ACL出場圏内の3位とは3ポイント差。勝ち点45で並ぶ鹿島アントラーズ(6位)と名古屋グランパス(5位)の上位対決は、…
ACL出場圏内の3位とは3ポイント差。勝ち点45で並ぶ鹿島アントラーズ(6位)と名古屋グランパス(5位)の上位対決は、その試合の価値を表すかのように、立ち上がりから激しい展開となった。
開始早々、金崎夢生と犬飼智也の小競り合いが勃発していきなりヒートアップすると、ピッチ上のあらゆるエリアで肉弾戦が繰り広げられる。足を引っかけられ、ラグビーのようなチャージを浴びて、ピッチ上でうずくまる選手が続出。負傷者が生まれ、イエローカードも頻発し、ついには退場者まで出る。

リーグ2位の13ゴールを記録しているエヴェラウド
そんな様相となった一戦は、サッカーというよりも格闘技に近かった。鹿島のザーゴ監督も「サッカーの試合ではなく、ファウルゲームが行なわれていたと思っている」と、試合をコントロールできなかったレフェリーを皮肉るほどだった。
もっともその言葉には、多分に負け惜しみも含まれていただろう。試合は組織的な守備を保ち、一瞬の隙を突いてゴールを重ねた名古屋が2−0でモノにして、ACL出場圏内に浮上している。
よくも悪くも、ブラジル人選手が目立つ試合だった。
先制点につながったPKを誘発し、終了間際にダメ押しゴールを奪ったのは名古屋のマテウス。強烈な左足を武器に、ここ6試合で4得点とまさに絶好調にある。
一方、鹿島のファン・アラーノは、サイドの位置では華麗な突破を駆使して躍動するも、試合途中にボランチに移って守備のタスクを求められると、61分、68分と無理な対応を2度繰り返し、退場処分に。数的不利に陥った鹿島は、これで完全に勝機を失った。
極論すれば、ブラジル人選手の出来が、勝敗を左右した試合でもあったのだ。
鹿島の栄光の歴史を振り返れば、ブラジル人の存在を抜きには語れない。そのルーツがジーコにあるのは言うまでもないだろう。引退後もクラブに影響力をもたらす"神様"は、独自ルートでタレントを発掘し、鹿島とのパイプをつなげた。
レオナルドやジョルジーニョといった一線級は、ジーコがいなければ来日することはなかっただろう。アルシンドやサントス、マジーニョと黎明期を支えた選手の質も高く、ビスマルク、マルキーニョス、レオ・シルバといった他のJクラブから加入した実力者も、ジーコのチームでプレーしたいという想いがあったはずだ。
これまでに鹿島に在籍した外国籍選手のうち、9割以上がブラジル人で占められている(残りは韓国人)。わずか4カ月で退団したベベットのような誤算もあったにせよ、おおむね一定のパフォーマンスを示し、タイトル獲得に貢献している。
1996年のリーグ初優勝時にはジョルジーニョ、連覇を達成した2008年にはマルキーニョスがMVPに輝き、2018年のACLではセルジーニョがゴールを量産し、アジア制覇の立役者となった。選手だけでなく、歴代の監督もそのほとんどがブラジル人で、ジョアン・カルロス、トニーニョ・セレーゾ、オズワルド・オリヴェイラらが優れた手腕を発揮して、クラブに栄光をもたらしてきた。
一方で鹿島は、決してブラジル人選手に依存しているわけではない。才能あふれる若手を早くから抜擢し、主力へと成長させる術(すべ)にも長ける。
とりわけ外国人に頼りがちなFWのポジションも、生え抜きの日本人を育てようという意図が見える。柳沢敦をはじめ、興梠慎三、大迫勇也、鈴木優磨と、これまでに多くのストライカーを輩出してきたのも、信念のもとで生まれた成果だろう。
生え抜きの日本人タレントと、ブラジル人との高次元での融合こそが、鹿島が長く常勝軍団であり続けるゆえんだろう。とはいえ昨季は無冠に終わり、今季は変革のシーズンを過ごしている。
母国ブラジルで実績を積んだ新監督を招聘し、攻撃面の上積みを期待してファン・アラーノ、エヴェラウドというふたりのブラジル人を補強。染野唯月、荒木遼太郎、松村優太と、未来の鹿島を背負って立つであろう逸材も迎え入れている。海外移籍により層が薄くなった中堅どころは他クラブから補っているものの、常勝軍団の指針は揺らいでいないように見える。
変革のシーズンは開幕当初こそ苦しんだものの、ザーゴ監督のスタイルが次第に浸透すると、着実に状態は上向きに。8月下旬からは7連勝を達成し、一気に上位争いに加わった。
そこには、ふたりの新助っ人の活躍も見逃せない。ファン・アラーノは巧みなテクニックを駆使して多くのチャンスを生み出し、エヴェラウドは力強いフィニッシュワークでチームトップの13ゴールを記録(リーグ2位)。過去のブラジル人選手にも引けを取らないパフォーマンスを示し、チームを牽引している。その意味では"当たり"と言えるかもしれない。
もっとも、シーズン終盤に訪れたACL出場権を争うライバルとの一戦で、あっさりと敗れてしまう姿は鹿島らしくないものだった。退場したファン・アラーノだけでなく、エヴェラウドもいい形でボールを受けられずに不発に終わった。決して彼らの出来だけが問題だったわけではないが、苦しい状況でこそ結果を出した先達と比べると、影響力という意味では物足りなさは否めない。
今季も無冠が濃厚となったなか、鹿島は残りの試合で来季につながる希望を見出すことができるのか。このブラジル人コンビが、その成否を左右することになるだろう。