「(遠藤保仁については)チーム全体として、相手のキーポイントとして捉えていました。その点、それほど(流れの中で)ピンチは…

「(遠藤保仁については)チーム全体として、相手のキーポイントとして捉えていました。その点、それほど(流れの中で)ピンチはなくて。(ジュビロ)磐田のボランチのところは、2トップが強力な分だけ、出どころを抑えるというところで、ケアできていたと思います」(アビスパ福岡・上島拓巳)

 ガンバ大阪から新入団ながら、すでにチーム戦術そのものになった遠藤保仁を、アビスパ福岡はほぼ完全に封じていた。試合は彼らのペースだった。まさに順位どおり、練度の差を見せつけていた。だが......。

 福岡は遠藤を封じながら、その影に敗れたのである。



新天地でも存在感を発揮し続ける遠藤保仁(ジュビロ磐田)

 11月1日、ヤマハスタジアム。J2で首位を走る福岡は、磐田の本拠地に乗り込んでいる。最近15試合は13勝2分けと好調。失点はわずか6で、守りからリズムを作れるチームだ。

 磐田戦も立ち上がりからペースを握った。3-4-1-2のような布陣を組んだ磐田に対し、シンプルな4-4-2で前線からプレスをかけつつ、中盤とのラインを分断。2トップの一角である遠野大弥は、効果的に遠藤へのパス供給源を断っていた。

 磐田の3バックはビルドアップでの距離感が悪く、それぞれが近いことで、簡単にプレスに遭ってしまう。ボランチへの供給もできず、いたずらに相手にボールを渡し続けた。プレスを回避できない時間が続き、その点で福岡とのチーム熟成の違いを露呈している。20分過ぎまで、まともに敵陣へ入ることができなかった。

 頼みの遠藤は孤立していた。パスを受けても、よくない状態なので下げるしかない。狙ったパスはミスになった。

 福岡は、前線からの守備を攻撃に旋回させていた。自分たちのボールにすると、サイドに起点を作りながら、中に入ってチャンスを作る。前寛之から福満隆貴へパスが出て、シュートを打ったシーンは際どかった。しかしゴールに近づくにつれ、やや精度が落ち、それは後半、自らの首を絞めた。

「引かずに行こう、とは話していましたが、押し込まれて。でも、そこを凌ぎ切れたことがよかった」(磐田・小川航基)

 優勢だった福岡だが、41分、巧妙に自陣ゴール前で小川にファウルを取られてしまう。接触はあったが、やや不運な判定だったか。そして遠藤が蹴ったFKは、ゴール前に飛び込んだ中川創の頭にピタリと合った。中川の手はジャンプする前にエミル・サロモンソンの肩にかかっており、微妙な判定が重なったとも言えるが......。

「遠藤さんから完璧なボールが来ました。練習で見て(精度は)わかっていたんで、信じて飛ぶだけでした」(磐田・中川創)

 もっとも、この時点で福岡はまだまだ挽回できた。遠藤のひと蹴りにやられた形だが、あくまでセットプレーだった。

「後半、早々に自分たちが取り返しにいこうと話していたところで、10分以内に同点に追いついて振り出しに戻したら、と思っていました。でも、いけない時間帯に失点してしまった」(福岡・長谷部茂利監督)

 後半5分、福岡は再び失点を喫する。

 後半開始早々から攻勢を強めていたが、前がかりになってバランスが悪くなっていた。クリアボールを拾った遠藤に中盤でボールを運ばれ、攻め上がっていた左サイドバックの輪湖直樹が右サイドまで遠藤を追走する。ボールは一度、左に出され、遅らせることはできた。しかし遠藤は少し上がるそぶりを見せた後、バックステップを踏み、これに輪湖が引き寄せられる。

 この一瞬、中盤のインサイドがガラ空きになって、そこをドリブルで持ち込まれる。悠々と左サイドへボールを展開されると、そこは輪湖が抜けたポジションで、もう磐田の独壇場だった。センターバックが釣り出されてパスを入れられ、あとは小川に右足を振り抜かれ、ブロックした足に当たり、ネットが揺れた。

 遠藤の影に守りが崩れたと言える。バックラインは、何もフィルターがない状態で攻撃を受けると脆い。それはほぼ失点と同義である。瞬きする間に、そんな状況ができてしまったのだ。

「遠藤はゲームを予測し、読むことができます。いろんな経験をし、味方を生かすことができる。ピッチでもコーチングし、ドタバタせずにプレーさせられる。あえて急がず、時間を作るのもうまい」(磐田・鈴木政一監督)

 福岡は遠藤を封じ込めることで、攻守を好転させていたが、警戒しすぎたのだろうか。定石では、ゴールに直結するコースをまず封鎖しなければならないが、まんまと誘い込まれた。輪湖のミスというよりは、チームとして戦い方の集約だ。

 その後、福岡は磐田を敵陣に押し込み、縦パスからフリックを入れ、持ち込んだ遠野が鮮やかに一点を返した。他にも、立て続けのセットプレーからゴールに迫った。しかし、1点を返すのが精一杯で、無敗記録は途切れ、同勝ち点ながら首位の座を徳島ヴォルティスに譲った。

 もっとも、福岡は悲観する必要はないだろう。ファンマ・デルガド、ドウグラス・グローリなど主力を欠きながらも、組織を動かすことによって、互角以上に渡り合っていた。よく鍛えられたチームで、負けないチームと言える。ディテールの精度の低さで得点を取りきれず、失点も喫したが、戦い方を確立させている印象だ。

「もっと早い時間に1点返していれば、試合は変わっていたと思う。(先制して勝利するのがパターンだったが)今日は先制されても焦らず、プレーを続けられたのはよかった」(福岡・遠野)

 敗れはしたが、福岡には昇格の気配が消えていない。次戦は中2日、11月4日にアウェーで水戸ホーリーホックと戦う。