今回は470級クルーの4人が集結。唯一選手として昨年の全日本インカレを経験しているのは、新井健伸(商3=東京・筑波大付)。軽風域を得意とし、全日本インカレ初出場を狙う上園田明真海(スポ3=大分・別府翔青)。昨季ルーキーらしからぬ活躍を見せ…

 今回は470級クルーの4人が集結。唯一選手として昨年の全日本インカレを経験しているのは、新井健伸(商3=東京・筑波大付)。軽風域を得意とし、全日本インカレ初出場を狙う上園田明真海(スポ3=大分・別府翔青)。昨季ルーキーらしからぬ活躍を見せた倉橋直暉(スポ2=福岡・中村学園三陽)のクルーを今季から務める松本健汰(政経3=東京・早大学院)。そして2年生ながら、小泉凱皇(スポ3=山口・光)のクルーに抜てきされた金子俊輔(商2=埼玉・早大本庄)。どのペアも力が拮抗している今年、4人全員に全日本インカレ出場の可能性があります。ヨットを始めたきっかけから全日本インカレにかける思いまで、お話を伺いました。

※この取材は10月22日に行われたものです。

『470チームの総合力は上がっている』(新井)


唯一の全日本インカレ経験者として、470クルーを引っ張りたいと語った新井

――今季ここまでを振り返っていかがですか

金子 コロナウイルスの影響で冬の期間を含めて思うように練習ができなくて、僕は冬から本格的にクルーの練習に入ったのですが、いざ頑張ろうと思った時に練習時間が減ってしまったことは残念です。ただその分、陸での体力トレーニングはいつも以上にできました。

松本 コロナの影響で練習できない時間が長かったのですが、夏から本格的に練習を積むことができて、最近の大会では他の大学に対してもアドバンテージを作れている部分があるのかなと思います。

上園田 コロナの影響で半年何もやっていないという感じだったので、正直今も2週間後に全日本インカレがあるという実感がない部分があります。昨年までのような応援はないし、人数制限もされているので、秋関東インカレは優勝できたんですけど盛り上がりに欠けた感じがしていて、実感がないです。

新井 去年全日本インカレで負けて、優勝をもう一度取り返せるようにという思いで練習を始めたのですが、コロナの影響で思うようにはできませんでした。でも早大は他大学に比べると今年の夏練習を積めたと思うので、そのアドバンテージを生かしつつ、今年のインカレに向けて活動できていることに対してありがたいなと思っています。その一方で、大会の形式も何もかも変わったので、チームの雰囲気づくりの面ではすごく難しい1年だったかなと思います。

――470のクルーとして、今年の470チームの出来をどのように感じていますか

上園田 80点!

新井 昨年は日大、慶大に対してほとんどの大会で負け続けたシーズンだったのですが、今年は慶大に対しては大体の大会で勝つことができていて、日大に対しても昨年よりは差を詰めることができているので、470チームとしての総合力は上がったのかなと思います。

松本 クルーが昨年に比べて少ないので、乗る機会が例年より多くて、ペアの入れ替えも少なったので、練習量やコンビネーションについては良い方向に向いているのかなと思います。

――今年の470チームの雰囲気はいかがですか

松本 スナイプとは違うよね。

上園田 個人個人で頑張っている感じ。

金子 小松さん(小松一憲コーチ)からも「海の上でのまとまり感がない」と言われているのですが、必ずしも雰囲気が悪いという意味ではないのかなと思います。

新井 昨年はスナイプチームと比べてそういう指摘を良く受けたのですが、昨年よりは結束しているのかなと思います。昨年は田中美紗樹さん(令2スポ卒=大阪・関大一)がいて、その下にみんなが集っている感じだったのですが、今年はどちらかというとみんなが主体的にやるチームになったので、チーム力はまだスナイプチームには劣りますけど少しは上がっているのかなと思います。

――クルーとして船の上で一番気を付けていることは

金子 一番気を付けていることは、船の中でのコミュニケーションを増やすことですかね。技術的な面では先輩方には勝てないので、そこで勝負するのではなく、コミュニケーションを増やして、うまくいかなくてスキッパーが落ち込んでいる時もポジティブな方向に持っていけるように、練習やレースで心掛けています。

