「ギャップ萌え」女子レスラー世志琥インタビュー 前編 2011年に17歳でデビューした女子プロレスラーの世志琥(よしこ)。新人の頃から"ヒール"として多くのタイトルを獲得するなど活躍し、一度は2015年に引退するものの、2016年に復帰。活…

「ギャップ萌え」女子レスラー世志琥インタビュー 前編

 2011年に17歳でデビューした女子プロレスラーの世志琥(よしこ)。新人の頃から"ヒール"として多くのタイトルを獲得するなど活躍し、一度は2015年に引退するものの、2016年に復帰。活躍の場を「SEAdLINNNG(シードリング)」に移し、現在はシングル王者に君臨している。

 最近では、"かわいいお菓子を作る悪役レスラー"というギャップがSNSで話題になっているが、そんな状況を本人はどう捉えているのか。インタビューの前編は、デビューから今までのレスラー人生を振り返る。


女子プロレス団体

「SEAdLINNNG」の現シングル王者、世志琥(よしこ)

――本日はよろしくお願いします。

「インタビューなんてめんどくせぇな。さっさと終わらせようぜ!......というのは冗談で、いろいろ聞いてください(笑)」

――ありがとうございます(笑)。それでは、これまでのレスラー人生について伺いますが、世志琥選手が最初にプロレスに興味を持ったのはいつ頃ですか?

「小学校の低学年の頃です。母の知人に、JDスター女子プロレス(2007年に解散)に所属していた木村ネネさんがいて、よく試合を観に行っていました。ネネさんの家に遊びに行くこともありましたね。その影響で女子プロレスにハマって、毎週プロレスの専門誌を読んだり、レスラーのフィギュアを買ったり、DVDを買って観たりしていました」

――影響を受けたレスラーはいますか?

「個人ではなく、『全日本女子プロレス』ですかね。"全女"の試合を観た時は『やっぱ全日本女子プロレスはすげぇな』と思いましたよ。東京ドームや横浜アリーナで行なわれていた大会のリングに自分も立ってみたかった。1990年代に活躍していた中西百重さんやブル中野さんと戦ってみたかったし、肌であの空気を感じてみたかったですね」

――そこからずっと、プロレスラーになろうと思っていたんですか?

「いえ、中学生になると、環境の変化もあって興味がなくなっていきました。卒業後は仕事をしていたんですが、ある時、木村さんと同期のレスラーの風香さんがやっていたブログを見つけて。風香さんとは木村さんの家で知り合って連絡先も知っていたので、懐かしくて『覚えていますか?』とメッセージを送ったら、『覚えてるよ。ところで、プロレスやらない?』と返信がきたんです。

 2010年に引退した風香さんは、翌年1月に旗揚げされるスターダムのGMになるんですけど、その頃はグラビアアイドルの愛川ゆず季さん(元スターダム所属)などにプロレスを教えていました。風香さんはプロレス教室もやっていて、若い女の子たちもけっこう集まっていましたね。それで私は、16歳でスターダムに入門して、17歳の時に2011年1月に開催された『スターダム旗揚げ戦』でデビューしました(当時のリングネームは『世IV虎』)」

――デビュー戦は敗れましたが、同年10月に後楽園ホールで行なわれた「女子プロレス団体対抗Flashトーナメント」では決勝まで進みました。私もその試合を観たのですが、「すごい新人が出てきたな」と驚いた記憶があります。

「ありがとうございます。ただ、あの決勝も私が負けた試合ですけどね(笑)」

――それでも、その年はスターダムの初代新人王を獲得する大活躍。その後はDDTプロレスをはじめ、他団体の大会にも出場していましたね。

「他団体との交流戦にはけっこう参戦しましたね。今でもそうですが、男子レスラーとの試合もあります。男子レスラーはパワーが全然違うんですけど、戦うとスカッとしますよ。私も負ける気はしないですし、『そこらの女子レスラーよりは力が強い』という感覚で戦ってます。

