10月31日、アミノバイタルフィールドで行われた関東大学1部TOP8Bブロック第2節、明治大学グリフィンズ対桜美林大学スリーネイルズクラウンズ(TNC)の一戦は17対7でTOP8初年度の桜美林大が勝利した。前節の早稲田大戦に6対9と惜敗した…

10月31日、アミノバイタルフィールドで行われた関東大学1部TOP8Bブロック第2節、明治大学グリフィンズ対桜美林大学スリーネイルズクラウンズ(TNC)の一戦は17対7でTOP8初年度の桜美林大が勝利した。

前節の早稲田大戦に6対9と惜敗した桜美林大が、守備とキッキングで明治大を上回った。第2Q7分13秒に明治大RB森川竜偉(2年)に先制TDを奪われたが、P神杉晃汰(4年)が好パントを連発してフィールドポジション争いを優位に進めると、敵陣43ヤードから始まった第3Q終盤のドライブをRB関根幹太(3年)の2ヤードTDにつなげて同点に追いついた。50ヤードから始まった第4Q中盤の攻撃機会にはQB水越直(1年)のフリーフリッカーからのパスを受けたWR宮澤稜(2年)が、エンドゾーンを駆け抜けて勝ち越した。

さらに、明治大が直後の攻撃で展開したスペシャルプレーのパスをCB河井駿太(2年)がインターセプト。これを第4Q7分1秒にK神杉の28ヤードTDに繋げて2ポゼッション差とした。

「今日は絶対に勝たなければならない試合だった」

試合後、メディアに囲まれた桜美林大・関口順久監督は前節の早稲田大戦の翌日に急逝した桜美林大学の佐藤東洋士理事長に思いを馳せ声を詰まらせた。関口監督をはじめ、コーチングスタッフの胸には佐藤理事長を偲ぶ喪章がつけられていた。

現在もチームの顧問として名を連ねる佐藤理事長は、創部当時からTNCの活動を温かくサポートしてきた。2013年には大学の全面バックアップによる強化体制を作り上げた、チームの良き理解者であり恩人である。

昨年3月の創部50周年式典では「私の夢はTNCが日本一になったら桜美林学園創設者・清水安三先生の出身校であるオベリン・カレッジのフットボール部(米国NCAA3部)と交流戦を行うこと。それを実現できる成績を残してほしい」と、チームにエールを贈っていた。

今季の桜美林大はもう一つ喪章を着けている。今年8月、不慮の水難事故で急逝した昨関東大学1部BIG8のリーディングラッシャーRB荒巻大介のものだ。選手たちは荒巻のイニシャル『DA』と、背番号『20』が記されたシールド型の黒いデキャルをヘルメットの後頭部中央に貼って試合に臨んでいる。

「荒巻が亡くなった当初は、喪失感に苛まれました。しかし、葬儀の時、荒巻のお母さんから『大介の分もよろしくお願いします』と言われて、いつまでもくよくよしてはいられないと思いました」

同点TDを挙げた関根幹太(3年)は、自分たちとは比べ物にならないくらい辛い思いをしている荒巻の母の言葉に、荒巻と共に戦おうと決意したという。その思いは桜美林大の選手たち全員のものであることは、試合前の選手の整列を見ればわかる。左から背番号が若い順に並ぶ中、19番と21番の間は1人分空けられている。

関根は1年時から主力レシーバーとして試合出場を果たしてきたが、今秋のリーグ戦開幕3週間前にRBに転向した。

「フィールドに能力の高い選手を数多く置いておきたい」という、富永一攻撃コーディネーターの提案を受けての転向だった。RBの経験は明治学院東村山高3年時の秋の大会前に数ヶ月間程度しかない。関根にとってはほとんど未知への挑戦だ。

「TDは鈴木祐人(2年)が、ゴール前2ヤードまで進めてくれて、自分は美味しいところをもらっただけ。RBとしてはまだまだです。いつも、『荒巻だったらもっと走れたんじゃないか』とか、『あいつだったら何処を走ったんだろう』とか、『どういう景色が見えていたんだろう』とか、考えて走っています」。

関根は同期である荒巻の走りを常に意識して、時にライバルとして、時にお手本として、自らの走りに生かそうとしている。

桜美林大の秋季リーグ戦における明治大戦初勝利は、亡き恩人とチームメイトに捧げる勝利だった。

桜美林大・関口順久監督試合後インタビュー映像