松本 僕もコミュニケーションを一番大切にしています。今年は今までと違い後輩と乗ることになって、気を遣わせてしまうと船が思うように走らなくなってしまうと思っているので、練習中やレース中はしっかり考えていることを言い合ってコミュニケーションを取るということを大切にしていました。

上園田 4年生の佐香さん(将太・スポ4=岩手・宮古)と乗っているのですが、佐香さんは自分のコース展開に自信がない方で、私と乗る時もお互いわからないと言い合ってしまうと先に進まないので、私は自分から提案すること、答えを出すことを心掛けています。

新井 僕たちの所は同期で乗っているのですが、コース戦略は基本的にスキッパーが担っているので、僕はスキッパーがコースを取りやすいように常に動作のミスをなくすことを最優先にしています。その傍ら、スキッパーが欲しい情報をなるべく伝えるようにしたり、スキッパーが動揺している時はちょっと落ち着こうと声を掛けたりして、スキッパーが走りやすい船の雰囲気を作れるようにしています。

――現状の競技の課題を教えてください

金子 技術的な面でまだまだミスが目立つなと思っていて、風の変化で動作が変わってくるのですが、風の強弱に合わせた動作の違いとかそういう面でまだ不安があります。あとはスピンホイストのところのスピードを上げることが今後の課題です。

松本 風が強くなってくるとO旗が上がって、体を使ってセールをあおって船を動かすことが許可されるのですが、その時のパフォーマンスで日大の選手らに比べてまだ劣っていると思っています。自分としてはトレーニングを積んでいるのですが、レースになるとなかなか力を出せていないなと思うので、O旗が上がってからの風が自分の課題です。

上園田 強風の時の技術面です。男子に比べてパワーがないのでもっと体力をつけないといけないのと、強風になればなるほど体を使えるのですがその動作がまだまだできていないので、そのレベルを上げていかないといけないと思います。

新井 今年1年間視野を広く持って、レース中も動作に集中しすぎずに海面を見たり考えたりすることを心がけていて、その点は改善されていると感じています。でも、緊張するレースや動作の質が求められる場面で、視野の広さがまだ足りないので、常に余裕をもって視野を広く持てるようになることが今の課題です。

――下級生とはどういったかたちでコミュニケーションを取っていますか

松本 僕は後輩と話すのが好きな方なので、結構みんなと話して、自分が1、2年の時に感じていたこととか躓いていたことと同じことを話していると共感したりして、愚痴の掃きだめみたいな立場でいます(笑)。相手はほぼ金子なんですけど(笑)。

新井 今年は470とスナイプで活動が分かれていたので、スナイプの1年生とは全く交流がなかったので少し難しかったです。でもどちらかというと470の方に1年生が多かったので、その点自分たちは比較的1年生とも話せた方なのかなと思います。

学業、懸垂、料理?…自粛期間の過ごし方


言葉を選びながら丁寧に答える金子

――部としては6月下旬まで活動を休止していましたが、その間どのように過ごしていましたか

上園田 トレーニングは個人で記録を付けながらやっていたのですが、それと別に部としてZoomでつないで共通のトレーニングをすることもありました。

金子 僕は料理をしていました。この期間有効に使うために何をしようかなと考えた時に、料理は大学卒業後も必要な技術になってくると思ったのでお昼ご飯はほぼ毎日自分で作っていました。

松本 僕もこんなに時間を取れる期間はないなと思って、色々本を読んでみたり、英語の勉強をしてみたりしました。それ以外はNetflixとか見てゴロゴロしていたのですが(笑)、意識を高く保とうと色々なものに手を出しました。今はもう続いてないのでどれくらい効果があったか定かでないのですが…(笑)

上園田 私も英語の勉強をしてみようと思って英語の新聞を読んだりとか、同じくNetflixを一気に見たりしました。あとは就活を頑張ろうと思ったのですが、結局何もせずに終わりました(笑)。

新井 ジムに行けなかったので、懸垂マシンを買って部屋に置いて、ひたすら懸垂しました。あとは普段部活をしているとなかなかできないことをしたくて、新聞を読んだり英語の勉強をしたりしました。

――学業との両立はいかがですか

松本 470クルーはみんなできていると思います。

新井 今年は授業がオンラインだったので、体育会からするとすごくありがたかったです。練習があっても受けることができるし、なにより練習翌日に学校に行くのがしんどいということがなかったので、楽になったんじゃないかと思います。

