「一難去ってまた一難」ではないが、Jリーグが予期せぬ危機に直面している。ルヴァン杯決勝を4日後に控えた11月3日、柏にクラスターが発生した。すでに報道されたように、選手4名、コーチングスタッフ11名の計15名がPCR検査の結果、陽性だったこ…

「一難去ってまた一難」ではないが、Jリーグが予期せぬ危機に直面している。ルヴァン杯決勝を4日後に控えた11月3日、柏にクラスターが発生した。すでに報道されたように、選手4名、コーチングスタッフ11名の計15名がPCR検査の結果、陽性だったことが判明した。

ネルシーニョ監督と濃厚接触したあるスタッフは39度以上の発熱で入院したそうだ。さらに柏保健所のヒアリングの結果、中止となった仙台戦から柏へ戻る際にバスに同乗していた選手、スタッフに加え、スタジアムに隣接するスタッフルームを使用していたスタッフやクラブハウス、グラウンドでの接触などから選手21名、トップチームのスタッフ8名の計29名が濃厚接触者と判定されたという。

これ以上、感染が広がらないことと、感染した選手・スタッフが重症化しないことを願うばかりである。そして気になるのは、延期・中止となったルヴァン杯の決勝だけではない。濃厚接触者の拡大でリーグ戦も消化できるのかどうか先行きは不透明だ。

8月にクラスターの発生した鳥栖は、15日間の活動停止後も、すぐに公式戦を戦うのはコンディション的に難しいとの判断から9日間の練習期間を与えられた。これを柏に当てはめ24日後とすると、11月28~29日の第30節となる(ただし柏は試合なし)。

その後は土曜、土曜、水曜、土曜の日程で4試合が控えているが、問題は活動停止期間中の仙台、大分、鳥栖、鹿島の4試合をどこに組み込むかだ。12月19日(土曜)の最終戦は決まっている。その前の土曜(12日と5日)も試合があり、16日(水曜)も埋まっている。このため空き日は12月2日と9日の水曜となるが、それでも2試合が浮いてしまう計算になる。

1つの考え方として、コロナ禍の今シーズンはJ2リーグへの降格がないことと、リーグ戦は75%を消化できれば成立するというレギュレーションだ。すでにJ1リーグは10月31日で75%をクリアしている。このため柏と対戦相手2チームは今シーズンを33試合で終了するというプランだ。

仙台(18位)、鳥栖(15位)、大分(12位)の3チームは、例年ならまだ降格ゾーンにいるものの、今シーズンは降格がないため救済される。問題になるのは、柏(9位)と鹿島(5位)にはリーグ優勝の可能性こそないものの、天皇杯とACLの出場権を獲得できる2位以内の可能性があることだ。

この不公平を解消するためには、再開日を1節前倒しして25日の鹿島戦(第29節)からスタートし、予備日の28~29日にも試合を組み込むことだ。これならどのチームも残り試合を消化できる。ただし柏は中2~3日での8連戦というハードな日程を受け入れざるをえない。

とりあえず、リーグ戦の日程はこれで確保できたとしよう。問題はルヴァン杯決勝である。

もしもFC東京がACLのラウンド16(12月6日)か準々決勝(10日)で敗退したら、帰国後2週間ほどの自主隔離期間があったとしても、FC東京と柏が天皇杯に出場しなければという条件付きで12月26日(土曜)か30日(水曜)に開催は可能だ(新国立で開催するかどうかは別にして)。

厳しいのはACLで決勝まで勝ち進んだ場合である。帰国後に2週間の隔離期間を取るとすると、試合ができるのは早くても1月4日以降となる。ルヴァン杯(前ナビスコ杯)は単一スポンサーでのギネス最長記録を更新している大会だ。今シーズンも大会開催にあたり大会方式などのレギュレーション変更を快諾してくれた。このため村井チェアマンも、新シーズンの日程変更も視野に入れていると話すほどルヴァン杯決勝の開催には前向きである。

過去に例のないルヴァン杯決勝中止と延期。しかし、一度前例を作っておけば、次からは柔軟に対応できるメリットもある。個人的には、決勝戦だけは過去の例からも両チームのコレオグラファーなどで盛り上がるルヴァン杯決勝を、元旦の風物詩にしてもいいと思っている。そして天皇杯はアマチュアの最高峰の大会として、年末年始を避けて決勝を行えばJリーグ勢の負担も緩和されるだろう。もちろんACLの出場権はルヴァン杯の勝者に与えられることは言うまでもない。