鷲見玲奈連載:『Talk Garden』 第3回 ゲスト:名波浩(サッカー解説者)局アナ時代にスポーツ番組に携わっていた…

鷲見玲奈連載:『Talk Garden』 第3回
ゲスト:名波浩(サッカー解説者)
局アナ時代にスポーツ番組に携わっていた鷲見玲奈さんによる「対談企画」。第3回はゲストにサッカー解説者の名波浩さんを迎え、先日試合を行なったサッカー日本代表について話を聞いた。

対談を行なった名波浩さんと鷲見玲奈さん
鷲見 今年の"初陣"となった日本代表戦が、ようやく10月9日、13日にオランダで行なわれました。日本代表にとっては、国内組だけで臨んだ昨年12月のE-1選手権以来10カ月ぶり。ヨーロッパ組が加わった試合となると、10月の親善試合ベネズエラ戦以来11カ月ぶりでしたが、名波さんはどんなところに注目して、ご覧になっていましたか。
名波 まずはメンバー選考に注目していましたが、驚きがあったのは、ふたりくらいでしたね。Jリーガーは(帰国後に自主隔離措置があることなどを考慮して)連れていけないとか、ヨーロッパ組にしても、ロシアの橋本拳人(ロストフ)やセルビアの浅野拓磨(パルチザン)は、それぞれの国の出入国規制の関係で選ぶことができないという縛りはありましたが、あとはだいたい順当だったかなと思います。
鷲見 驚きがあったメンバーというのは?
名波 三好康児(アントワープ)と板倉滉(フローニンゲン)です。ただ、監督の森保一さんには、日本代表と同時に五輪代表の強化もしたいという気持ちがあったでしょうから、東京五輪世代の彼らが試合には出なかったけれど、メンバーに選ばれたというのは、そういう意味もあったのかもしれません。
鷲見 東京五輪世代を含め、初めて日本代表メンバーが全員ヨーロッパ組という構成になりました。
名波 日本は決してサッカー先進国ではなく、まだまだサッカー発展途上国。僕はそう思っているのですが、ヨーロッパ(のクラブ)でやっている選手だけを集めて試合ができたというのは、サッカーにおける日本の"国力"を示すことになったんじゃないかとは思います。例えば、韓国にもヨーロッパでプレーする選手はいますが、すべてのポジションにいるわけではないので、試合をしようにもチーム編成ができない。アジアの多くの国が「日本はヨーロッパ組だけでチームが組めるのか」と驚いたんじゃないかな。
鷲見 確かに、それはすごいことですよね。
名波 いずれはワールドカップでも、日本代表メンバー全員がヨーロッパ組になると思いますよ。
鷲見 でも、名波さんは、日本のどういうところが発展途上国だなと思うんですか。
名波 先頃引退した内田篤人も、「世界と日本との差は開いている」と言っていましたが、UEFAチャンピオンズリーグの決勝とか、ヨーロッパを代表するビッグクラブの試合とかを見ていたら、まだまだそこには及ばないと思いますよね。特に今、ヨーロッパで行なわれている試合を見ていると、無観客なのによくこれだけの高い強度でプレーができるなと感心します。観客が5万人、10万人と入ったら、その声援に後押しされ、さらに強度が上がるわけですから、ゾッとしますね(苦笑)。

鷲見 では、今回の日本代表戦2試合、それぞれについてうかがいたいと思います。まずはカメルーン戦ですが、前半は少し押される展開になりながら、後半はシステムを変えて盛り返し、0-0で引き分けました。
名波 前半、ひとつのポイントになったのが、4バックの左サイドバックに安西幸輝(ポルティモネンセ)が入ったことです。
鷲見 ベテランの長友佑都選手(マルセイユ)が、コンディション不良で招集辞退となりましたからね。
名波 代表での経験が浅い安西が入ることで、全体のバランスがどうなるかなと思って見ていましたが、攻撃に特長のある安西がどんどん前へ出ていったことで、その背後のスペースを使われてしまいました。
鷲見 そこは(左センターバックの)冨安健洋選手(ボローニャ)がうまくカバーしていましたよね。
名波 試合後のメディアも、センターバックのふたりはすばらしかった、という論調でしたね。でも、確かに(右センターバックの)吉田麻也は本当にすばらしかったけれど、冨安は前半、安西の動きをもっとコントロールして、あんなに前へ行かせてはいけなかったと思います。
押され気味の試合のなかで、中盤でボールを奪えそうなのに、奪えないシーンが何回かありました。そうなると、自分たちの背後を使われる可能性を考えたリスク管理のなかでは、センターバックがリーダーシップを取って、サイドバックやボランチを帰陣させることも含めて、スペースを消す必要があった。そこをコントロールできれば、もっと守備でも落ち着きが出たと思います。
とは言うものの、よくゼロ(無失点)に抑えましたよね。鷲見さんが最初に言ったように、11カ月ぶりの試合ですから。

