第1回は2年前のルーキーイヤーから全日本インカレに出場し、昨年度陥った不振から復調を遂げた470級スキッパーの西村宗至朗(社3=大阪・清風)。昨年、1年生ながらレギュラーの座をつかみ、今年度も高いレベルの走りを見せる倉橋直暉(スポ2=福岡…

 第1回は2年前のルーキーイヤーから全日本インカレに出場し、昨年度陥った不振から復調を遂げた470級スキッパーの西村宗至朗(社3=大阪・清風)。昨年、1年生ながらレギュラーの座をつかみ、今年度も高いレベルの走りを見せる倉橋直暉(スポ2=福岡・中村学園三陽)による対談。お二人にお互いの印象や全日本インカレへの意気込みを伺いました。

※この取材は10月22日に行われたものです。

目の前の1日1日を大切に(西村)


終始、柔らかい物腰でインタビューを受ける西村

――お互いの印象を教えてください

倉橋 一番に出てくるのは優しい。そして、すごく賢くて、視野が広いと感じます。

西村 直暉は後輩として見るならすごく意見を言ってくれます。上級生に対しても、もっと部のためにこうしたらいいのではないかという提案をしてくれて、しっかり自分を持っているなという印象です。

――今年の470チームの雰囲気はいかがですか

西村 去年を振り返ってみると、美紗樹さん(田中美紗樹氏・令1スポ卒)という絶対的なエースがいて、そこに自分たちが頑張って一方的についていく状態だったので、今考えると、全員で高めあって競技に取り組んでいくことができていなかったのかなと思います。ただ、今年は佐香さんをリーダーとしてやってきて、雰囲気はどうだろう?

倉橋 雰囲気はいい方向には向かっていると思います。 僕が入学してから470のチームは日大、慶大に対して負けが続いていて、昨年も全日本インカレでは470チームが足を引っ張って負けてしまったのですが、その時は負けに対してあまり悔しい気持ちが足りなかったんだと思います。でも、今年はその悔しさをバネに夏合宿でもみんなで意見を出し合って練習してきて、やっと今年は慶大に勝って、日大にも追い付いているので雰囲気はいいと思います。

――現在の調子はいかがですか

倉橋 僕はいい感じです。

西村 僕も調子は上げてきていると思います。去年のスランプに陥っていた時期の状態は脱却して、夏のレースでも成績はついてきているので、この調子でいけたらなと思います。

――この1年を振り返っていかがですか

倉橋 自粛の中で部として練習できない期間があったのですが、僕はこの中で差をつけたいなと考えて、海外のメダルレースの動画や過去の自分の走りを見返したり、筋トレをしたりしていたので、4月から今までの期間は自分としてはいい時間になりました。

西村 直暉は研究熱心だよね。動画をしっかり見て、僕たちにも見せてくれたりするのでありがたいです。自分も同じく、代が変わってから自粛期間に入って、例年通りの活動が制限された中で目の前の1日1日を大切にして活動するということを意識していました。チームとしては全員でzoomを通して座学の勉強を行い、海上での練習が始まってからでもそれぞれのクラスに分かれて練習に集中していました。また、470協会のフリートレースやナショナルチームの人達との合同練習もあり、集中できる環境を整えてくれたことも大きかったです。なので、そういった環境に対して感謝する1年でした。

とにかく感謝の言葉を(倉橋)


率直な発言が印象的だった倉橋

――現状の課題を教えてください

倉橋 ボートスピードの強化です。僕は倒さなければならない一番の敵である日大に対してスピードが足りないと感じているので、そこが課題です。470チーム全体の課題としてはスピードというよりはクルーの動作ですかね。

西村 技術面の面で見たら足りないところが色々あるんですけど、僕も直暉が言ってくれたように日大が一番の敵だと思っていて、日大はボートスピードもあるし全員のベースの能力や経験値が高いです。また、海の上でも勝ちたい気持ちが前面にあふれていて、負けた時もすごく悔しそうな顔をしているので、そういった面はチームとして見習っていかなければいけないのかなと思います。 加えて、監督からもチームとして常に覇気を出すよう言われていて、一つのことに一喜一憂せずに「ワセダには勝てないな」と思わせることはヨット部全体の課題かなと思います。個人としては団体戦の戦い方で反省点が出ることが多かったので、そこは全日本インカレでは改善できるようにしていきたいです。

