10月17日放送の「卓球ジャパン!」は、「卓球ジャパン!クロニクル」の第4弾として世界卓球2012ドルトムント大会、日本女子の戦いぶりをプレイバック。当時の日本女子チームのキャプテン、藤井寛子氏をゲストに招き、宿敵韓国との大激戦の裏側に迫っ…

1017日放送の「卓球ジャパン!」は、「卓球ジャパン!クロニクル」の第4弾として世界卓球2012ドルトムント大会、日本女子の戦いぶりをプレイバック。当時の日本女子チームのキャプテン、藤井寛子氏をゲストに招き、宿敵韓国との大激戦の裏側に迫った。

世界卓球団体戦では2001年大阪大会から5大会連続で銅メダルを獲得していた日本女子。6大会連続のメダルに向けてグループリーグを全勝で通過し、準々決勝で対戦したのが韓国。4カ月後のロンドンオリンピックで第2シードを獲得するため、チームランキングを3位から2位に上げたい日本としては負けるわけにはいかない大事な一戦だった。



トップで福原愛が対戦したのは、鉄壁の守備力を誇り、当時「世界一のカットマン」と言われていたキム キョンア。「(攻めても)全然抜けなくて、粘り強い。攻撃力も、勝負強さもある」と藤井氏もその強さを語る韓国の絶対的エースだ。

福原にとっては過去9戦全敗とまさに天敵ではあったが、この数年でカット対策は数段レベルアップしており、冷静な試合運びでキムを苦しめ、第5ゲームまでもつれこむ大接戦となった。

「今までは攻めすぎて負けるパターンが多かったが、この試合はうまく選球できていた。攻めるボール、守るボールのバランスが良かった」と藤井氏がコメントするように、緩急をつけたプレーと要所での鋭い攻めで得点を重ねた福原。

あと2本と迫った第5ゲーム9-8の場面では、短く飛ばすバックハンドでキムを前に寄せて、そこからのフォア連打でコートから引きはがし、最後は高く上げてきたロビングに対して絶妙なフォアストップというクレバーなラリーで得点。

「この場面であれはできない!」と、当時はベンチで応援していた藤井とMC平野早矢香も驚き、「さすが卓球の申し子ですね」とMC武井壮も感心する会心のプレー。そのまま11-9で福原が逃げ切り、キム キョンアから初勝利をあげた。



続く2番は、石川佳純がフルゲームの末にソク ハジョンを下して日本が2連勝。勝利に王手をかけて、3番に登場したのが平野早矢香だ。

番組の冒頭では「思い出したくない」と話していたが、彼女にとってこの韓国戦は苦い記憶として残る一戦なのだ。

相手のタン イェソは世界卓球2008広州大会でも対戦し、その時は平野が勝利をあげている。

「勝ったことがある。チームもリードしている。勝たなければいけないということで、少し2008年の時とは心境が違った」(平野)

決して調子は悪くなかったものの「チームの良い流れを自分が止めてはいけないという気持ちが強かった」という平野はプレーに固さが出てしまい、1-3で敗退。

プレーを見た武井が「鬼のツノが引っ込んでいる」と冗談半分で言っていたが、確かに"相手を自分のペースに引きずり込む鬼の平野"とは違っていた。



この敗戦に対して「真面目さが裏目に出てしまった」と藤井氏。「これだけいい流れで来たら、もうちょっとイケイケで良かったけど、"流れを止めてはいけない"とマイナスのほうに考えがいってしまった」と敗因を分析した。

3番で流れを失った日本は、続く4番では福原がソク ハジョンにまさかのストレート負け。2-2と追いつかれ、ラストの石川佳純に全ては託された。

初対戦ながらキム キョンアに対して互角のプレーで渡り合った当時19歳の石川。最終第5ゲーム中盤は思い切りの良い攻めで8-4とリードを広げる。しかし、このまま終わらないのが勝負師キム キョンア。若干甘く入ったカットに対して決めにいった石川が強打でミスを連発し、8-9とあっという間にキムが逆転。「大振りにさせられている。そこがキム キョンアの上手なところ」(藤井)。



ここから一進一退の攻防が繰り広げられたが最後は石川のフォアドライブがオーバーミスとなり、12-14で石川が敗退。6大会連続メダル獲得の夢が絶たれた瞬間だった。

日本にとっては悔しい敗戦ではあるが「逆に韓国を自分の国のプレーとしてみると、すごくいいプレーをしている。平野さんの責任とかそういうのは何にもない」と武井は両チームの戦いぶりを称賛。藤井も「お互いいいプレーがたくさんあったし、負けたけど相手を称えるべき試合だった」と語った。

とはいえ、3番で敗れた平野としては自分の責任という思いは今でも拭えず「負けた時に本当に全部自分のせいだなと思っていた。自分のプレーは悪くなかったし、相手も良かったけど、でもやっぱり私のせいだと思う」と改めて当時を振り返りつつ、悔しさをにじませた。

しかし、この敗戦をバネにして、4カ月後にオリンピックの舞台で最高のパフォーマンスを見せた日本女子チーム。実は肋骨を負傷していたと明かした平野も単複で活躍し、準決勝のシンガポール戦では石川とのダブルスで勝利し、日本卓球界初のメダルを決めるのである。

ドルトムントでのまさかの逆転負け、その悔し涙があったからこそロンドンで歓喜の瞬間が訪れたのだ。

次回は、レジェンドシリーズとして、皇帝ボルを大特集。中国勢を3連破して優勝した伝説の男子ワールドカップを松下浩二氏と振り返る。お見逃しなく!

「卓球ジャパン!」 BSテレ東で毎週土曜夜10時放送