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 リーガ・エスパニョーラ1部は第5節までを戦い、各選手のコンディションやチーム状況が少しずつ明らかになっている。

「アスレティック・ビルバオの新鋭ウィンガー、ジョン・モルシージョは、下部組織『レサマ』の育ちで、序盤戦を見た限り、可能性を感じさせる。基本的にボールタッチがよく、敵を上回ることができ、個人として輝きが見える。これからに期待できる」

 スペインの名伯楽、ミケル・エチャリは、独特の視点で、いくつかの試合をスカウティングしている。

 エチャリは、リーガの名門レアル・ソシエダで20年近く、強化部長や育成部長などを務めてきた。また、過去に10年にわたって、日本代表の戦いぶりだけでなく、日本の個々の選手のプレーも分析。これまで多くの指摘が、その後、現実になっている慧眼の持ち主だ。

 そのエチャリは、リーガ1部で戦う日本人4人、久保建英(ビジャレアル)、乾貴士(エイバル)、岡崎慎司(ウエスカ)、武藤嘉紀(エイバル)のプレーをどのように分析したのか――。



開幕戦から5試合連続で後半途中出場が続いている久保建英(ビジャレアル)

○久保建英

 久保は開幕から途中出場が続いているが、すぐに試合に適応し、多くのプレーに関与をしている。その度胸と頭のよさついては、高い評価を与えるべきだろう。短い時間ですぐに存在感を示すことは簡単ではない。

 エイバル戦では対峙するディフェンスを手玉にとって、何度もゴールまで迫っていた。

 バルセロナ戦も、大きな可能性を感じさせている。個人としてのスピード、技術が高い次元で融合しており、アドバンテージと言える。エイバル戦と同様、右サイドを中心にクロス、パス、シュートで、3度にも渡ってGKを脅かしていた。深いところまで切り込んでの折り返しや、左足でのシュートなど判断やタイミングがいい。外からだけでなく、サイドバックとセンターバックの間を切り込んだり、中央にボールを運んだり、変幻自在のプレーの選択肢を持っている。

 バルサは昨シーズンよりもディフェンシブなスタイルで、リスクをかけず、ジョルディ・アルバが厚みを加える左サイドからの攻撃は際立って強力だった。ビジャレアルは不本意ながらそれに押され続けた。国内有数のFW、スペイン代表のジェラール・モレノでさえ、ほとんどボールに触れなかった。

 そしてアラベス戦も、後半残り15分での出場となった。この日は、左サイドでの起用だった。チームがリードしていたため、ディフェンシブな仕事がメインだった。それまでの2試合と比べると、ボールを触る機会は少なかったと言えるだろう。自陣でカウンターの起点になろうとしたが、警戒されたディフェンダーにファウルで潰されている。

 私的な見解を述べるなら、久保は右サイドのほうが最大限に力を発揮できるだろう。逆足のほうが、(左足で)中に切り込むプレーは容易いし、ダイアゴナル(対角線)の動きでゴールに迫りやすい。基本的にはアウトサイドよりもインサイドの位置、トップ下に近いゾーンに入って、相手に脅威を与えられる選手だ。

 もっとも、アラベス戦では終了間際には左サイドでうまくボールを引き出し、エリア内まで入ってシュートに持ち込んでいた。

 久保は、交代で入った直後から違和感なくプレーしていた。ビジャレアルというチームにとって、今後はとても利用価値の高い選手になるだろう。その実力はすでに、日本代表、マジョルカなどで示してきたとおりだ。

○乾貴士

 乾は、主に左サイドを戦場にしている。ロシアワールドカップでの日本代表のポジションと同じで、利き足と違うサイドでプレーする「逆足」。ただ、試合中にサイドを変えることで、相手を混乱させられる。

 ビジャレアル戦では、左サイドから積極的に仕掛け、エイバルの有力な攻め手となっていた。シュートだけでなく、切り返してのクロスも可能性を感じさせた。ビルバオ戦でもキケ・ガルシアに送ったクロスは質が高かった。

 乾は、高いスキルを持った選手だけに、ボールを持った時のプレーが目立つのだろう。しかし、私はボールを持っていない時の動きに、最大限の評価を与えたい。エイバルでプレーを重ねる中で、ラインを保ったディフェンスができるようになって、タイミングやポジショニングが改善された。基本的なことだが、中をしっかりと絞って、容易にはパスを通させていない。

 チームの攻守のバランスを取るため、勤勉にプレーできる攻撃的選手だ。激しくハードワークをすることによって、試合終盤にかけて動きが落ちることも避けられない点はあるが、戦術的に成長を遂げた選手と言える。ホセ・ルイス・メンディリバル監督の信頼も厚い。今や計算できるアタッカーだ。

○岡崎慎司

 岡崎は、とにかくゴール前のポジション取りに優れている。ディフェンスライン、味方のパス、走り込む位置など、さまざまな要素を瞬時に計算し、最適解を出すことができる。Jリーグにいた頃から、ダイアゴナルの動きは特筆すべきものがあった。さらに、シュートポジションに入るのにも長け、実際に高い決定力を誇る。リーガ1部でも水準の高い選手と言えよう。

 単純なゴールセンスだけでなく、戦術的なポテンシャルが高いFWだろう。守備のタイミングや強度が抜きん出ているし、しっかりと帰陣できる献身性もある。レスターでプレミアリーグ王者となったFW、という経歴は伊達ではない。エルチェ戦の負傷で日本代表への招集は辞退するようだが、どのチームでも重用される選手である。

○武藤嘉紀

 武藤はロシアワールドカップのポーランド戦でスカウティングをしている。球際で闘志を見せた選手のひとりだった。ただ、連係は今ひとつで、ボールを呼び込めず、味方がフリーで待つ決定機で、パスを選択すべき場面でも、出せていない。

 現時点では、評価するにはまだ材料が少なすぎる。ビルバオ戦の終盤にデビューを飾り、空中戦では競り合おうとする気持ちだけは見せたが、これは明らかなファウルだった。

 エルチェ戦は初先発。前半からFWの一角で、幅を使って積極に動いている。なかなかパスを引き出せず、クロスもタイミングが合わないシーンが続いたが、25分、右からのクロスをヘディングで合わせ、枠に飛ばしている。チームのために献身的に働き、スプリントも速く、ゴールへ向かう直線的な動きも悪くなかった。前半は、プレーに関与しようと励んでいた。

 ただ、後半は明らかに動きが鈍ってしまい、63分に交代になったのは必然だった。続くバジャドリード戦にも乾とともに先発。これからリーガの水に慣れることができるか。