金子 僕はGPA下がりました…。テストがなくなってレポート形式になったので、レポートが苦手なのかもしれないです。

ヨットとの出会い


上園田は小学校3年生からヨットを続けているという

――ヨットを始めたきっかけは

金子 部活に入りたいなという考えは大学入学当初からあって、どこの部活にしようかなというところで迷っていたのですが、僕の高校のラグビー部の先輩の川合大貴さん(商3=埼玉・早大本庄)から声を掛けてもらって新歓コンパに行きました。そこでまつけんさん(松本)が熱烈に勧誘してくれて、それもあって試乗会に行こうかなと思い、乗ってみてすごく気持ち良かったので、このスポーツにしようかなと決めました。

松本 僕は高校から早大学院でヨット部を始めたのですが、一番の理由は練習場所が定期圏内にあったことです。近いから試乗会に来てと言われて友達と遊び半分で行ったら、意外と面白くて、東京湾で練習していたのでディズニーランドが見えて景色が良かったこともあって、ぷかぷか浮いてこれで部活なら結構おいしいんじゃないかと思って始めました(笑)。

上園田 私は小学校3年生からやっています。学校の友達がヨットクラブの見学会に誘ってくれて一緒に行ったら、初心者クラスの大会で優勝できて、「あ、いけるかも」と思ってそのまま続けています(笑)。

新井 僕は大学に入った時は絶対にサークルに入ると豪語していたのですが、遊ぼうと思って入ったらあまり楽しくないなと思って、やっぱり体育会かなと思いました。父がヨット部だったので良いなと思ったのですが、父は大きい遠くに行くクルーザーに乗っていて危険な事故を経験しているという話も聞いていたので怖いなという思いもありました。でも見に行ったら小さい2人乗りで、全然違うじゃんと思ったんですけど(笑)、乗ってみたらスピード感はあるし、ボートが常に見てくれるから安全だと言われてありだなと思いました。当時の4年生からも勧誘されて、今に至るという感じです。

――ヨット以外にやっていたスポーツや習い事は

新井 小中高とサッカーをやっていました。

松本 僕は結構色々やっていたのですが、一番意外と言われるのは、小学校の時にやっていたスケートです。フィギュアもやっていたし、最初はアイスホッケーもやっていました。

上園田 私は小さい頃からピアノをやっていて、途中新体操もやっていました。

金子 僕は幼稚園から中学校までサッカーを頑張っていたのですが、高校でラグビーをやって、大学では新しいことをやりたいなと思ってヨットにしました。

新井 なんでラグビー始めたの?

金子 その時も新しいことをやりたいなという思いはあって、サッカーでもいいなと思っていたのですが、その時のラグビーの顧問の先生から熱烈な勧誘を受けたのでそっちにしました。ラグビーも良いスポーツです。

――その経験がヨットに生きたことはありますか

新井 僕は水泳もやっていたので、沈した時とかも泳げるし、今年の夏の風がなかった時とかは休み時間にみんなで泳いだりしたので、水泳をやっていて良かったなと思いました(笑)。サッカーは…ないなあ。ヨットが特殊過ぎて。

上園田 ピアノは…手先の細かさとか?(笑)

松本 俺もピアノ習ってたけど生きてない(笑)

新井 でもロープ結んだりするときに、サッカー部よりは上手いんじゃない?

松本 ヨットは結構特殊なスポーツなのであまりないかもしれないです。なにせ風が相手なので…(笑)

金子 僕はラグビーをやっていて重りを使った筋トレをよくやっていたのは良かったのかなと思います。筋力はヨットに乗る上でも絶対に必要なので、筋トレの仕方を学んでいたのは大きかったのかなと思います。

『470チームとしても優勝を』(松本)


全日本インカレへの意気込みを語る松本

――全日本インカレまで2週間を切りましたが、今の心境は

金子 コロナもありましたしあっという間だったなというのが正直なところです。でも夏休みはどの大学よりも練習したという自負があるので、そこに関しては自信を持っています。まだ緊張はあまりしていないのですが、本番はいい緊張感を持ってそれを力に変えていけたらいいなと思います。

