東京選手権で優勝した永井優香のショートプログラムの演技 10月9日から11日まで開催された東京選手権の女子は、2015年にグランプリ(GP)シリーズのスケートカナダで3位になった永井優香が優勝した。ショートプログラム(SP)を61.08点で…



東京選手権で優勝した永井優香のショートプログラムの演技

 10月9日から11日まで開催された東京選手権の女子は、2015年にグランプリ(GP)シリーズのスケートカナダで3位になった永井優香が優勝した。ショートプログラム(SP)を61.08点で首位に立った永井は、10日のフリーでも全体トップの110.11点をマークして、合計171.19点での完全優勝だった。

 SP後のリモート会見で、永井は今季限りで引退することを明らかにした。

「(SPを終えて)まずはほっとした気持ちでいっぱいです。滑り終わった後に、この演技はブロック大会の最後のショートだったんだなと思いました。引退を決めた理由は、自分の中でフィギュアスケートはもう精一杯やったかなと思えたからです。次の人生といったら大げさですけど、次のステップに踏み出していけたらいいなと思いました」

 大学(早大)4年生になって、今後進むべき道を考える中で、フィギュアスケートを続けていく選択はしなかった。来春からは一般企業で会社員になるという。

 現役最後のシーズンが、コロナ禍というイレギュラーなシーズンとなったが、今季の大きな目標は「いままでお世話になった方々に恩返しの演技をしたいです。そのためにいまできることと、目の前の課題を精一杯やっています」と、心構えと意気込みを語った。

 永井にとって恩返しをしなければいけない一番の相手は、幼い頃からいつも競技活動をサポートしてきてくれた母親に違いない。だからSPの選曲では、母親が好きな曲である『エリザベート』を初めて選んだという。

「母がこの曲がすごく好きだと言っていて、1回くらいは母が好きな曲で滑ろうかなと思って選曲しました。いままで自分のやりたいようにやってきたので、最後くらいは母の好きな曲で滑ろうかなと思いました」

 そんな思い入れのあるプログラムで滑ったSPではただひとり60点台をマークして首位発進し、「意外と出たなとびっくりしましたけど、まだまだできることはたくさんあるので、しっかりと仕上げていきたいです」と、リラックスした笑顔を見せた。

 翌日のフリーでは、これもまた思い入れのある『エデンの東』に乗って優雅に舞った。冒頭の3回転ルッツを跳び、基礎点が1.1倍となる後半にはダブルアクセル(2回転半ジャンプ)+3回転トーループの連続ジャンプを成功。単発のダブルアクセルが1回転となるミスもあったが、「何とか耐えました。今日の収穫は、やればできることがわかったことです」と、振り返った。



フリーでも1位となり、東京選手権で完全優勝を飾った永井優香

『エデンの東』は、ジュニア最後の2014-15シーズン、永井自身が「一番よかったシーズンのプログラム」。そのシーズンはジュニアGP2大会で連続2位となり、ジュニアGPファイナルにも出場。全日本ジュニア選手権は3位、全日本選手権では4位に食い込んでみせ、四大陸選手権と世界ジュニア選手権に初出場を決めた。

「この曲に対してすごくいいイメージがあります。スケート人生を振り返ると、この曲をSPで使ったときに飛躍できたと思ったので、もう1回、『エデンの東』で気持ちよく滑りたいと思いました」

 2015-16シーズンにシニアに転向し、15年のスケートカナダではGP初挑戦でいきなりの表彰台に乗る3位と躍進したが、その後は体の成長とともに、ジャンプにキレがなくなり、なかなか思い描いたように跳ぶことができなくなった。成績も伸び悩むようになり、苦しい時期が長かったはずだ。

「シニアではすごくいろいろ変わったなと思います。あの頃はあの頃なりにスケートに悩むこともいろいろあったのですが、いろいろな経験をして、いまはもうちょっと重みのある経験してきた気持ちで滑っています。だから、『エデンの東』の曲で最後まで滑り切って、次に向けていいスタートを切りたいと思っています」

 東日本選手権、そして全日本選手権で有終の美を飾る。最後のシーズンに向けてやる気は満々だ。

「大きなケガもなく14年くらい頑張ってきた自分に対して『お疲れ様でした』という気持ちです。大切な人に出会ったり、うれしいことも辛いこともたくさん経験できました。いままでたくさん応援してもらってきたので、その人たちに『ありがとう』という気持ちで滑っていきたいです」

 残り少ない試合でスケート人生の集大成をしっかりと見せて、晴れやかな気持ちでリンクを離れてほしいものだ。