11月8日、リーガ・エスパニョーラ第9節のヘタフェ戦、久保建英(ビジャレアル)は86分からの出場にとどまっている。 し…
11月8日、リーガ・エスパニョーラ第9節のヘタフェ戦、久保建英(ビジャレアル)は86分からの出場にとどまっている。
しかし、限られた時間でもその非凡さを証明した。中盤でボールを受けると、マークに付いたマルク・ククレジャを手玉にとって、軽々と入れ替わる。"バルサの先輩"を、ものともしなかった。そして敵陣に向かうところで、マウロ・アランバリに体ごと掴みかかられて、明らかなファウルを受ける。イエローカードだった。反則行為でしか止められない技術とスピードだ。
久保は高速プレー、高い強度のコンタクトの中でも、技術精度が落ちない。それがトップレベルでも違いを出すことができている理由だろう。当然、対戦相手も警戒してかかってくるのだが、そのたび、彼は適応し、より速く、強く、うまさを見せる。
終了前にはFKのこぼれ球の奪い合いで、巧みにボールを収めている。カウンターを発動させ、CKも蹴っていた。得点には結びつかなかったが、1-3の勝ちゲームを締めた。
「なぜ、久保をもっと使わないのか?」
スペインの地元メディアが、慎重な起用を続けるウナイ・エメリ監督に対してプレッシャーをかけるほど、期待を集める選手になっているのだ。
11月、欧州遠征を行なう日本代表にも招集された久保の「現在」とは--。

直近のヘタフェ戦では86分からの出場となった久保建英(ビジャレアル)
リーガ・エスパニョーラで、久保はここまで9試合連続で出場を記録。スタメンは第7節のカディス戦のみながら、着実に評価は高めている。新加入のルーキーとして、少なくとも「12番目の選手」のポジションはつかんだ。
そしてヨーロッパリーグのグループリーグでは、3試合連続先発出場。1得点3アシストで3連勝と、チームを牽引している。
「久保のプレーは幻惑的だった。マッカビ(テル・アビブ)戦は輝きを見せた。(カルロス・)バッカへのアシストはセンスが横溢していた。ヨーロッパリーグは、彼の大会になるかもしれない」
スペイン大手スポーツ紙『アス』は、そんな表現で久保のプレーを激賞している。
マッカビ戦の得点シーン、久保は右サイドで2人のディフェンスを相手にボールを運んで外側にずらし、角度を作っている。そしてファーポストでマークを外したバッカに、得意の左足でクロスを合わせている。完璧なタイミング、コースだった。コロンビア代表FWバッカと並び、最高の3つ星(0~3の4段階)を付けられたが、当然の評価だろう。
「Omnipresente.(どこにでも顔を出す)」
スペイン大手スポーツ紙『マルカ』も、「濡れたピッチは氷のリンクのようだったはずだが、芸術的プレーを見せた。コンビネーションもよく、ゴール近くは彼のゾーンだった」と久保のプレーを絶賛している。久保について、否定的な声はほとんど聞かれない。
しかし、ウナイ・エメリ監督は守備の規律を重んじるだけに、久保の高い技術を認めながらも、主力とすることにためらいが見られる。
たとえば第8節バジャドリード戦では、久保は後半途中から出場し、中盤で味方が奪ったボールをセンターサークル付近で受け、鮮やかなショートカウンターを発動させている。一度、バッカに預け、再び走り込んで、エリア内で受け、ダイレクトで左足シュート。GKにブロックされたが、出色のセンスだった。
その一方、終了間際にCKからの流れで、久保は自陣エリア内でボールコントロール、もしくはクリアに失敗している。相手ボールになって、シュートまで持ち込まれていた。危険なシーンだった。
エメリは後者のような綻びを嫌う。計算し尽くした守備があって、それを遂行することが選手起用のベースになっている。失点しない、負けないことが出発点なのだ。
それでも久保はその戦術の中で、自分の役割を果たしつつある。1対1の強度が上がって、ポジションを下げてコースを封鎖し、挟み込むような守備も見せるようになった。何より、カウンターの起点になることで、攻めることによって守りを助けられる。彼の存在が、守っているチームの"よりどころ"になり始めているのだ。
エメリが久保を主力とみなすタイミングは、それほど先ではないだろう。
もっとも、ビジャレアルは現在、リーガで単独の2位(試合数は異なる)につけている。ジェラール・モレノは不動のエースであり、パコ・アルカセルもゴールを量産。チームとして結果を叩き出している状況だけに、指揮官としては大きく変える理由もない。
久保の仕事はヨーロッパリーグで自らの正当性を示し、リーガでは少ない時間でもチームに貢献することだろう。今のプレーを続けるだけでも、じわじわと評価は上がる。必ず、潮目は来るはずだ。
日本代表の欧州遠征でも、その進化を見せるだろう。右サイド、もしくはトップ下で、ルーキーを生かすような起用が望まれるが、久保はもはや新人の域は越えている。どのポジションでも適応できる、という逞しさを見せることで、最も輝くポジションを自らの手でつかみ取るはずだ。