――下級生とはどういったかたちでコミュニケーションを取っていますか

西村 自分が一番意識していることは会話をすることで、他の同期と比べても一番コミュニケーションは取っていると思います。特に今年、ヨットの経験がない1年生が多く入ってきてくれて、ヨットの知識もそうですが、部活動をやる上で大事なこととかを積極的に教えていました。また、彼らにはわからないことがわからないと思うので、自分たちから積極的に話していこうということを促していました。あとは楽しく部活をやることが一番だと思うので、くだらない会話も交えてアットホームな環境になるように心がけています。また、4年生が抜けると僕らがチームを運営していくこととなるので、長期的な目で見た中で来年、理想のチームを作るためにも今のうちからそういった会話を行うようにしていました。

倉橋 自分も宗至朗さんが言っていたようにとにかく会話をするように心がけています。また、会話以外にも1年生を遠くから観察するようにして、あえて何も言わずにずっと見ることで1年生のいいところや改善点などがわかるようになるので、そういったところを見つけたら優しく注意するようにしています。最近は1年生がサポートに回ってくれているので、とにかく感謝の言葉を言うようにしています。

西村 直暉、教育係だもんな。

倉橋 そうですね。ヨット部内で教育係というものがあって、それを任されています。正直、同期よりも1年生とずっと会話しています。(笑)

西村 (笑)

――クルーの方とはプライベートでも交流はありますか

倉橋 ほとんどないですね。たまに風吹きそうだからこういう動画を見ときましょうといったやり取りはありますけど、プライベートで遊ぶことはないです。

西村 クルーの新井(健伸)とは同期間での会話をしますけど、お互いの趣味の話などはあまりしないですね(笑)。

――学業との両立はできていますか

倉橋 はい、できています。その日の授業はその日に全部終わらせるようにしていて、基本的に土日から練習が始まるので、前日である金曜の夜までには全ての課題を終わらせるよう心がけています。

西村 僕はヤバいです(笑)。完全に僕の怠慢なのですが、去年、一昨年に色々とあって…

倉橋 今年は大丈夫ですか。

西村 今年は大丈夫です!オンライン授業で早稲田に住む恩恵はあまりないのですが、過去の自分を猛省して取り組んでいます(笑)。

――ヨット以外の悩みはありますか

倉橋 僕は今、減量をしていて、トレーニングも好きなんですけど、食欲が止まらないです…。特に甘党でそういったものを食べたいのですが、食べると太ってしまうので、矛盾が生じています。

西村 葛藤があるのね(笑)。

倉橋 日々、葛藤と戦っています。自分はセブンイレブンのスイーツが好きで近くの店舗に新商品を見に行くんですけど、たまに欲望に負けてしまう時は自分が嫌になりますね。

西村 去年は勉学の影響で生活全体が悪い方向に向いていたのですが、今年はないですね。ヨットも大きくつまずくこともなく、順調に過ごせています。

――ヨットを始めたきっかけは何ですか

倉橋 愛知の蒲郡でヨットの体験会がやっていて、ちょうどヨットクラブができた年に兄が競技にハマっていたので、自分もやってみたいと思い、始めました。

西村 僕は父親が大学時代、ウィンドサーフィンをやっていてマリンスポーツには詳しかったので、父に連れられて兵庫で開催されていたヨットの体験会に行ったことがきっかけで小学1年生からヨットを始めました。基本的にジュニアからヨットを始める子は体験会が多いです。

倉橋 それしか始めるきっかけがないですね。

西村 大体は父母の影響だと思います。多分自分から「パパ、僕ヨットやりたい」とはならないですね(笑)。

――他に行っていたスポーツや習い事はありましたか

倉橋 スポーツ全般が大好きだったので、小学校ではサッカーとテニスをやっていましたし、中学でもバスケ部でした。野球は空き地を使って友達とやっていました。

西村 小学校は水泳と、ピアノも少しかじったぐらいやっていました。僕は中学受験で唯一ヨット部があるという理由から大阪府の清風中学・高等学校に行こうと考え塾に入ったので、それ以来はヨット一筋です。球技は全くできないです(笑)。今思えば、そういうのをやっとけばよかったとは感じます。

――自分に一番合っていると感じたクラスはありますか

倉橋 僕は一人乗りのOP級が合ってたと思います。一人だと全部自分の考えながら乗れて、勝ち負けの原因がはっきりしているのですが、二人乗りだと上手くいかなかった時に悔しさや苛立ちが強く出てしまい、意見がぶつかることもあるので、僕は1人乗りのほうが合ってたかなと思います。

