Jリーグも終盤戦に入り、川崎フロンターレの優勝は濃厚な状況。2位以下の激しい争いも面白いところだが、もう一つ、選手個々…
Jリーグも終盤戦に入り、川崎フロンターレの優勝は濃厚な状況。2位以下の激しい争いも面白いところだが、もう一つ、選手個々のプレーで、この人のチェックを忘れないでおきたい。毎試合、見る者を唸らせつづけている、アンドレス・イニエスタだ。今回は、あらためてそのプレーのすごさ、注目ポイントを、ふたりのライターに解説してもらった。
そのインテリジェンスが、イニエスタの本質である。
しかしながら、うまさ、だけで彼の真実は語れない。
「私が持っていない能力を、アンドレスは持っている」
バルサの選手、監督として功績を残したジョゼップ・グアルディオラは、いみじくもイニエスタについてそう語っていた。
「自分はバルサのMFとして、チームを機能させるためにダイレクトパスを磨き、ポジショニングを学習し、試合の流れを見る目を養った。しかし、私はゴール数がとても少なかった。(ヨハン・)クライフが監督の時には求められたこともあったが、得点能力は伸びないまま現役を終えた。ところが、アンドレスは14、5歳でゴールする能力も身につけていた。だから、私はサイドでも、トップ下でも彼を起用することにしたんだ」
イニエスタは、自らのゴールに対するナルシズムが少しもない。だからこそ、基本的には効率性を重んじ、有力なストライカーたちを操った。しかし、どうしてもチームにゴールが求められる緊迫した瞬間、彼は秘めたゴールセンスを解き放っているのだ。
例えば、2008-09シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ準決勝、宿敵のチェルシーとのセカンドレグで、バルサはジョゼ・モウリーニョが編み出した堅守に喘いでいた。ほとんどシュートを打てない状況だったが、そこでイニエスタは本性を見せる。終了間際、リオネル・メッシからのパスをエリア外で受けると、線を引くようなミドルシュートで決勝点を決めた。その一撃は、今も語り草である(勝ち進んだ決勝では、エトーの得点をアシストし、戴冠に貢献した)。
ゴール数は多くないが、チームが必要な場面で実は得点を決めている。
スペイン代表でも、それは変わらない。10年南アフリカワールドカップ決勝のオランダ戦、チームは苦境だった。延長後半、イニエスタは中盤で自らテンポをつくる。そして最前線にポジションを取ってパスを呼び込むと、右足で決勝点を叩き込んだ。
イニエスタのプレーは、神がかり的に映る。それは勝利に直結しているからかもしれない。チームが本当に必要とした時、ゴールゲッターにも変貌し、伝説をつくってきたのだ。
「自分にとって、サッカーこそ人生。それを日々、味わっていたいんだ」
イニエスタは言う。サッカーに人生を懸けている。穏やかで優しい風貌だが、体内には激情が潜む。
最近、監督交代で苦境に立った神戸で、イニエスタ自身の得点が増えているのは、決して偶然ではない。