「15年ぶりじゃ、残念感もひとしおよねえ」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、カディスのセルベラ監督が、「me hubiera gustado que fuese en el Bernabéu/メ・ウビエラ・グスタードー・ケ・フエセ・エン・…

「15年ぶりじゃ、残念感もひとしおよねえ」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、カディスのセルベラ監督が、「me hubiera gustado que fuese en el Bernabéu/メ・ウビエラ・グスタードー・ケ・フエセ・エン・エル・ベルナベウ(ベルナベウでなら良かったのに)」と嘆いているのを聞いた時のことでした。いやあ、昨季、新型コロナウィルス大流行で中断したリーガが再開して以来、今季になっても、レアル・マドリーがバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場内にあるエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)で試合をしているのは、実のところ、無観客が続いているからというより、この機会を逆手にとって、サンティアゴ・ベルナベウの大改装工事をガンガン進めたいという、クラブの意向があるからなんですけどね。

とはいえ、21世紀になってから、2005-06の1シーズンしか、1部にいたことのないカディスにしてみれば、来季以降もマドリーの総本山を訪れるチャンスがあるかどうか、微妙なところ。おまけにディ・ステファノは2部Bに沈んでいた時代に何度もお邪魔して、経験済みですからねえ。この夏、加入したネグレド(アラブ首長国連邦のアル・ナスルから移籍)や、マドリー一途の兄ナチョとは違い、いくつか河岸を変えてきたアレックスら、RMカスティージャ出身の選手たちには懐かしい古巣再訪となるものの、初めて踏むサンティアゴ・ベルナベウのピッチを楽しみにしていたカディスの選手もきっと、多かったのでは?

まあ、その辺はコロナ渦中による、仕方のない事情もあるため、嘆いていても仕方ないんですが、実は今週のスペイン代表戦では大いなる不公平を目撃することになったんですよ。そう、火曜に行われたネーションズリーグ4節をキエフのオリンピスキー・スタジアムで戦ったルイス・エンリケ監督のチームだったんですが、あちらはスペインのように規制が厳しくないようで、1万5000人のファンがスタンド観戦できることに。UEFAにより、キャパの30%までという縛りはあっても、さすがにこれだけの人数になると、応援の声もTVのマイクを通して入ってきますしね。リーガの試合は放送局がイメージ音声をかぶせているので、そうでもないんですが、先週土曜にディ・ステファノであった、選手やスタッフの怒鳴り声飛び交うスイス戦と比べると、それこそ雰囲気に雲泥の差があったかと。

え、でもスペインが予想外の敗戦を喫したのは別に地元ファンの応援に臆したからではないんだろうって?それはその通りで、前半など完璧に試合を支配していたんですが、とにかくシュートが入らないんですから、もうどうしたものか。大体がして、正GKピアトフ(シャフタール)、第2GKレニン(マドリー)が揃って、PCR検査で陽性になってしまったため、この代表戦期間でウクライナのゴールを守ることになった第3GK、ブッシュチャン(ディナモ・キエフ)など、親善試合だったフランス戦で大量7失点、ネーションズリーグのドイツ戦でも2失点と、決して自信のある状態にはあらず。

ところが、ロドリゴ(リーズ)、アンス・ファティ(バルサ)、そしてセルヒオ・ラモス(マドリー)のFKまで、paradon(パラドン/スーパーセーブ)で弾かれているとなれば、おそらくその日もスタンドに大勢いただろう、オリンピスキーをホームとするディナモ・キエフのファンの支えがあったからというのはちょっと、私の穿ち過ぎ?

実際、その自信はウクライナの他の選手にも伝染したか、辛抱強く守って前半を終えると、いえ、こちらもディナモ・キエフ出身のシェフチェンコ監督は、「ウチは何も変えていない。0-0のままだと、スペインに辛抱強さが欠けてくるのはわかっていたから、あとは待つだけだった」と言っていたんですけどね。後半31分、GKブッシュチャンのロングキックをセンターで受けた後、ヤモレンコ(ウェストハム)が送ったラストパスをツィガンコフ(ディナモ・キエフ)がシュート。これが前に出ていたGKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)を破り、ウクライナに先制点が入ったから、ビックリしたの何のって。

