「日本一になりに行ってきます。4年間、迷惑をかけることになると思いますが、よろしくお願いします」。

関西学院大学ファイターズの主将LB山岸明生は4年前、両親にそう告げて関学大に入学した。

中大附属高時代から大型LB兼TEとして活躍。高校3年時には全国大会関東地区決勝に進出したチームのエースだった。そのまま中央大に進学してフットボールをする道もあった。色々と考えた末にファイターズで日本一を目指す道を選択した。

1年時の秋季初戦から主力メンバーに加わった山岸だが、京大、関大、立命との試合には負傷で出場できなかった。

しかし、甲子園ボウル直前に守備のエースだった池田雄紀(当時4年/現エレコム神戸)が負傷。ちょうど負傷から復帰した山岸が先発に抜擢された。

2年時は山岸にとって飛躍の年だった。7月にはアンダー19日本代表の主将を努め、第3回アンダー19世界選手権に出場。初めて米国代表選手たちと戦ったことで、一段階上の選手になることを目指すモチベーションを手にいれた。秋季リーグ戦でも大活躍し、ファイターズの学生4連覇に貢献した。

3年時の昨年は下級生時から試合に出場している上級生として、チームを牽引する存在にならなければという意識が芽生えていた。しかし、心境とは裏腹に春から負傷続きで満足に出場することができなかった。立命館大戦前にも負傷し、山岸の代わりは当時まだ試合経験が乏しかったLB松本和樹(現3年)が務めたが、立命館大RB西村七斗に完膚無きまで叩きのめされた。

「今思えば精神的に未熟でした。負傷が続いたのも、まっすぐ前を向けていなかったからでした。先輩たちに悔しい思いをさせてしまい、後輩の松本にも辛い思いをさせてしまった」

山岸は昨シーズンの自分を振り返る。

今季、主将に立候補したのは、3年時にまったく貢献できずにチームに迷惑をかけてしまったという思いと、このまま4年生になってしまえば、自分自身になんの変化もないままで終わってしまう、と考えたからだった。

覚悟を持って主将になったつもりだった。

しかし、実際になってみると、背負っているものの大きさを身にしみて感じるようになった。

「ファイターズは様々な人たちに応援していただいているチーム。自分たちが負けることは、多くの人々の気持ちを裏切ってしまうことになるということを、日々感じて過ごしてきました」。

勝つべくして勝つチームを作るにはどうしたらいいか。

春は全勝だったが、思い描いているチームの姿とは程遠かった。

山岸は元々自分のやるべきことを黙々とこなす不言実行タイプの人間だった。しかし、ファイターズは有言実行の文化。自分がやるのは当たり前で、他のメンバーも巻き込んで、結果に責任を持つことが求められる組織だ。

他の4年生の取り組み物足りなさを感じていても言い出せない時期もあった。それが不信感につながってしまったこともあった。春のシーズンが終わり、開幕まであと1ヶ月と、いよいよ時間がなくなってきた時にようやく吹っ切れた。

「4年生の取り組みに物足りなさを感じていた時は、自分に衝突する勇気がなかった」

山岸はチームが思う姿になっていなかったのは、自分自身の勇気のなさが原因だと気がついた。

正解がわからない中、チームメイトたちと理想のチームを目指してもがいてきた。

試行錯誤を繰り返す日々の中で、『もし、負けてしまったら』、という恐怖が頭をよぎることがあると山岸は言う。その恐怖を払拭するために、全身全霊を懸けて練習に、そして、チームづくりに取り組んできた。

「悔しい思いをさせてしまった昨年の先輩方、そして、昨年、自分が負傷で出場できなかったために、急遽先発になって、悔しい思いをさせてしまった後輩に、二度と同じ思いはさせないと思ってプレーしていました」

11月20日のリーグ最終節、立命館大に22対6で勝利した直後に、山岸の口から真っ先に突いて出たのは、先輩たちと後輩たちへの思いだった。

12月4日、二度目の立命館大との決戦となった西日本代表校決定戦の前日、山岸は両親に電話して、感謝の気持ちを伝えた。

「日本一になると言って出ていったんだから、ちゃんと見せてよね」。

山岸は母・さやかさんから、そんな言葉をかけられたという。

宿敵・立命館大を二度破り、2年ぶりに甲子園の舞台を勝ち取った。

これまでの戦いが悔しい思いをさせてしまった先輩たち、そして後輩たちへの贖罪の戦いだったとするならば、ここからの戦いは山岸自身が心血を注いで作り上げた2016年ファイターズの挑戦の舞台だ。

対戦相手の早稲田大には、2年前のU19日本代表で一緒に戦ったメンバー、そして高校時代、関東地区決勝で戦ったメンバーが多数在籍している。高校時代の早大学院との対戦は、前半、2ポゼッション差でリードをしていたが、後半に逆転を喫して24対27で敗れ、クリスマスボウル進出を逃した。

「4年間やってきたことを全部ぶつけて勝ちたい」

山岸はファイターズの主将として、12月18日、甲子園ボウルで学生日本一を全力で奪いにいく覚悟だ。

(ハドルマガジン12月増刊号Vol.23掲載記事を再編集)

 

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