ロッテに13、ソフトバンクにも9の負け越しを喫しているオリックス 5年連続でBクラスの低迷を打破すべく、山岡泰輔と山本由伸の2枚看板を擁する投手陣と、現役メジャーリーガーのアダム・ジョーンズが加入した攻撃陣でペナントレースに挑んだオリックス…

ロッテに13、ソフトバンクにも9の負け越しを喫しているオリックス

 5年連続でBクラスの低迷を打破すべく、山岡泰輔と山本由伸の2枚看板を擁する投手陣と、現役メジャーリーガーのアダム・ジョーンズが加入した攻撃陣でペナントレースに挑んだオリックス。今年のペナントレース前半戦の得点と失点の「移動平均」から、チームがどの時期にどのような波だったかを検証する。(数字、成績は9月27日現在)

「移動平均」とは、大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るための統計指標。グラフでは9試合ごとの得点と失点の移動平均の推移を折れ線で示し

「得点>失点」の期間はレッドゾーン
「失点>得点」の期間はブルーゾーン

 で表している。

 ロッテに同一カード6連敗を含む、6月を1勝9敗という最悪のスタートを切ったオリックス。ただ、7月に入ると西武に3勝1敗、日本ハムに4勝1敗、楽天に4勝1敗と3カードで勝ち越し、月間13勝11敗と立て直しに成功する。

 だが、8月にロッテ、ソフトバンクと続くカードで1勝9敗と大きく負け越して月間6勝18敗と一気に最下位に沈む。実はここまで、西武、日本ハム、楽天とは五分の戦いを繰り広げていたのだが、ロッテに2勝15敗、ソフトバンクには9月22日からの3連戦で2勝1分と勝ち越したものの、それでも5勝14敗。上位2チームとの対戦で抱えた借金がそのままチームの借金に反映されている状況である。

 2チームとの対戦成績を見てみると、以下のようになっている。

対ソフトバンク 打率.204 OPS.592 防御率4.47
対ロッテ 打率.222 OPS.598 防御率5.02

 と、投打ともに歯が立たない状況。エースの山本由伸ですら、ロッテ戦は2試合で防御率6.94、WHIP1.71、クオリティスタート(QS)も無しと今季は相性の悪さを示している。また主砲の吉田正尚外野手もロッテ戦だけは打率.279と唯一3割に達しておらず、本塁打も打っていない。

攻撃陣は“吉田正尚頼み”でリーグ最低の得点数

 次に、オリックスバファローズの各ポジションの得点力をリーグ平均と比較し、グラフで示した。

 グラフでは、野手はポジションごとのwRAA、投手はRSAA(失点ベース)を表しており、赤色なら平均より高く、青色なら平均より低いということになる。

 攻撃において、レフトとライトがプラス評価なのは、吉田正尚がレフトとして39試合、ライトとして32試合に先発出場していることによるものだ。吉田は現在、首位打者争いでトップを独走し、OPSも1に迫りリーグトップ3に食い込んでいる。吉田の三振数は9月27日時点でわずか22、でPA/K(打席数/三振数)16.8はリーグ2位の中村晃の9.79と比較してもダントツの少なさを示している。卓越したバットコントロールの賜物といえるだろう。

 また、キャッチャーとショートでリーグ平均以上の貢献が見えているものの、やはり昨季からの懸案であった得点力不足の解消には至っていない。1試合平均得点はリーグで唯一の3点台。期待のアダム・ジョーンズも打率.255、OPS.742と苦戦している。

 期待の先発投手陣は、山岡泰輔が今季2戦目で3球を投じたところで左脇腹を痛め降板して翌日に登録抹消。2か月もの間の離脱はチームにとって計算外のアクシデントだった。ローテーションの主軸となった山本由伸は14試合に先発し10QS(71.4%)、8度のハイクオリティスタート(HQS、57.1%)、WHIP1.00、奪三振率10.25(リーグ1位)と大きく貢献してが、対戦チームのエース格と対戦することも多く、タフロス(QSを記録しながら敗戦投手)3回と勝ち星に恵まれていない。

 山本に追随するように田嶋大樹が先発14試合で9QS(64.3%)とローテーションの一角を担っているが、先発投手の駒不足は否めない。また救援投手陣の防御率4.24はリーグワースト2位。投手運用に苦心していることが伺える。

 前任の西村徳文監督は、走力のある選手を上位打線に据えるオーダーを組むことが多かったが、出塁率が低ければその足を生かすこともできず、上位打線の攻撃力が大きくマイナスとなり、吉田正の前のチャンスメイクもままならなかった。

 8月21日より中嶋聡2軍監督が1軍監督代行として指揮を執るようになったが、そこから中川圭太、杉本裕太郎、大下誠一郎、宜保翔、太田椋といったプロスペクトを積極的に1軍に引き上げ、試合に起用している。自力優勝、自力クライマックスシリーズ進出が消滅したチーム状況の中、来季を見据えた選手起用で新陳代謝と得点力不足の打開を図っているものと思われる。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。