うーん、もうこの時点でルイス・エンリケ監督はロソリゴ、アンス・ファティをフェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)、オジャルサバル(レアル・ソシエダ)に代えていて、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)、セバージョス(アーセナル)と、スイス戦の後、左ハムストリングのケガで離脱したジェラール・モレノ(ビジャレアル)を除き、持てるアタッカーは全て投入したんですけどね。結局、終盤、CFと化し、誰よりシュートを撃っていったのがラモスだったとなれば、やはり、スペインのFW人材難は深刻かと。ええ、いくら後半ロスタイムに奇跡の同点弾などを入れているとはいえ、ラモスがDFなのにはそれなりの訳があるはずですし、ロドリ(マンチェスター・シティ)なども「No tenemos un gran goleador/ノー・テネモス・ウン・グラン・ゴレアドール(ウチには偉大なゴールゲッターがいない)」と認めていましたしね。

21本もシュートを撃ったものの、結局、そのまま1-0でスペインは負けてしまったんですが、彼らがラッキーだったのはその日、スイスと対戦したドイツが3-3で引き分けたため、ファイナルフォーへの出場権が得られるグループ首位の座を譲らずに済んだこと。いや、といっても差は勝ち点1だけなので、ルイス・エンリケ監督も「Hemos sido infinitamente superiores y merecimos ganar por más de un gol/エモス・シードー・インフィニータメンテ・スペリオーレス・イ・メレシモス・ガナール・ポル・マス・デ・ウン・ゴル(ウチの方が無限大に力が上だったし、1点以上の差で勝つに値した)」なんて強がっている暇があったら、11月のネーションズリーグ最後の2節、スイス、ドイツ戦に向けて、改善策を練った方がいいかと。

何せ、今回の3連戦はリスボンでのポルトガルとの親善試合のスコアレスドローで始まって、ベルデベバスでもGKゾマー(ドルトムント)のミスから、オジャルサバルが奪ったゴールだけで、スイスに1-0の辛勝でしたしね。それこそ、バーゼルのザンクト・ヤコブパルクで行われる試合は無観客じゃないような気がとってもしますし、逆にセビージャ(スペイン南部)のカルトゥーハでのドイツ戦はファンを入れないことになっているため、スペインはスタンドからの援護をまったく当てにできないって、これはもう不公平の極みかと。せめてもの救いは、まだこれが、ユーロやW杯予選などではなく、ネーションズリーグだということでしょうか。

そしてインターナショナルマッチウィークの強行日程は終わり、選手たちもそれぞれのクラブに帰って行ったんですが、息つく間もなく、今週末から、ヨーロッパの大会に参加するチームは地獄の7連戦に突入。初っ端から、1部のマドリッド勢の試合が土曜に集中となったため、いえ、幸い、マドリッド限定Estado de Alarma(エスタードー・デ・アラルマ/警戒事態)は続いているものの、完全休業させられているバルセロナなどとは違い、こちらはバル(スペインの喫茶店兼レストラン)なども時短で開いているんですけどね。

おかげでまだ私もどの試合を観戦するか、決めかねている状態なんですが、とりあえず、順番にチームの近況を伝えていくことにすると。午後4時(日本時間午後11時)から、バライドスでのセルタ戦に挑むアトレティコは木曜にようやく、各国代表に出向していた選手たちが全員帰還。どうやら、ブラジル代表で144分間、プレーしてきたロディがお疲れのようで、ビーゴ(スペイン北西部)遠征のリストに入っていませんでしたが、2週間、マハダオンダ(マドリッド近郊)でじっくりトレーニングしていたはずのサウールとヒメネスも筋肉痛で加われないって、一体、どうなっているんでしょう。

ま、その辺りは来週水曜のCLブループリーグ初戦、ドイツでのバイエルン戦との兼ね合いもあるんでしょうが、このセルタ戦、paron(パロン/リーガの中断期間)前、2試合続いたスコアレスドローのゴール日照り脱却のため、期待されているのはルイス・スアレスとジエゴ・コスタの大型FWツートップ。ええ、前者はウルグアイ代表でPKを3本も決めているため、これだと悩みの種のPKキッカー選びも解決しますしね。5日の市場クローズの日に5000万ユーロ(約62億円)の契約解除金を払い、アーセナルへ行ってしまったトマスと入れ替わり、レンタル移籍となったトレイラもスアレスと一緒にウルグアイ代表に行っていたため、まだアトレティコでは2回程しか練習していないんですが、サウールの不在もあり、土曜にはコケとボランチコンビを組んで、先発デビューするという予測も出ています。

いえ、それ以上に気になるのは、ポルトガル代表の3試合全てに出場。スペインとの親善試合に続き、ネーションズリーグ、こちらも0-0だったフランス戦の後、コロナ陽性となったクリスチアーノ・ロナウドがチーム離脱しながら、スウェーデンに3-0と快勝した一戦でいいプレーをしたと言われているジョアン・フェリックスなんですけどね。シメオネ監督も「代表戦ではチームへの責任感、意欲などを見ることができた」と記者会見で褒めていましたが、「lo necesitamos también con nosotros/ロ・ネセシタモス・タンビエン・コン・ノソトロス(それがウチでも必要だね)」と釘を刺すことを忘れず。何はともあれ、バイエルンとのビッグマッチの前だけに、チーム一丸となって、ゴールを決める感触を思い出してくれたらいいかと。