松本 僕もあまり実感がないというか、練習できない期間があったので、ついこの間まではまだ6月くらいなんじゃないかと思う時もあるくらいでした。ただ、僕は全日本インカレに出たいと思って大学でもヨットを続ける選択をしたので、ここまで頑張ってくることができたなという感じはしています。

上園田 私は焦りもあるし、金子が言ったように練習量はどこよりも多いという自信もあります。レースで日大に勝てないことが多いのでそこの部分が少し心配です。

新井 今は全く緊張していないです。去年は秋インカレで優勝してから10月の間はずっと緊張した状態で挑んでいたのですが、今年の秋インカレは応援もないし、台風の影響でクラスごとに分かれて開催したこともあって、例年と雰囲気が違いすぎて緊張感がチームとしても生まれにくかったのかなと思います。ただ和歌山に入ったら緊張感が湧いてくると思っているので、その緊張感をいい活力にできるといいなと思います。

――会場が西宮から和歌山に変更になりましたが、気持ちの変化はありましたか

新井 僕はショックでした。去年西宮で負けて、今年は西宮でリベンジをしたいという気持ちが強かった分、それができないという悔しさがありました。去年は1年後も西宮で開催されると思っていたので、1回1回の練習やレースで1年後に向けて反省やその日の傾向を記録して準備していた分、それが使えなくなってしまったのも残念で、あまりいい気持ちではないです。

上園田 先輩の田中美紗樹さんが高校時代ずっと和歌山で練習していたそうで、いろいろ情報があるという点ではチャンスかなと思いました。

松本 僕は特に心境の変化はないです。和歌山は高校総体が毎年開催されている場所で、早大は総体経験者が多いので、他大学に対してはアドバンテージなのかなと思います。

――最後に全日本インカレへの意気込みをお願いします

金子 昨年のインカレの最終日、僕は海に出ていて、優勝した慶大が喜んでいる姿を見て、レースに出ていなかったけれどすごく悔しい思いをしたので、場所は違っても昨年の借りを返したいなと思います。早稲田である以上勝利を求められると思うので、勝ちにこだわって、勝ち切って東京に戻ってきたいと思います。

松本 総合優勝を絶対にみんなでしたいというのが1番です。470チームは試合でスナイプに助けられている場面が多いので、470としても優勝したいなという目標もあります。

上園田 昨年負けた時の気持ちを思い出しながら練習してきたと思うので、練習の成果をしっかり出して、最後に優勝してこたさん(松尾虎太郎主将・スポ4=山口・光)を胴上げできるように頑張りたいです。

新井 昨年西宮で4年生を勝たせられなかった悔しさを今でも鮮明に思い出すことができるので、総合優勝をして王座を取り戻したいという気持ちが一番強いです。僕は昨年出場して海の上の雰囲気もわかっているので、金子とか初出場の後輩は緊張すると思うのですが、先輩として引っ張っていって470チームとしてもいい結果を残したいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 足立優大、町田華子)


全日本インカレにかける思いを書き表してもらいました!

◆新井健伸(あらい・けんしん)(※写真左から2番目)

2000(平12)年3月2日生まれ。183センチ。東京・筑波大付髙出身。商学部3年。今年の470級クルーの中では唯一、全日本インカレへの出場経験がある新井選手。昨年の借りを返すべく、全日本インカレの舞台に臨みます!

◆上園田明真海(かみそのだ・あまみ)(※写真左)

大分・別府翔青髙出身。スポーツ科学部3年。「優勝してこたさん(松尾虎太郎主将)を胴上げできるように頑張りたい」と語った上園田選手。チームとしても2年ぶりの胴上げに期待がかかります!

◆松本健汰(まつもと・けんた)(※写真右から2番目)

1999(平11)年9月9日生まれ。172センチ。東京・早大学院出身。政治経済学部3年。1学年下の倉橋選手とペアを組む松本選手。決戦の地となる和歌山・海南ではどんな走りをみせてくれるのでしょうか。

◆金子俊輔(かねこ・しゅんすけ)(※写真右)

2000(平12)年5月14日生まれ。172センチ。埼玉・早大本庄髙出身。商学部2年。料理ではおしゃれなものを作りたいと述べてくださった金子選手。ペアを組む小泉選手との快走に期待です!