鷲見 以前と同じようにコミュニケーションは取れないですよね。
名波 漫才コンビでも、11カ月ぶりにネタをやれと言われたら、たぶん感覚がつかめないでしょ。空気が全然違うと思います。
鷲見 11カ月ぶりの代表戦ということを考えれば、まずまず、ですか。
名波 もし自分がそのチームの主力で試合に出ていて、11カ月ぶりに入ってやっていたとしたら、こんなもんかな、って感じでしょうね。
鷲見 そして、4日後に行なわれたコートジボワール戦では、1ー0で勝利しました。
名波 最初に総合的な評価をすると、内容はすごく濃いものがありました。しぶとさや粘り強さがチーム全体に浸透していたなと思います。ヨーロッパでプレーしている選手たちにしてみれば、対戦相手は普段から同じリーグでやっている選手だったり、チームメイトだったりするわけで、世界的な強豪相手でもビビることがない。そういうところは本当にたくましい。
鷲見 ヨーロッパ組ならではの強みですね。ダブルボランチの組み合わせは、カメルーン戦の柴崎岳選手(レガネス)と中山雄太選手(ズヴォレ)から、この試合では、柴崎選手と遠藤航選手(シュトゥットガルト)になりました。
名波 この2試合だけを比較するなら、遠藤と組んだときの柴崎のほうが生きた、という感じはします。遠藤はセカンドボールを拾って、迷わずシンプルに、しかも確実に味方へつなぐ作業を淡々とやっていました。そのおかげで、柴崎もわかりやすく(攻撃に)顔を出すことができた。お互いの立ち位置が、必ず斜めや前後の関係になっていたので、そこでのアングル作りが、初戦では少なかった縦パスを入れやすい状況を生み出したと思います。
鷲見 1トップも、カメルーン戦で先発出場した大迫勇也選手が所属クラブ(ブレーメン)の事情で離脱したため、コートジボワール戦では鈴木武蔵選手(ベールスホット)が先発出場しました。このふたりには、どんな違いがありますか。
名波 簡単に言えば、大迫は一回(縦パスを)つけて落として、という出し入れが必要なタイプ。武蔵は一発のパスで(相手DFラインの)裏へ(ボールを)落としちゃえば、走力があるから競争できます。
鷲見 鈴木選手らしさも出ていましたね。
名波 でも、大迫だったら、もう少しいい姿勢でボールをキープできていたと思います。ボールを受けるまでのプロセスはいいとして、そこから味方につないで、次のプレーに移るというところに、武蔵はまだ課題がある。Jリーグやベルギーリーグではできているのかもしれないけど、そこは国際Aマッチの難しさですね。
鷲見 現役時代パサーだった名波さんから見て、どちらのタイプが合わせやすいですか。
名波 (パスを)足元に出すにしても、背後に出すにしても、大迫のほうが予備動作が多いから合わせやすい。こっち(出し手)のことを考えてくれているから(笑)。それでも、武蔵は(予備動作を)やるようになりましたよね、やっぱり。ミシャ(コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督)の下でプレーするようになって変わりました。
鷲見 森保監督はこの2試合で4バックと3バック、ふたつのシステムを試していましたが、それについてはどう感じましたか。
名波 僕は自分が監督だったときも、3とか、4とか、システムの数字にはこだわっていませんでした。チームにいる選手を当てはめていかなければならないので、前半と後半で変えたり、相手が嫌がっているから後半もこのままで行こうと決めたり、そういう森保さんの気持ちはよくわかります。
鷲見 どちらかにこだわるのではなく、対戦相手や試合展開によっても変えていく、と。
名波 そのほうがいいと思います。ただし、A代表は親善試合でトライするチャンスがあると思うので、それでもいいですが、五輪代表はどうするのか、という心配はありますね。
鷲見 森保監督も「対応力」と「臨機応変さ」をテーマに掲げているように、システムについてはあまり決めつけずに、臨機応変にやっていくのがいいのかもしれませんね。
名波 メディアに対しては、そういう発信をそれほどはっきりとはしていませんが、選手にはたぶん伝えていると思います。「3バックか、4バックかはそんなに気にしていないし、おまえらの順応性のほうが大切なんだから、そこを見ているよ」と。
鷲見 システム変更も含めて、2試合無失点だった守備面は評価されていますが、攻撃面では2試合で1点、それもセットプレーからの得点でした。この状況を、どう改善していけばいいでしょうか。
名波 FWやサイドアタッカーの選手に、おまえらが点を取ってこい、と言っているだけでは難しい。チーム全体で、どうフィニッシュまで持っていくか、どうゴールまでの道を見出すか、という考え方でやっていかなければいけないと思います。だから、みんなで攻撃の形を作ってほしい。サイドから攻めるにしても、中央からコンビネーションで突っ込んでいくにしても、みんなでコミュニケーションをとりながら、選手それぞれの特長を出してやっていけばいいと思います。
鷲見 DFの植田直通選手(セルクル・ブルージュ)の1点だけというのは、久しぶりの代表戦にしては少し寂しいなと、個人的には思ってしまいました。
名波 確かに、久保とか、大迫とかが点を取っていれば、新聞の見出しにもなりやすかっただろうし。「新10番の南野拓実がゴール!」とかね(笑)。
鷲見 私も小学1年から中学1年まで7年間サッカーをやっていて、主にFWだったので、そこはやっぱり、FWの選手に頑張ってほしいなと思います(笑)。
(第4回に続く)
鬼頭恵美●ヘア&メイク hair&make-up by Kitou emi (鷲見さん)
池上純子●スイタリング styling by Ikegami Junko(鷲見さん)