女子1500mで日本選手権初V、がっぷり四つを求める21歳の姿とは 東京五輪まで10か月を切った中、陸上の日本選手権が3日まで新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われた。女子中距離では、21歳の田中希実(豊田織機TC)が日本記録を持つ15…

女子1500mで日本選手権初V、がっぷり四つを求める21歳の姿とは

 東京五輪まで10か月を切った中、陸上の日本選手権が3日まで新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われた。女子中距離では、21歳の田中希実(豊田織機TC)が日本記録を持つ1500メートルで初優勝。800メートルは4位で二冠はならなかったが、強気な姿勢から“超アスリート思考”を垣間見せた。

 勝負にこだわった。初日の1500メートル予選。前半から独走したが、2周目はペースを落とした。「1周目で牽制し合うところを自分のペースで行って、まず気持ちに余裕を作ろうとして2周目で相手の様子を伺おうというところでした」。全体トップで予選通過。「せこい(ずるい)レースはしたくない」と、がっぷり四つを望んで挑んだレースだった。

 決勝でも盤石の走りで初の日本一に。残り900メートルと早い段階で仕掛けたプランについては「ゴールに近いところでスパートをするのは自分の持ちタイムを考えるとずるい感じがする。堂々とした走りで勝つことが自信になる」と真っ向勝負を貫いた。

 800メートル決勝では、スタート直後から大きくペースを落として最後尾についた。200メートル付近でギアチェンジすると、500メートル付近で一時トップに。結果的に4位に終わったが「最初の100メートルは自分のペースでいこうと決めていた」と明確な勝利プランを遂行した。

 日本一を決める大舞台で感じさせたのは、負けを恐れない強気な姿勢だ。“全てをやり尽くした”という過程があるからこそ持てるメンタルなのかもしれない。1500メートルで女王になった直後、こう話していた。

視線は早くも来年へ「プレッシャーを越えて成長していきたい」

「ある程度のタイムを持っていると勝って当たり前だと感じてしまったり、逆に勝たないといけないと考えてしまってどんどん自分でしんどくしてしまう選手が多いと思う。そうなりたくないと思う中で、練習から全力で準備していくことで、やるだけやったので負けてもいいと思えるという向き合い方をずっとしている。

 今回もやるだけのことをやってきたので、結果的に負けても仕方ないし、勝った選手を称えることができるという気持ちでスタートラインに立つことができた。そういう姿勢を持つことでライバルたちと高め合いながらできるのかなと思います」

 他の選手としのぎを削り、ベストの相手を倒すことで達成感を得られる。調子の悪い相手に勝っても、100%は満足できない。そんなバチバチに火花を散らすことを望むファイタースタイルのハートを感じさせた。

 21歳にしては少し達観したような見方。来年6月は連覇を懸けた戦いとなる。「来年から連覇を狙うことになる。ずっと勝ちを狙うことはどんどんしんどくなっていくものだと思うので、そこのプレッシャーをどんどん越えながら選手として成長していきたい。もっと貪欲にやらないと」。153センチの身体に秘めた戦闘意欲は底が知れない。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)