11月1日、東京競馬場でGⅠ天皇賞・秋(芝2000m)が行なわれる。 古馬による秋の中距離GⅠの初戦となるこの一戦。今…
11月1日、東京競馬場でGⅠ天皇賞・秋(芝2000m)が行なわれる。
古馬による秋の中距離GⅠの初戦となるこの一戦。今年は12頭と少頭数ながら、7頭のGⅠ馬が揃う中身の濃いメンバー構成となっている。中でも注目されるのは、昨年の同レース勝ち馬であり、JRA芝GⅠ8勝目の新記録がかかるアーモンドアイ(牝5歳/美浦・国枝栄厩舎)だろう。
「現役最強」と目されている存在だが、アーモンドアイに死角があるとすれば、5歳という馬齢だ。天皇賞・秋における5歳牝馬の成績は、20頭が走ってわずか1勝、2着1回という成績。その1勝を挙げたのは、2005年に14番人気の超人気薄だったヘヴンリーロマンス。同馬は4歳暮れに本格化した遅咲きの馬で、その天皇賞・秋がGⅠ初勝利だった。
一方、敗れている馬には錚々たる馬名が並ぶ。2014年には、それまでGⅠ6勝の名牝ジェンティルドンナが2番人気で2着。前走のGⅠ宝塚記念(阪神/芝2200m)で9着と敗れていたとはいえ、春には世界の強豪相手にGⅠドバイシーマクラシック(メイダン/芝2410m)を勝利していた馬だ。
2011年のブエナビスタも、前年の天皇賞・秋などGⅠ5勝を挙げていた。勝ち星からは1年ほど遠ざかってはいたが、前走の宝塚記念でも2着と安定した走りを見せていた。しかし、天皇賞・秋では1番人気ながら4着になり、日本のレースで初めて3着を外している。
さらに2009年のウオッカもそう。牝馬にして日本ダービーを勝った女傑は、前年の天皇賞・秋でダイワスカーレットと歴史的名レースを繰り広げてレコード勝ち。2009年の春はGⅠヴィクトリアマイル(東京/芝1600m)、GⅠ安田記念(東京/芝1600m)を連勝し、秋初戦のGⅡ毎日王冠(東京/芝1800m)で2着に入ってからの出走だったが、天皇賞・秋では3着に敗れている。
そのほか、GⅠドバイターフ(メイダン/芝1800m)などGⅠ2勝のヴィブロスが、2018年に7番人気で8着、2006年にはGⅠ宝塚記念などGⅠ3勝のスイープトウショウが1番人気で5着など、牡馬相手にGⅠを勝っていた名牝が相次いで敗れている。
唯一勝利している遅咲き馬のヘヴンリーロマンスは、アーモンドアイや前述の馬たちが3歳春のクラシックに出走していた頃に500万下(現在の1勝クラス)を走っていた馬で、4歳暮れに急激に伸びた。一方でジェンティルドンナ、ブエナビスタ、ウオッカといった3歳頃からとてつもない強さを見せている馬が、その能力を5歳まで持続するのは難しい。これらの馬たちは天皇賞・秋で敗れたあとにも、2400m以上のGⅠレースを勝ってはいるが、よりスピードが求められる2000mのGⅠは難しい部分があるかもしれない。
アーモンドアイは前走の安田記念で2着。初めて中2週というレース間隔で出走し、稍重馬場で出遅れて流れに乗れなかったなど、敗因はいくつか考えられる。ただ、昨年のGⅠ有馬記念(中山/芝2500m)で9着になるなど、今では決して絶対的な存在とも言いきれない。
サラブレッドも5歳になると、目に見えない肉体的・精神的な衰えが出てきても不思議はない。4馬身差で圧勝した、今年5月のGⅠヴィクトリアマイルくらいの走りができれば問題ないだろうが、5歳秋初戦の馬が単勝2倍を切るくらいの人気になるようなら、ちょっと疑ってかかりたいところだ。
そこで狙いたいのが、ダノンキングリー(牡4歳/美浦・萩原清厩舎)だ。

今年3月の中山記念で重賞3勝目を挙げたダノンキングリー
同馬はGⅠ未勝利ながら、今年のGⅡ中山記念(中山/芝1800m)など重賞3勝。昨年のGⅠ日本ダービー(東京/芝2400m)2着など、GⅠでも僅差の勝負を繰り広げている。
特にすばらしい内容だったのが、昨年の毎日王冠。出遅れて最後方からの競馬となったが、直線では怒濤の追い込みで1馬身1/4差の完勝。勝ちタイム1分44秒4はコースレコードに0秒2差に迫る好タイムだった。
昨年は天皇賞・秋には出走せず、GⅠマイルチャンピオンシップ(京都/芝1600m)に出走して5着だったが、今春の安田記念でも7着と敗れたように1600mはベストの条件ではないのだろう。GⅠ大阪杯(阪神/芝2000m)やGⅠ皐月賞(中山/芝2000m)で3着に入っていることからも、2000mのほうがいいのは明らか。1800m以上ではすべて3着以内&勝ち馬から0秒1差以内に入っている。
東京コースではGⅢ共同通信杯(芝1800m)も勝っており、コース適性も問題ない。また、約5カ月ぶりとなるレース間隔も、昨年の毎日王冠が約4カ月半ぶりのレースだったことを考えれば問題ないだろう。
続いて血統を見てみよう。父ディープインパクト、母の父ストームキャットの配合は日本ダービー馬のキズナなど、国内外で8頭のGⅠ馬が出ている"スーパーニックス"。天皇賞・秋では、ドバイターフの勝ち馬でもあるリアルスティールが2着に入っている。この配合馬は10頭の重賞勝ち馬のうち8頭がGⅠ馬になっており、一定の実力があればGⅠにも手が届くという傾向がある。すでにGⅠ級の力を見せているダノンキングリーがGⅠホースになる可能性は高い。
母系は、兄ダノンレジェンドが地方交流GⅠJBCスプリント勝ち馬で、祖母が米GⅠBCジュヴェナイルフィリーズ勝ち馬カレシングという良血。ディープインパクト産駒で祖母がBCジュヴェナイルフィリーズ勝ち馬といえば、「無敗の三冠馬」となったコントレイルと同じだ。
コントレイルとは、ストームキャット、リローンチと、母系に入る血の共通点も多い。競馬では同じ種牡馬の産駒や、似た血統の馬が続けて結果を出す"血統の連鎖"といった現象も起こりやすく、ダノンキングリーはそれに当てはまる血統馬だ。
以上、今年の天皇賞・秋はアーモンドアイの実力を認めつつ、敗れる可能性もあると考えてダノンキングリーを中心に狙ってみたい。