スーパーエース・西田有志 がむしゃらバレーボールLIFE (15) バレーボール日本男子代表の若きエース、西田有志。これまでのバレー人生と現在の活動について追う人気連載の第15回は、10月17日のV.LEAGUE開幕に向けたチームの様子と、…

スーパーエース・西田有志 
がむしゃらバレーボールLIFE (15)

 バレーボール日本男子代表の若きエース、西田有志。これまでのバレー人生と現在の活動について追う人気連載の第15回は、10月17日のV.LEAGUE開幕に向けたチームの様子と、自らの調子や意気込みについて聞いた。



昨シーズンのVリーグ王者・ジェイテクトSTINGSのエースを担う西田

 昨シーズン、チーム史上初のV.LEAGUE優勝を果たしたジェイテクトSTINGS。王者として追われる立場になったが、チームにはさまざまな変化があった。

 9月12日に初めてオンラインで開催されたファン感謝祭では、今季の内定選手が発表された。その中には、アンダーカテゴリーでスタメンを争った一学年上の左利きのオポジット、早稲田大4年の宮浦健人の姿もあった。

 2017年のアジア選手権で、史上初の金メダルを獲得したユースチームの主将を務めた宮浦は、大会のMVPも獲得。ポジションを奪取できなかった西田が、「(宮浦と)同じことをやっていたら超えられない」と、高校卒業後に大学に進学せず、Ⅴリーグ入りを決意した理由のひとつになった選手だ。

 宮浦がチーム練習に参加するのはもう少し先になるが、西田は「宮浦選手のプレーはここ3年間見ることができなかったので、どんな選手になっているか楽しみです。違うチームで対戦するより、一緒のチームでやれる嬉しさもありますね」とコメント。ポジションを争うライバルでもあるが、「吸収できることがたくさんあると思う」と、頼もしいチームメイトの加入を歓迎した。

 昨年のチームとは「外国人選手」と「セッター」にも変化があった。

 まず外国人選手は、"優勝請負人"のマテイ・カジースキがチームを去り、36歳の元ブラジル代表、フェリペ・フォンテレスが新たに加入した。フェリペは攻守に長けたアウトサイドヒッターで、リオ五輪ではチームの地元優勝に大きく貢献。Vリーグでのプレー経験もあり、2007‐08シーズンに36年ぶりの優勝を果たしたパナソニックパンサーズのメンバーだった。

 入国後の隔離措置などでチーム合流は遅れたが、その前に西田はフェリペに対する期待を次のように話した。

「国際大会で何回もメダルを手にしている偉大な選手。性格がいいと聞いていて、日本語もけっこうわかるらしいんですよ。キャリアが長い分だけ経験値も豊富ですし、彼を知る人曰く『すごくホット!』という人との接し方を含めて、できるだけ多くのことを学びたいです。

 プレーを映像で見た印象としては、ディフェンシブな選手で駆け引きがうまいですね。攻撃面ではサーブが強くて、速いトスを打つ技術が高い。身長(197cm)は海外のアタッカーの中では大きくないですけど、クイックネスがあってジェイテクトに合っている選手だなと思いました」

 一方のセッターは、優勝時にコートに立っていた中根聡太が昨季限りで引退。中根との併用が多かった、2年目の小林光輝にかかる負担が大きくなることが予想される。しかし西田は「小林選手を含め、セッター陣はみんな能力が高いので心配ない」と述べたあと、スパイカーとしての覚悟を次のように語った。

「セッターが上げたボールがどんなに苦しいものでも、それが打てるボールだったら、あとはスパイカーの責任だと僕は思っています。選手が変わった時に、『セッターが変わったから負けた』などと言われることがありますが、その表現は間違っている。試合の中でセッターをうまく乗せるのも周りの選手の役割ですから」

 10月13日には、同じ愛知県を本拠地とする豊田合成トレフェルサとの練習試合を行ない、コンビネーションなどを確認。相手チームの速さにも対応できたことで、一定の手応えを掴んだようだ。

 個人としても、サーブの球速が上がって120km前半をコンスタントに出せるようになった。しかし西田は「あくまで自分の体に合った最大限のサーブを打てるようになることが目標」と冷静に語る。目指すのは、相手のリベロなどの位置を見てコースを打ち分けられることで、「まだ見せていない新しい打ち方も練習している」と、さらに進化を遂げているようだ。

 スパイクに関しては、豊田合成との試合でブロックアウトの打ち方などを確認。シーズン開幕に向けてジャンプ力が上がり、ブロックの上から打てるボールもあったようだが、海外チームとの試合を想定し、ひとつひとつのスパイクを考えながら打っていたという。

「Vリーグでもプロックの上から打ち続けることはできないですし、海外チームとの試合になったらなおさらです。僕が見据えているのは海外トップチームに勝つことなので、苦しい状況になったことを想定して技術を高めていく必要がある。試合でそういった感覚を確かめることができるようになってきたので、だいぶモチベーションは上がっています」

 西田の今シーズンの目標は、「総得点」と「サーブ効果率」の2冠に輝いた昨年の自分を超えること。連覇を果たすため、自身の成長はもちろん、チームがより高みを目指す必要があることを強調した。

「優勝したのは、もう過去のこと。リーグが始まってからも、チームは戦いながら変化していくものですが、ジェイテクトはその変化が一番大きいチームにならないといけない。昨シーズンの優勝チームなので対策も練られているでしょうけど、自信を失わずにそれを上回っていきたいですね。全員がこのチームで戦うプライドを持ち、それぞれの役割をしっかり果たして、目の前の試合を勝っていきたいです」

 ジェイテクトSTINGSの初戦(10月17日)の相手は東レアローズ。さまざまな苦難を乗り越えて開幕を迎える西田とジェイテクトの新たな挑戦が始まる。

(第16回につづく)