9月24日に行なわれたリーグカップ3回戦のリンカーン・シティ戦で、リバプールの南野拓実が2ゴール1アシストの活躍を見せ…

 9月24日に行なわれたリーグカップ3回戦のリンカーン・シティ戦で、リバプールの南野拓実が2ゴール1アシストの活躍を見せた。

 ミドルシュートを決めた1点目、激しいプレスから叩き込んだ2点目と、いずれも鮮やかなゴールだった。モハメド・サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノのレギュラー3トップに加え、ポルトガル代表FWディオゴ・ジョタの移籍でポジション争いが激化しているだけに、今季初先発で結果を残した意義は極めて大きかった。



リンカーン戦の2ゴールで存在感を示した南野拓実

 ただ、それ以上に可能性を感じさせたのが、南野が偽9番として機能したことだった。

 センターフォワードとして出場したが、その働きは純粋なCFのそれではなかった。日本代表アタッカーの幅広いプレーエリアと役割が、7−2の圧勝を生んだ一因だったのは間違いない。

 この日のフォーメーションは4−3−3。CFに入った南野は前線から守備をこなし、相手のパス回しを追いかけた。こうしたハードワークが実を結んだのが、南野の2点目のシーンだ。

 南野は後半キックオフ時から相手を立て続けに4人追いかけ、スライディングでパスをブロック。後方にいた味方がボールを奪い、ショートカウンターから南野がネットを揺らした。

「真っ先にプレスをかけて追いかけていたのが、最前線にいるタキ(南野)だった。プレッシングやカウンタープレスの場面で、すべてリズムを作ってくれた」

 試合後のユルゲン・クロップ監督も手放しで褒めていた。

 ただ、南野は前線にとどまるだけではなかった。

 リバプールのマイボール時になると、南野は頻繁に中盤まで下がった。パスコースを作りながらポゼッションに参加し、時には守備的MFの位置まで降りてビルドアップに加わった。象徴的だったのが、前半26分までのプレーマップだ。

 南野のプレーエリアは、インサイドMFとして出場したMFカーティス・ジョーンズ、MFジェルダン・シャキリとほぼ同じ。右サイドバックのネコ・ウィリアムズよりも低い位置だった。一方、4−3−3の両翼に入ったFWディボック・オリギとFWハーベイ・エリオットは、ワイドエリアの高い位置にせり出していた。

 この試合のテレビ解説を務めたダニー・ヒギンボザム氏(※現役時代はサウサンプトンやストーク・シティでプレーしたDF)は、南野の動きで相手に混乱が生じていると説明した。

「南野はほぼ中盤でプレーしている。実際、プレーマップを確認すると、CFの位置には誰もいない。こうなると、相手CBは誰をマークすればいいのかわからない。『誰につけばいいのか?』と、CBには非常に難しい問題が生じる。こうしたプレーはフィルミーノもよくやるが、南野も非常によくやっている」

 たしかに、南野の偽9番起用は効果的だった。

 南野が中盤に降りてくると、空いているCFのポジションにインサイドMFのジョーンズが侵入。あるいは、両翼のオリギやエリオットがダイアゴナルランでDFラインの背後に抜けていった。

 もちろん、南野自身もチャンスとみると最前線のフリースペースに突っ込んでいく。こうなると、相手のCBは誰を捕まえればいいのかわからない。南野の上下動のおかげで、リバプールは流動的、かつ厚みのある攻撃を奏でていた。

 とりわけ、この試合で2ゴールを決めたジョーンズとの連係は効果的だった。南野が中盤まで下がれば、ジョーンズが前方にポジションを上げる。そして、南野が前線に入れば、その後方でジョーンズがサポートする。ふたりの「振り子の動き」は、この試合のポイントだったように思う。

 ヒギンボザム氏は「フィルミーノの動きのようだ」と南野について語っていたが、筆者にはもう少し違う印象を残した。前線とバイタルエリア周辺を動き回るフィルミーノに比べると、南野は中盤の深い位置までカバー。ブラジル代表FWよりもプレーエリアは広かった。また、プレス時の積極性や守備強度も、南野のほうが強かったように思う。その意味では、日本代表はゼロトップシステムで自身の持ち味を示したと言える。

 実際、英紙デイリー・メールはリバプールのフォーメーションについて、南野をトップ下に入れた「中盤ひし形の4−4−2」と記した。「4−3−3」としたメディアが多かったものの、たしかに見方によっては「中盤ひし形の4−4−2」とも取れる。こうして見方が分かれたことも、南野が偽9番として前線と中盤を流動的に動いていた証と言える。

 なによりも、リバプールの基本フォーメーションである4−3−3で、南野がCFとして存在価値を高めたのは大きい。

 南野はプレシーズンから好調で、シーズン前哨戦となるコミュニティーシールドで貴重な同点ゴールを決めた。ただ、この時はチームにとって「プランB」となる4−2−3−1の左MFとして出場。フィルミーノ、サラー、マネと共存できることを示したが、従来型の4−3−3でいかに持ち味を示すかが課題だった。

 南野の活躍を受け、地元紙リバプール・エコーは「レギュラーCFのフィルミーノは、少し心配しているかもしれない。今後、誰をCFの位置で使うべきか、クロップ監督も悩むだろう」と伝えた。

 リバプールは、ここから過密日程に突入する。9月28日にアーセナルと国内リーグを戦うと、中2日の10月1日にリーグカップ4回戦で再びアーセナルと対戦。そして、中2日の10月4日に国内リーグのアストンビラ戦が控えている。

 おそらく、南野はリーグカップのアーセナル戦で先発のチャンスがまわってくるだろう。対戦相手のレベルが一気に上がるこの一戦が、今季序盤のターニングポイントになりそうだ。