12月12日(月)、東京ドームで第30回日本社会人アメリカンフットボール選手権ジャパンエックスボウルが開催される。

2016年の王者を決める舞台にたどり着いたのは、4年連続8回目出場、2年ぶり2度目の王座を目指す富士通フロンティアーズと、3年ぶり10回目の出場で9回目の優勝を目指すオービックシーガルズ。

新リーグ戦方式の採用により全54試合中21試合が1TD差以内の決着という史上最高の激戦となったXリーグを、全勝で勝ち抜いてきた両雄の戦いは、第30回の節目を飾るにふさわしいハイレベルな攻防が期待できる。

ジャパンエックスボウルでは2002、2011、2013年と3度対戦しているが、過去はいずれもオービックが勝利している。

しかし、最近2年間はセミファイナルで対戦し、いずれも富士通が勝利を収めている。

2010〜2013年にリーグ史上初の4連覇を達成したオービックにとっては、5連覇を阻止された相手が富士通であり、富士通にとってはかつて煮え湯を飲まされ続けられた相手という因縁の間柄だ。

チームとしてリーグ史上に残る4連覇を果たしているオービックだが、クラブチームには毎年15人の新人枠と、登録上限人数(昨年まで70名登録・出場選手60名/今季より65名登録・出場可能57名)がある。2年間、JXBから離れたオービックは、約半数の選手が初めて経験するJXBになる。一方、4年連続で出場している富士通は、今年の新人選手以外、全員がJXBを経験している。場慣れという点では富士通の方にアドバンテージがある。

オービックと富士通の力関係が逆転したのは3年前の2014年シーズンだった。大きな要因となったのは富士通にQBコービー・キャメロンが加入したことだった。

富士通QB3コービー・キャメロン(ルイジアナ工科大)

高得点から堅実派に変貌した富士通攻撃

ルイジアナ工科大で先発QBとして活躍したキャメロンは、4年時の2012年にはパス連続379投無インターセプトのNCAA記録を樹立して、全米カレッジの最優秀パッサーに贈られるサミー・ボウ賞を受賞。1959年に顕彰が始まったサミー・ボウ賞は、ジョン・エルウェイ、スティーブ・ヤングなど、NFLで殿堂入りを果たしているQBたちが学生時代に受賞している伝統ある賞である。

「受賞が決まった時に、インターネットで調べてびっくりした」

キャメロン自身も当時は驚いたと言うが、米国カレッジでこれだけの実績を残した選手の加入は、Xリーグにとっても初めてのことだった。

初の日本一を勝ち取った2014年シーズンを含め、昨年まではキャメロンのパス力を前面に押し出した高得点力が富士通の強みだった。しかし、今季は1試合平均26.7点と、昨年の54.7得点から数字上は得点力が下がった。

これは、ランの比重を上げてより堅実な攻撃へと戦い方を変えたからだ。

「3点差でも100点差でも勝利は勝利。今のスタイルの方が、全員の力を引き出せていると思う」

キャメロン自身もチームの潜在能力を最大活用できる今季の戦い方が気に入っているようだ。

小林祐太郎(日本大)、望月俊(早稲田大)、岩井悠樹(日本大)、斎田哲也(法政大)、勝山晃(法政大)と並ぶ攻撃ラインの先発ラインアップは、5名中4名が2015年日本代表というXリーグ最強の布陣。昨年のオービック戦で腓骨骨折の重傷を負ったエースRBのジーノ・ゴードン(ハーバード大)も、シーズンを通じて安定した走りを見せている。加えてカレッジ日本代表の新人RB高口和起(日本大)が、思い切りのよい走りで信頼度を高めゴードンとローテーション出場を果たしている。

ランでボールを支配する時間を長くできれば、相手の攻撃機会を少なくすることができるというメリットがある。そして、ここ一番のキャメロンの集中力も節約できる。

セミファイナルのIBM戦では、残り1分21秒、自陣22ヤードから1点差を追った状況から、WR強盛(関西大)、中村輝晃クラーク(日本大)にパスを決めて得点圏に進み、終了プレーでK西村豪哲(日体大)の45ヤード逆転FGにつなげることに成功した。

今季の富士通はリーグ最少の試合平均9.0失点の守備ともあいまって、昨年までの先行逃げ切り型のチームから、終盤に粘り強く勝ち切る戦い方ができるチームに変貌を遂げた。

オービックQB6菅原俊(法政大)

即戦力級新人がベテランたちを活性化した新生オービック

古庄直樹・新ヘッドコーチ体制1年目で、3年ぶりのJXB進出を果たしたオービックだが、半数の選手が4連覇以降に入団したことを考えれば、新体制で掴んだ初めての大舞台といった表現の方が正しいかもしれない。

同点タイブレークを2度乗り越えた、紙一重の激戦を勝ち抜く原動力となったのは、新人選手たちの活躍だった。攻撃ではUCLA出身で今季の先発を務めるQBジェリー・ニューハイゼルを筆頭にWR西村有斗(日本大)、小島太郎(法政大)、前田真郷(関西大)らが即戦力として機能している。また、セミファイナルのパナソニック戦で延長タイブレークの決勝TDパス捕球をしたWR池井勇輝(関西大)、ロングパス捕球の機会が増えた萩山竜馬(東北大)ら、4連覇時に活躍の実績を残しながら、昨年、一昨年と低調だったメンバーが活躍しているのも目を引く。

「新人たちは皆、個性とポテンシャルを持っているので、本気で頑張らないとポジションを奪われるという危機感を感じています」

新人たちの存在に刺激を受け、池井は体づくりから見直しをはじめて取り組んできた。

即戦力となっている新人たちの存在が、ベテランを活性化しているという点では、QB菅原俊(法政大)も、ニューハイゼルの加入によってアクティベートされた一人と言っていいだろう。

4Q途中まで双方共に得点を挙げることができない、息が詰まるような守備戦になったセミファイナルのパナソニック戦は、4Qニューハイゼルが喫したインターセプトをきっかけに、パナソニックがFGで先行を許してしまう展開だった。

しかし、ニューハイゼルに代わって登場した菅原が、WR西村にロングパスをヒットして得点圏に進み、K星野貴俊(帝京平成大)の同点FGにつなげてタイブレーク戦に持ち込んだ末に逆転勝利へと結びつけた。

4連覇当時の菅原は、序盤に苦戦し、後半から調子が上がり、最終的に勝つというのがパターンだった。しかし、今季はフィールドに送り出されてからすぐに結果を残している。これは、ニューハイゼルが出場している時に、相手の守備の特徴を観察して、把握する作業をサイドラインから行っているからだ。

「菅原さんの観察力は本当に凄い」

WR西村は試合中に菅原から守備の守り方の情報など、よくアドバイスをもらっているという。

ワン・チャンスの戦いを制する勝負強さを下支えしているのは、穴がない守備だ。DL仲里広章(立命館大)、LB岩本卓也(日本大)、CB田中雄大(関学大)ら、こちらも新人たちが欠くことのできない主力になっている。

チャンスが来るまでじっくり待つ忍耐力と、勝負所でたたみかける爆発力を互いに備えた富士通とオービックのJXBは、30回の大会史上最も熱い戦いになることは間違いない。

 

第30回日本社会人アメリカンフットボール選手権

ジャパンエックスボウル

12月12日(月)19:00キックオフ            

富士通フロンティアーズ(一塁側)×オービックシーガルズ(三塁側)               

東京ドーム