数多くの日本代表選手を輩出してきた名門・明治大学卓球部で10月18日、創部90周年を記念した「ドリームゲーム」が開催され、同大OBで東京五輪代表の丹羽孝希(スヴェンソン)、水谷隼(木下グループ)が参加。来年3月に延期された世界卓球2020…

 数多くの日本代表選手を輩出してきた名門・明治大学卓球部で10月18日、創部90周年を記念した「ドリームゲーム」が開催され、同大OBで東京五輪代表の丹羽孝希(スヴェンソン)、水谷隼(木下グループ)が参加。

来年3月に延期された世界卓球2020韓国(団体戦)代表の森薗政崇(BOBSON)他、神巧也(T.T彩たま)、平野友樹(協和キリン)とOBチームを結成し、現役学生チームとシングルス5試合の団体戦に臨んだ。その結果、現役チームが3-2で勝利を飾る大金星をあげた。

 チームの勝敗がかかった最終マッチに登場した水谷は3月上旬のITTFワールドツアー・カタールオープン以来、実に7カ月半ぶりの実戦となった。相手は今年の全日本選手権男子シングルス決勝で張本智和(木下グループ)を倒し新王者となった宇田幸矢(明治大学)。全日本V10の水谷にとっては負けられない一戦だ。

宇田幸矢 Photo:Itaru Chiba

しかし、大会のない期間を利用してフォームの改善に取り組んだという宇田のスピードが水谷を圧倒した。終始押されっぱなしでストレート負けに終わった水谷は、「まさか2-2で(自分の番が)回ってくるとは思っていなかったので、より緊張感も高まって防戦一方で負けてしまった」「ここまでボコボコにやられて自信がなくなる」と思わず苦笑い。その一方で、「サーブを出すときに手が震えるというか、いつもとは違う感覚になっているのを感じた」とベテランらしからぬ緊張感に襲われたことを明かした。

 水谷といえば、2020年夏に開かれるはずだった東京五輪が1年延期され、かねてから自身のモチベーションを保つのが難しくなっていることを話していたが、現在もその状況にあまり変わりがないようで、晴れない胸の内をこの日もこう話していた。

「試合がなければ何のために練習しているのかなと常々感じています。東京五輪を最後に引退を考えているので、東京五輪が無くなった場合、この1年間、自分は何をしていたんだろう?っていう気持ちになるような気がして......。実際、どうなるかまだわからないので、すごく複雑な思いです」

水谷隼 Photo:Itaru Chiba

 11月にようやく再開される国際大会に関しても、本来であればITTFファイナル(19~22/鄭州)の出場権を持っているが、コロナ対策のため中国現地に入ってからの隔離期間が長くなることを考慮し出場を辞退。代わりに11月17日に3年目のシーズンが開幕するTリーグでの調整を選び、「(年内の)試合に全部出場する」と話している。

不安を抱えながら「(東京五輪が)あると信じて精一杯努力している」と言う水谷について、ドリームゲーム生中継解説のため会場を訪れていた男子日本代表チームの倉嶋洋介監督は、「水谷はTリーグが始まってまたエンジンがかかってくると思います。日本で一番、調整力に長けている選手ですから」と、日本人で唯一シングルスの五輪メダル(2016年リオ五輪銅メダル)を持つレジェンドのパフォーマンス向上に期待を寄せていた。


(文=高樹ミナ)


<試合結果>
OBチーム 2-3 現役チーム
第1試合:平野友樹 2-0 西康洋(3年)
第2試合:神巧也 1-2 宮川昌大(1年)
第3試合:森薗政崇 2-3 龍崎東寅(4年)
第4試合:丹羽孝希 3-2 戸上隼輔(1年)
第5試合:水谷隼 0-3 宇田幸矢(1年)
※第1、2試合は3ゲームマッチ、第3~5試合は5ゲームマッチ