「卓球ジャパン!」では、「卓球ジャパン!クロニクル」の第5弾として、世界卓球2014東京大会、日本女子31年ぶりの銀メダル獲得への戦いを当時の女子日本代表チーム監督の村上恭和氏(現・日本生命レッドエルフ総監督)をゲストに招き、2週にわたって…

「卓球ジャパン!」では、「卓球ジャパン!クロニクル」の第5弾として、世界卓球2014東京大会、日本女子31年ぶりの銀メダル獲得への戦いを当時の女子日本代表チーム監督の村上恭和氏(現・日本生命レッドエルフ総監督)をゲストに招き、2週にわたって振り返る。10月31日放送では、準々決勝の対オランダ戦の知られざる舞台裏に迫った。

日本女子団体は2012年ロンドン五輪で史上初の銀メダルを獲得しており、その後の地元・東京での開催とあって大きな活躍が期待されていた。だが村上氏は「ロンドンでは組み合わせもあって銀メダルを獲れましたが実力は3、4番。楽観視はしていませんでした」と意外な事実を明かす。



そうした状況の中、石川佳純とともにツインエースとして活躍が期待されていた福原愛が怪我のため欠場が発表される。これによって新たにカットマンの石垣優香が3番手として起用され、それまで3番手だった平野早矢香が急遽ツインエースの役割を担うことになった。このときの衝撃をMC平野早矢香は「戦える自信がないと自分のコーチに電話しました」と振り返る。「一番大変だったのは平野だったと思います」と村上氏。

こういう厳しい状況で迎えた世界卓球2014東京大会だったが、日本女子はグループリーグを全勝1位で勝ち進み、決勝トーナメント準々決勝で2大会ぶりのメダルをかけてオランダと激突することとなった。中国からの帰化選手2人をツインエースに揃えた強豪だ。



村上氏はオランダのオーダーを見て驚いたという。エースのカットマン、リー・ジエが3番に出てきたのだ。会場での練習でもリー・ジエはずっと平野を想定した練習をしており、いかにも1、2番に出てくる様子を見せていての3番起用だった。「フェイクですね。完全に裏をかかれました」と村上氏。リー・ジエは直前のドイツオープンで石垣を破っているため、石垣から確実な1点を取りに来たのだ。こうした駆け引きも、団体戦の醍醐味の一つだ。

いよいよ試合開始。オーダーで出し抜かれた日本だったが、1番で平野がエーラントに勝ち、2番で石川がリー・ジャオにフルゲームの末に敗れ、ついに3番、石垣とリー・ジエのカットマン対決を迎えた。メダルの行方を大きく左右する一戦だ。

「石垣には促進(ルール)に持ち込むことを指示しました」と村上氏。促進ルールとは、カットマン同士の試合などで、試合が長引くのを防ぐためのルールで、開始から10分経ってもそのゲームが終わらない場合、レシーバーが13回返すと自動的にレシーバーの得点になるルール(※一旦促進ルールが適用されると、その試合は最後まで促進ルールで行われる)サーバーは、13回返される前に得点を狙わざるを得ないという特殊な競技条件だ。普通に戦っても分が悪いため、思い切った作戦に出たのだ。

作戦どおり試合は第1ゲームの後半から促進ルールに入った。促進になったときの問題は石垣が打ちすぎることだという。リー・ジエのカットが浮いてくるのでチャンスボールに見えるが、このボールはスマッシュするのが難しい"釣り"のボールだ。

「あのボールのスマッシュは打っても入らないし、入っても返される。打つならミドルにドライブです」と村上氏が言えば「切れてないボールだったり横回転が入っていたりして難しいんです」とMC平野早矢香。

試合はゲームカウント2-1と石垣がリードし、第4ゲーム8-9になったところでリー・ジエがタイムアウト。うなずきながら真剣に村上氏のアドバイスを聞く石垣の場面を見て、なんと村上氏は「聞いてるような顔してますけど、選手は実際はほとんど聞いてませんから。選手も考えてるので」と笑いを誘った。

その後、村上のアドバイス通り、ドライブに切り替えたように見えた石垣だったが、最後は見事なスマッシュを決めて貴重な1勝を挙げた。「スマッシュ打った」「言うこと聞かなかった!」とスタジオは大盛り上がり。

4番で平野が対するはリー・ジャオ。2番で石川を倒した左ペンホルダーのテクニシャンだ。第5ゲームまでもつれたが、残念ながら平野は老かいな卓球に屈した。MC平野早矢香は自分の卓球を見て「ボールは遅いし古い卓球だなあ」と振り返ったのに対して、村上氏は「これでよく勝ってましたよね」とフォローにならないフォロー。そこに「顔の圧はあるから」と追い打ちをかけるMC武井壮。「卓球ジャパン!」ならではの絶妙トークだ。

泣いても笑ってもこれが最後の5番、石川佳純は世界ランク100位と格下のエーラントと対戦。世界9位の実力を見せゲームカウント2-0とリードしたが、勝ちを意識してか第3ゲームからエーラントのペースにはまり、とうとう最終ゲームに突入。

「石川のもっとも苦手な当てて返して来るタイプです」と村上氏。当時の石川は攻められたときは強いが、攻め続けたときに体勢を崩してミスが出るという。

序盤にミスが続きなんとスコアは1-4。格下相手にメダルが手から逃げようとしていた。MC武井壮が「良い話」を聞きた気な深刻な表情で「このとき何を考えてましたか?」と聞くと村上氏は「・・・敗戦のコメントですね」とあまりにも正直すぎる回答。これにはMC武井壮も「やめて早いからー(笑)」と爆笑。

随所に笑いを挟みながらも、徐々に追い上げる石川の映像にスタジオは再び釘付けモードとなり、最後は11-6と突き放した。2大会ぶりのメダルを決めてチームメートと抱き合いながら涙が止まらない石川佳純とベンチの姿が映し出されると、村上氏は感極まり涙を拭った。それほど熱い戦いだった。



この他、番組最後では、突撃取材第2弾として、東京五輪日本代表の張本智和が登場。五輪への意気込み、取り組んでいる課題、リフレッシュの仕方などを語った。

11月7日(土)はいよいよ31年ぶりの決勝進出をかけた準決勝の香港戦を振り返る。お見逃しなく。