「代表枠を一度広くしてみんなに競争をしてもらう」日本バスケットボール協会で行われた会見では、長谷川健志ヘッドコーチ退任の発表に続き、男子日本代表の今後に向けた強化活動について、東野智弥技術委員長から詳細な説明があった。「代表枠を一度広くして…
「代表枠を一度広くしてみんなに競争をしてもらう」
日本バスケットボール協会で行われた会見では、長谷川健志ヘッドコーチ退任の発表に続き、男子日本代表の今後に向けた強化活動について、東野智弥技術委員長から詳細な説明があった。
「代表枠を一度広くしてみんなに競争をしてもらう。競争原理を作りたいと思います。強化合宿を毎月実施します」と東野技術委員長は言う。
東京五輪に向けた戦いはもう始まっている。来年のスケジュールを見ると、5月~6月に『東アジアサブゾーン予選』がある。スケジュールがまだ決まっていないが、Bリーグのプレーオフと重なる可能性もあり、代表チームとしてどんな状況にも対応できる準備が必要だ。
8月15日から27日にはワールドカップのアジア予選がスタート。1次予選は2017年11月、2018年2月と6月の開催。2次予選は2018年9月と11月、2019年2月の開催。サッカーのW杯アジア予選と同様に、リーグ戦を中断して代表チームを組み、ホーム&アウェーの『本番』をこなさなければならない。
2019年のW杯に出場できるアジアの国は、ホスト国の中国を除く7チーム。日本はまずこの中に入らなければならない。W杯の上位チームには東京五輪への出場権が与えられ、それ以外の国は世界最終予選に回る。
日本代表は『開催国枠』で東京五輪に出場できる可能性もあるが、この枠が有効になるかどうかは2019年のFIBAの判断を待たなければならない。「開催国であっても五輪に相応しい実力がない」と見なされれば、開催国枠は消滅する。そうならないためにも、まずは2019年W杯への出場権を実力で勝ち取り、FIBAにアピールしなければならない。
「なにしろ『個の力』をレベルアップしなければ」
日本代表を世界のレベルにまで引き上げる──。そのキーワードは『日常を世界水準に』。これを実現するため、東野技術委員長はポイントを3つ挙げた。
まずは『定期的な代表合宿の実施により、選手のスタンダードを上げる』。これはBリーグで調子の良い選手を代表に呼び、様々な面でのバックアップをすることを意味する。「なにしろ『個の力』をレベルアップしなければならない」と技術委員長は言う。
2つ目は『Bリーグと協働し、リーグを世界のトップリーグへと引き上げる』。東野技術委員長は「リーグを世界のトップリーグに引き上げなければオリンピックやワールドカップのチャンスはありません。リオに出向き女子だけでなく男子の試合も数多く見てきましたが、次元が違うと思いました」と厳しい言葉を述べる。東野技術委員長がBリーグに求めるレベルは「海外のトップリーグで通用する選手を輩出する」だ。
3つ目は『海外のトップレベルで通用する選手を輩出し、起用する』。OQT(世界最終予選)の代表チームに加わった渡邊雄太を筆頭に、国外に活躍の場を移した選手は少なからず存在する。「そういう選手をしっかりと起用するためコミュニケーションを取っていきたい。またその選手たちをしっかりと海外に送り込むというのも考えていかなければなりません」
「選手にとってはタフですけど、世界と比べてどうなんだと」
長谷川健志ヘッドコーチの退任により、指揮官のポストはしばらく空席となる。その間、代表合宿で指導を行うのはセルビア出身のルカ・パヴィチェヴィッチ。選手としてユーロリーグ3度の優勝経験を持ち、2012年から15年までモンテネグロ代表の指揮を執り、BリーグのSライセンスの講師も務めたパヴィチェヴィッチが、『個のスキルアップ』を担当する。
強化合宿における重点項目は、『スキル強化』、『フィジカルパフォーマンスの強化』、そして『JAPAN PRIDEの醸成とメンタル強化』。
フィジカルパフォーマンスの強化については、佐藤晃一が担当する。NBAで8年にわたりフィジカルトレーナーとして活動し、昨シーズンはティンバーウルブズでスポーツパフォーマンスディレクターを務めた人物だ。
さっそく今月から強化合宿が行われる。12月11日から13日まで、18日から20日までと2回に分けて実施。それぞれ約25名ずつと多くの選手を招集する。基本的にはBリーグの日程に合わせて選手を2班に分け、日曜の試合後に集まり、月曜と火曜に代表チームとしての練習を行う。これを毎月実施していく方針だ。
「選手にとってはタフですけど、私はこれを世界と比べてどうなんだと問わなければいけない。もっとタフにならなければいけないと考えています」と東野技術委員長は言う。
「選手にだけ世界基準を求めるわけにはいかない」
気になる監督人事について、現状は「数名に絞り込んでいるところ」。条件として挙げたのは『五輪を経験しているトップレベルのコーチ』だ。来年8月のアジアカップから指揮を執る想定とのこと。NBAやNCAAとは時期が合わないため、ヨーロッパもしくは代表チームを率いているコーチを起用することになりそうだ。
当然、この件については報道陣から突っ込んだ質問が浴びせられたが、東野技術委員長は強気で「選手にだけ世界基準を求めるわけにはいかない。それだけすごい監督を連れてくるつもりです」と語る。実績のあるコーチであれば報酬も高額になるが、川淵三郎エグゼクティブアドバイザーから「思い切りやれ、と言われています」とのこと。これまでにないビッグネームの招聘が期待できそうだ。
来年の2月10日と11日には、国内で国際強化試合を行うことも発表された(対戦相手と開催地は未定)。今後についても「試合をこなさないと強くならない。合宿だけでなく試合もどんどん組んでいきます」と東野技術委員長は力を込めた。
「Bリーグが始まって、オリンピックがある。新しく歴史を作るチャンスです」と東野技術委員長は言う。長く低迷が続いた男子バスケットボール日本代表に舞い込んだ『最大のチャンス』だが、それは同時に『最後のチャンス』かもしれない。協会は今、大ナタを振るってでもそのチャンスを生かそうとしている。