保坂典子のAmerican Cheer Life Vol.7

ハドルウェブ読者の皆様こんにちは! あっと言う間に今年もあと僅か、冬という冬がないこちらカリフォルニアもさすがに寒くなってまいりました。風邪などをひかないよう毎日栄養があるものを食べて元気に過ごしたいですね!

10月はブレストキャンサー(乳がん)のアウェアネスの月間でしたが、11月はミリタリーに感謝する月であり、戦闘服の象徴である、カモフラージュの模様のものを身につけたり、感謝している印のバッチを胸につけたりします。軍隊を持たない日本ではないこの習慣なのでこの月が来るたびにアメリカにいるのだなと実感します。

さて、今回はチアリーダーとして過ごした日常の中で、少しびっくりした出来事をきっかけに気づいた、日本とアメリカの『思いやり』の違いについて紹介したいと思います。

チームメイトの誕生日に、バースデーケーキなどを用意して、練習後に食べるというちょっとしたお祝いイベントは、日米を問わずどちらのチアリーダーもよく行います。

日本では何を言わずとも誰かが人数分を取り分けてくれるのが普通ですよね? その習慣に慣れていた私は『早く食べたいな!』と思いながらもケーキの周囲が混雑していたので、『空くまで練習してよう!』と思い、5分程振り付けのおさらいをしていました。チームメイトたちがケーキの置いてあるテーブルから散り散りになった頃、『さぁケーキを食べよう!』と思い、テーブルそばに近づいていくと…。

そこには何も残されていませんでした。

『あれ? 私の分のケーキが無いんだけど、どこにあるのかな?』とチームメイトに聞くと、『あれ? 食べたかったの? いなかったじゃない。欲しいと主張しないとダメよ』と言われました。

本当に小さい出来事ですが、私にとっては『アメリカでは欲しいものは欲しいと言わないといけないんだ』と強く自覚した出来事でした。

当時の私は欲しいものを欲しいと主張するのは『卑しい』、『はしたない』思い、極力避けていました。しかし、このケーキの一件以降、自分が思っている事、感じている事を遠慮せずに言っていかないと、『日本で当たり前のように与えられていたものすら、手に入らないかもしれない!』と感じ、自分の意志や意見を発言するようになりました。

最初の頃はチームメイトに何かを頼むことがすごく悪い事をしているように感じたり、英語力の問題もあって、思っていることを発言することが怖かったりして、一人で勝手に疎外感というか、窮屈さを感じて『日本が恋しい…』なんていう時期もありました。

アメリカに住み始めた当初、車が運転できなかったため練習場まで徒歩と電車を使用して大体3時間ぐらいかけ行っていました。しかし、誰も『送っていこうか?』とか、『一緒に車に乗っていきなよ』と、声をかけてはくれませんでした。

もし、アメリカ人のチアリーダーが一人で日本に来てチームに在籍していたら、『きっと何か困っているんじゃないか?』と、日本人のチアリーダーたちは気を回して助けるでしょうそういう考えの中で育ってきた私は、誰も何も言ってくれない状況に『きっとしたくないんだろうな』と、勝手に思ってしまい、チームメイトたちに迷惑をかけまいと黙々と誰にも言わず通っていました。

しかし、ある日、どうしても車でなければ行けない場所でイベントを行うことになり、ひたすら悩んだ結果、キャプテンに相談しました。

『何で今まで言わなかったの? 言わなきゃわからないじゃない!』

私が悩んでいた事は本当に小さく、私が意志を示せばすぐに解決できることでした。自分が助けを求めれば、効率よく何でもできたことを、勝手に一人で必要以上に悩んでいたのです。

日本であれば相手が『いいよ』と要求を受け入れてくれても、『内心迷惑だと思われてないかしら?』と、心配になることもありますよね。

しかし、アメリカでは都合が良ければ快く助けてくれますし、都合が悪い時は潔く断れます。アメリカの風習に慣れてからは、勘ぐらなくて済むところがとても心地よくなりました。

これは私の主観ですが、アメリカ人はすぐにお願いごとをしてきます。人にどう思われるかよりも、いかに問題を解決するかにフォーカスしているという印象です。たとえば目的地までの道がわからない時、日本人ならとりあえず自分自身で努力をしてもわからなかったら誰かに聞く人が多いように思いますが、アメリカ人はすぐに聞きます。

こうした行動の違いはなぜ生まれてくるのか。チアリーダー時代の経験や、アメリカで長く生活する中で気づいたのは、日米の『思いやり』の定義の違いです。

日本人は相手の心情を察して行動する『思いやり』を持っています。

しかし、アメリカでは相手の意志を尊重して行動するのが『思いやり』という価値観なのです。アメリカ人は相手が要求をしていないのにあれこれやってしまうことは、『おせっかい』、『相手の意志を尊重していない行動』と思っているのです。

一方で、人の気持ちを考える、相手を主体に考えることができる日本人の『思いやり』の習慣はとても素敵だなと、あらためて思います。

アメリカ文化を経験し、比較する対象があるからこそ気づけた、日本の良さの一つです。

これからまたまたさらに寒くなると思いますが、今日もスマイルで!

 

Noriko Hosaka

獨協大学卒業後、Xリーグチアリーダーを経て2008年に渡米。NFLワシントンレッドスキンズ、米国室内プロフットAFLサンノゼセイバーキャッツ、NFLオークランド・レイダースと米国で計6年間、チアリーダーとして活動。現在はNFLを目指すチアリーダー向けのワークショップを開催するなど、後進の指導にあたっている。サンフランシスコ在住