールポジションの64号車は2位、予選3番手の100号車も順位をキープし、ホンダが表彰台を独占。さらにはナンバー16のRedBull MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/笹原右京)が4位、ナンバー17のKEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)も5位に入り、参戦している5台のホンダNSX-GTすべてが上位に名を連ねる快挙を成し遂げた。

 ホンダが来シーズンかぎりでのF1撤退を発表してから1カ月半、戦っているカテゴリーは違うとはいえ、ホンダの看板を背負うドライバーたちの心境は複雑だっただろう。地元もてぎでトップ5を独占できたことに、ホンダドライバーは素直に喜び合った。

「F1撤退という少し暗いニュースもあったなか、ホンダの八郷隆弘社長も観に来て、いい結果を見せられたことで、国内のファンも喜んでくれたと思います」(64号車・伊沢)

「チェッカー後(クールダウンで)1周まわってくる間、観客の数は制限されているはずなのに、不思議と今までにないくらいホンダの旗を振ってくれている人が多かった。『すごく喜んでくれたのかな』と思うと......またがんばろうという気持ちになりました」(100号車・山本)

「ホンダの力を、このホームコースで見せることができた。トップ5独占に貢献できたのは、ホンダファミリーとしては本当にうれしいことですね」(16号車・武藤)

 今シーズン開幕戦、ホンダは速さを示すことができず、トヨタにトップ5独占を許してしまった。しかし、ホンダNSX-GTは徐々に実力を開花させ、ついには年間チャンピオまであと一歩と迫っている。

 シーズン後半の追い上げについて、ホンダのスーパーGTを指揮する佐伯昌浩プロジェクトリーダーはこう語る。

「開幕戦の時点でNSX-GTは未成熟のままスタートしました。ただ、伸び代はあると思っていましたし、それが(後半戦になって)伸びてきたのだと捉えています。実際に2回目の鈴鹿(第6戦)あたりから(セッティングの方向性が)見えてきた感じです。

 この第7戦で17号車と100号車に何かトラブルがあれば、チャンピオン争いから外れることになるので不安もありました。でも、結果的にはそれがまったく逆の方向でいって、8号車も含めて3台がほぼ点差なく最終戦にチャンピオンをかけて戦えます。いい結果で終われて本当によかった」

 ホンダ勢がトップ5独占で歓喜する一方、他陣営のピットに目を向けると、重苦しい雰囲気に包まれていた。とくに、シーズン序盤で調子のよかったトヨタ勢の険しい表情が印象的だった。

 最終戦を前に、注目のチャンピオン争いは近年稀に見る大接戦で、数字上では10台にチャンピオン獲得の可能性が残っている。そのなかでも上位6台は4ポイント以内にひしめいており、最終戦で優勝すればライバルの順位にかかわらず無条件で年間王者決定となる。

 上位6台は、ホンダ3台、トヨタ2台、日産1台......。まさに3メーカーが横一線で最終戦を迎える。

 しかも、最終戦はウェイトハンデが課されない。全車ノーウェイトの"ガチンコ勝負"が展開される。2020シーズンのスーパーGT最終戦は前代未聞のバトルになること、間違いなしだ。