そして土曜日、続く6時30分(日本時間翌午前1時30分)から、バルデベバスにカディスを迎えるのがお隣さんなんですが、こちらはノルウェー代表で3試合。プレーオフ準決勝でセルビアに負け、来年のユーロ出場の夢が消えたものの、現バージョンのネーションズリーグでルーマニア、北アイルランドに連勝したウーデゴールがふくらはぎを痛めるという逆境が。朗報はリーガのベティス戦で臀部を痛めたクロースがドイツ代表のウクライナ戦、スイス戦でリハビリを済まし、完璧な状態で戻ってきたことですが、スウェーデン戦、フランス戦でフル出場したモドリッチは35才ともあって、ちょっと疲れが残っているかもしれません。

え、マドリーも来週水曜にはCLシャフタール戦があるんだから、ジダン監督はローテーションを考えているんだろうって?その通りで、そのシャフタールではコロナ陽性が何人も出て、スペインとの試合に出られなかった選手も多いんですが、時期的にもう、隔離から戻ってきそうですしね。やはり昇格組のカディスよりは手ごわい相手とも言えるんですが、マドリーの強みは今回の代表戦、フランスにデ・シャン監督ある限り、呼ばれないだろうと言われているベンゼマはともかく、アセンシオ(スペイン)とビニシウス(ブラジル)も招集されなかったため、スタメン予定の攻撃陣は体力があり余っているということ。

カルハバルとオドリオソラの負傷のため、穴が開いている右SBもレバンテ戦同様、この土曜はアレックスとの兄弟対決を楽しみにしているナチョでもいいし、メンディもフランス代表のクロアチア戦で練習してきましたしね。更にルーカス・バスケスもいるとなれば、特に問題はなさそうですが、さて。むしろ、ファンとしてはようやく予定が24日(土)と決まった今季最初のクラシコ(伝統の一戦、バルサvsマドリー戦のこと)までに、今度は太ももをケガしているアザールが戻れるのかどうかの方が気になるかと思いますが、どうやら、こちらはかなり難しいようですよ。

一方、一足先にこの土曜、午後9時(日本時間翌午前4時)から、バルサとコリセウム・アルフォンソ・ペレスで対決する弟分のヘタフェはというと。幸い、スペインU21代表でユーロ予選2試合をこなしてきたククレジャを始め、ウルグアイ代表に初参加したアランバリ、ダミアンら、各国代表からは全員、元気で戻って来たんですが、こちらも頼りは居残り組のマタやアンヘルのゴールになりそう。ちなみにそのアンヘル、昨季の2月には長期離脱となったデンベレの代わりにバルサがFWを特例補強しようとした際、候補の1人に挙がっていたんですが、結局は当時のセティエン監督の希望でお隣さん、レガネスのブライトワイテに白羽の矢が当たることに。

その経験を当人は、「Uno siente un poco de tristeza porque ese tren pasa una vez en la vida/ウノ・シエンテ・ウン・ポコ・デ・トリステサ・ポルケ・エセ・トレン・パサ・ウナ・ベス・エン・ラ・ビダ(そんな機会は人生に1度しかないから、ちょっと悲しかった)」と先日、ラジオのインタビューで話していましたが、ま、プロの選手とはそんなもの。ブライトワイテにしてもゴール飢饉で沈みゆくレガネスを見捨て、補強も市場外でできなかったレガネスはそれこそ、2部に降格してしまったりと、惨々でしたが、選手の方も今季、ルイス・スアレスのアトレティコ移籍で空いた背番号9をもらったものの、ここ3カ月で成績を残さないと、また1月の市場で放出要員になるという、厳しい立場のようですからね。

ここはアンヘルも腹を括って、大勢のファンがヒーローと崇めてくれるチームのため、Eurogeta(エウロヘタ/ヨーロッパの大会に出場するヘタフェのこと)復活に貢献してくれたら、嬉しいかと。ただ、バルサ相手にはここ9年、コリセウムで勝っていないヘタフェですし、相手も来週火曜には、カンプ・ノウで無観客開催と決まったCLフェレンツバーロシュ戦が控えていながら、クーマン監督がメッシを温存することはなさそうですからね。ヘタフェが攻勢をかけるのはその先、グラナダ戦やバレンシア戦からとなるかもしれません。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。