10月18日、ニッパツ三ツ沢球技場。3位のFC東京は敵地で、13位の横浜FCに1-0と敗れている。首位、川崎フロンター…
10月18日、ニッパツ三ツ沢球技場。3位のFC東京は敵地で、13位の横浜FCに1-0と敗れている。首位、川崎フロンターレの背中は彼方に遠ざかった。
この試合、横浜FCにはゴール前で、3度,4度とハンドに見えるプレーがあり、FC東京の選手は不満を露にしている。さらに88分の失点シーンは、ラストパスでオフサイドの疑いがあり、"不運な失点"と呼べる。その点では気の毒だった。ただし、後半途中に横浜FCの選手をペナルティエリア内で引き倒し、PKに値するプレーは見逃されていた。サッカーはあらゆる不条理をも飲み込み、90分間で決着をつけるスポーツと言えるか。
そもそも、優勢なはずのFC東京は前半、あまりに慎重だった。受け身になってしまい、エンジンがかからない。前節の清水エスパルス戦で守備の乱れがあったことで、「まずは持ち味の守備から」というコンセプトだったようだが、結果的に横浜FCにボールを持たれてしまった。ディエゴ・オリヴェイラが要所でボールを運び、挽回できなかったら、もっと苦しんでいたはずだ。
「前半は横浜のほうがボールを持って、果敢に攻めていた。(FC東京は)あまりうまくいっていなかった。(後半途中に出場する前には)積極的にボールを受け、思い切りプレーしようと思っていた」(FC東京・三田啓貴)
結果的に緩慢な45分間を過ごしたことが、戦いを厳しくした。後半もカウンターからアダイウトンがゴールに迫るなどしたが、不発。徐々に戦力差で押し込めるようになったが、カウンターも浴び、得点を生み出せなかった。

FC横浜戦では後半から途中出場、流れを変えた中村拓海(FC東京)
試合の流れを変えたのは、後半38分に交代出場した右サイドバックの中村拓海(19歳)だろう。
中村は交代直後、自陣、右サイドで相手ディフェンスに囲まれながらターンし、確実に前にボールをつなげている。そのワンプレーだけで、技術、ビジョン、胆力を証明した。そしてそのまま攻め上がり、右サイドからクロスを送り、跳ね返りを再び味方が拾うと、巧妙に裏に抜けて受け、再びクロス。得点につながらなかったが、際立ったプレーセンスを見せている。
右サイドの戦局を支配することで、ゲーム全体を有利にした。
その後も、中村はボランチのパスを相手のラインを破って受けると、完璧なコントロールから絶妙なクロスを送っている。味方が入るタイミングがわずかにずれ、合わすことはできなかったが、非凡なプレーだった。
<相手選手の逆を取る>
その点で中村はタイミングが図抜けている。おかげで、ボールキープができるだけでなく、入れ替わって、運び出せる。ラインのずれを巧みに利用し、自ら裏を抜け出せるし、味方に裏へボールを出せる。目を奪う小気味よさだ。
アディショナルタイムにも、中村はディエゴ・オリヴェイラからのパスを受け、ダイレクトで折り返している。クロスは相手に当たりながら、再びディエゴ・オリヴェイラへ。エリア内でのシュートはブロックされたが、これも決定機だった。
結局、FC東京は88分にロングパスの処理を誤って失点を喫し、一発で沈んだが、可能性の一端は見せた。中村はその筆頭だろう。
今シーズン、FC東京はMF橋本拳人、DF室屋成という主力2人を失っている。それぞれ、ロシア、ドイツに移籍。日本代表でもある2人の穴は大きい。
しかし、苦しい陣容ながら、東京はほぼ週2試合の19連戦をしのぎ切っている。台頭したのは、中村だけでない。ボールを運び、戦えるMF内田宅哉、パスセンスだけで言えばJでも際立っているMF品田愛斗、走力を生かして交代の切り札になったFW原大智など、J1での出場歴が乏しい若手選手が次々に台頭した。
FC東京が戦力的に健闘できている要因には、FC東京U-23の存在があるだろう。今シーズンはコロナ禍の影響で活動を中止しているが、中村、内田、品田、原は、いずれも2019年シーズン、東京U-23で研鑽を積んでいる。J3とはいえ、プロの舞台で戦ったシーズンは選手を成熟させた。今やキャプテンマークをつけ、日本代表デビューも飾ったセンターバックの渡辺剛も、J3を踏み台にトップでポジションをつかんでいるのだ。
ちなみに、今シーズン上位に位置するセレッソ大阪、ガンバ大阪も、U-23チームを持つ。セレッソJ3を主戦場にしていたセンターバックの瀬古歩夢が躍進。ガンバからは中村敬斗(シント・トロイデン)、食野亮太郎(リオ・アヴェ)が欧州へ渡った。
ヨーロッパでは各クラブがBチームを持ち、それぞれ下部のカテゴリーに属している。例えばバルセロナは、2部B(実質3部)のバルサBが登竜門。そこで頭角を現した選手はトップに召集され、タイミング次第でデビューを飾れる。リオネル・メッシやアンドレス・イニエスタもバルサBを経験し、段階を踏んで成長した。
U-23があったことで、FC東京は瓦解することなく、リーグでトップ3を堅持し、ルヴァンカップでは決勝に進んでいる。
「若い選手で、(自分がチームを去って)誰が出てくるとかはわかりません。でも、みんな能力は高い。きっかけ次第で活躍できるはずで」
ロシアに移籍前に橋本はそうエールを送っていた。ルーキーたちは成長の過程にある。成功も失敗も、糧になるはずだ。