西村 僕は直暉とは逆ですね。これまでOP級、420級、470級に乗ってきたのですが、ダブルハンドの420級、470級の方が楽しく乗れていたかなと思います。というのも、一人で乗る分には良くも悪くも自分の責任なのですが、ダブルハンドになるともう一人のクルーと協力して走ることで楽しさを感じました。もちろんうまくいかない時もありますが、僕はそれを含めて競技だと思っているので、そこは性に合っていると思いました。

――憧れやライバルと感じた選手はいますか

倉橋 ライバルは慶大の玉山義規(2年)選手です。クラブは違うんですけど、ずっと同じ場所で練習してきて仲もよく、OP級でも勝ったり負けたりしていたので、今でもライバルは玉山君です。憧れの選手は、オーストラリアのベルチャー選手です。やはりどんな状況でも勝ち続けられる選手はすごいと感じています。

西村 一番印象に残っているのは藤原達人(3年)選手です。藤原選手とは兵庫ジュニアから一緒にやってきて、高校では420で同じチームの中でもこいつだけには負けたくないという気持ちを持っていました。次の全日本インカレ絵でも470級で出てくると思うので、楽しみです。憧れている選手は言っていくときりがないのですが、運の要素が強い競技で勝ち続けられる選手というのはすごいなと感じます。

全日本インカレへの想い

――全日本インカレまで2週間を切りましたが、心境はいかがですか

倉橋 とにかくたのしくやって、絶対に勝つという気持ちで臨みます。

西村 自粛期間が明けた夏、あまり活動ができないと思っていた中でも練習やレースをこなすことができて、早慶戦や秋インカレでも勝ちを収めて自分たちの実力は上げてきているので、この調子でいけたらいいかなと思っています。あとは去年のインカレを思い返すと、一緒に乗っていた秦さん(秦和也氏・令1基理卒)とのコミュニケーションが少し足りず、自分が支えることができなかった後悔とクラスリーダーである美紗樹さんについていけなかったふがいなさ、申し訳なさがあるので、今年こそは絶対に優勝するという意気込みでやっていきます。

――お二人は1年生から全日本インカレに出場していますが、大会独特の雰囲気は感じますか

倉橋 みんな気合が入っているので、団体で勝ちたいという気持ちは強く感じます。あと、他のチームに対しての警戒は普段よりも敏感になりやすい雰囲気であると思います。

西村 小学校の大会や高校総体とはまるで違い、応援や大学の数も普段の大会に比べると多く、どの大学も気合が入っているので、そういった周りの雰囲気はインカレならではなのかと感じます。また、それぞれの大学カラーが色濃く出る場所だと思うので、自分たちも埋もれないように覇気を持って、他大学を圧倒しながら レースでも前を走れるようにしたいです。

――会場が西宮から和歌山に変更になりましたが、気持ちの変化はありましたか

倉橋 僕は正直、風が弱く、不規則に変化しやすい西宮は嫌だったんですけど、和歌山は何度か行ったことがあり、地形の関係でブローが見やすい印象なので、和歌山で頑張ろうという気持ちにはなりました。

西村 僕は全日本インカレに向けて場所が変わったことに対しての気持ちの変化はあまりないんですけど、1年間西宮の情報を集めて臨もうとしていたので、チームとしては少し残念です。ただ、僕は近畿地方の水域でずっとやってきていて、インターハイの会場は和歌山だったので、しっかりその経験を生かしていこうと思いました。

――最後に全日本インカレへの意気込みをお願いします

倉橋 絶対勝ちます!

西村 僕も負けることは考えていないです。一昨年や去年はどうしても引きの姿勢でレースを展開してしまったので、今年はしっかりチームを引っ張り、積極的にチームを展開していたいです。また、秋インカレや直前のレースと全日本インカレでは全く別のものだと考えているので、しっかり気持ちを切り替えて、全員がプラス思考で臨みたいと思います。 

――ありがとうございました!

(取材・編集 足立優大、大島悠希)


インカレへの抱負を書いていただきました

◆西村宗至朗(にしむら・そうしろう)(※写真右)

1999(平11)年5月8日生まれ。170センチ。大阪・清風高出身。社会科学部3年。470級スキッパー。去年の後悔を「報いる」ことと一死「報いる」ことを掛けたメッセージを色紙に書いてくださった西村選手。同期である新井健伸選手とのペアに期待がかかります!

◆倉橋直暉(くらはし・なおき)(※写真左)

2000(平12)年10月10日生まれ。168センチ。福岡・中村学園三陽高。スポーツ科学部2年。470級スキッパー。マイプロテインを持参し、今回のインタビューに応じてくださった倉橋選手。去年味わった悔しさを胸に、今年も全日本インカレの舞台に挑みます!