 スターダムでは、今も同じ団体に所属している夏樹☆たいようさんと、タッグチーム『川崎葛飾最強伝説』で活動しました。たいようさんが神奈川の川崎出身、私が東京の葛飾出身なのでそんな名前のチームになったんですけど、そこでタッグ王座も獲得しました」



リング上ではヒールだが、インタビュー中は終始笑顔

――その後、2015年6月に1度引退しから復帰までのことを教えてください。

「いろいろあってリングを離れてからは、プロレスの情報を一切入れないようにして、別の仕事をしていました。でも、たまたま仕事が休みになった日に、友人にSEAdLINNNGの後楽園ホール大会に誘われて観に行ったら、『プロレス面白れぇ。このリングに、なんで自分がいないんだろう』という思いが湧き上がってきたんです。あらためて『自分はプロレスが好きなんだ』ということに気づかされました」

――それは、世志琥さんがいきなり客席からリングサイドに駆け寄って騒然となった、2016年1月の大会ですか?

「その前年11月の後楽園大会です。立ち見のバルコニーから観ていて、試合が終わったら速攻で帰ったので誰にも気づかれなかったと思います。その試合を観るまでは、勝手に『自分はプロレスが嫌いなんだ』と"思いこませていた"部分がありました。それがすべて弾けたような感じです」

――そうして、第二のプロレス人生をSEAdLINNNGで歩み始めることになるんですね。

「2016年2月に復帰を発表して3月にはリングに上がったんですが、試合をするのは1年ぶりで、引退してからはまったく運動もしていなかったので必死で練習しました。入ってみてわかりましたが、うちの団体に所属するレスラーはみんなストイックで"本物"。『今、女子プロレスを観るならSEAdLINNNGだ!』と胸を張って言える団体です」

――現在、団体の代表である高橋奈七永選手がケガで長期欠場中ですが、その影響を感じることは?

「『高橋奈七永がいない穴』はかなり大きいです。同じ団体の中島安里紗と、『どっちがトップに立つのか』『どちらかが団体を引っ張るのか』と言われることもありますけど、そうじゃなくて、しっかり団体を守らなければいけないと思っています。SEAdLINNNGのためならなんでもするし、その覚悟もあります」

――2017年には、韓国の総合格闘技団体「ROAD FC」に参戦し、年間最優秀新人賞にも輝きました。なぜ総合格闘技に挑戦したのですか?

「単純に『プロレスラーが一番強い』ということを証明するために出場しました。高橋さんもミャンマーの『ラウェイ』という格闘技の大会に出ていましたが、SEAdLINNNGは『海(Sea)を越えていく』というコンセプトでもあるので。

 今後は出場する予定はありませんが、お話があればいつでも行きます。初めて『ROAD FC』に出る時も試合直前にオファーが来ましたが、日頃からキックやパンチ、寝技など総合格闘技の練習もしているので、すぐにでも戦えます」

――ここ数年は、日本人レスラーが海外に挑戦する機会が増えました。世志琥選手も海外進出に興味はありますか?

「まったくないですね。海外に行くことが『すごい』と思われることもありますけど、私は日本の女子プロレスが一番だと思っているので」

――では、今後の日本のリングで戦ってみたい相手はいますか?

「......岩谷ですかね」

――かつて所属したスターダムの岩谷麻優選手ですか?

「そうです。王座を4度防衛して、スターダムのトップとして戦っている岩谷が、本物なのかが気になっているんですよ。実力なのか、周りの選手が海外移籍などで抜けて、あのポジションにいるだけなのか。戦ったらわかるでしょう」

――プロレスファンがざわつきそうですね。今の世志琥選手は団体のシングル王者でもあり、SNSなどでの発信力も業界屈指だと思います。今後の試合、プロレス界全体をこうしていきたい、という思いなどはありますか?

「女子プロレスをもっとたくさんの人の目に触れさせたいです。見てもらえれば、女子プロレスのすごさや魅力に気づいてくれる人も多いと思っています。かつての私がそうだったように。そのために、これからもプロレスのリング上だけでなくあらゆる挑戦を続けて、自分の信じた道を突き進みます」

(後編につづく)