ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 次週にはGIスプリンターズS(10月4日/中山・芝1200m)が開催…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 次週にはGIスプリンターズS(10月4日/中山・芝1200m)が開催され、いよいよ秋競馬も本格化。注目のGIシリーズに突入していきます。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、いまだ無観客競馬が継続されていますが、ウインズの営業は少しずつ再開されています。もしかすると、秋のGIシリーズのどこかで競馬場も開放され、ファンの方々が生で競馬を見られる環境も戻ってくるかもしれませんね。

 もちろん、慎重に検討し、万全の対策を取ったうえでのことになりますが、一流の馬たちのレースを目の前で見てもらいたいという気持ちは、競馬関係者の誰もが持っています。この秋、ファンが見守るなかでの競馬が復活することを願っています。

 さて、今週はGI菊花賞(10月25日/京都・芝3000m)に向けて見逃せない、重要なトライアルとなるGII神戸新聞杯(9月27日/中京・芝2200m)が行なわれます。

 注目は言うまでもなく、史上3頭目となる無敗の三冠制覇を目指して、復帰戦を迎えるコントレイル(牡3歳)でしょう。

 今回の神戸新聞杯、次の菊花賞を勝つことができれば、シンボリルドルフ、コントレイルの父であるディープインパクト以来となる、デビューから無敗の牡馬クラシック三冠達成となります。正直、前哨戦となるここでは、土がつくシーンを目にしたくはありません。

 最大のライバルと目されていたサリオスは、中距離路線に専念するため、GII毎日王冠(10月11日/東京・芝1800m)から始動。今回のメンバーで、実績的にはコントレイルに続く存在となるヴェルトライゼンデ(牡3歳)に対しては、春の二冠、GI皐月賞(4月19日/中山・芝2000m)とGI日本ダービー(5月31日/東京・芝2400m)で決定的な差をつけています。

 そうなると、今回のコントレイルに期待したいのは、単なる勝利ではなく、内容面も含めた圧勝です。理想としては、直線を向いたところで、少し促しただけで軽々と抜け出し、あとはまともに追われないまま大差をつけてゴールする――そんな勝ち方を見せてほしいと思っています。

 今年の神戸新聞杯の舞台は、阪神の芝2400mではなく、中京の芝2200mとなりますが、改修後の中京コースは広くて、実力が反映されやすいコースになっています。コントレイルは、左回りの東京スポーツ杯2歳S(東京・芝1800m)とダービーで最高のパフォーマンスを見せていますから、何ら問題はないでしょう。

 正直なところ、昨年末のGIホープフルS(中山・芝2000m)までは、レースのうまさや相手に恵まれた面もあって勝ち上がってきたのではないか、という見方をしていました。しかし、後方からの競馬になりながら、大外をまくってライバルたちをねじ伏せた皐月賞で、コントレイルの真の強さを思い知らされました。

 ダービーでは、鞍上の福永祐一騎手が貫禄を感じさせる落ち着いた騎乗を見せて、危なげない勝利を飾りました。現時点で、この世代の牡馬では「一強」という評価は揺るがないと思います。コントレイルが負ける可能性、他馬の逆転の可能性を考えるのは、ここではなく、菊花賞の時でいいのではないでしょうか。

 コントレイルの対抗と目されるのは、ダービーで掲示板に載った3着ヴェルトライゼンデと5着ディープボンド(牡3歳)でしょうか。ただし、この世代はコントレイル、そしてサリオスが抜けた存在で、3番手グループは混戦のまま春シーズンが終わった感があります。となると、これら2頭には絶対的な信頼は置けません。

 実際、ヴェルトライゼンデは当初、強い馬が出てくる神戸新聞杯を避けて、先週のGIIセントライト記念(9月21日/中山・芝2200m)からという、池江泰寿厩舎の得意なパターンで始動する予定だったそうですが、熱発の影響でこちらにスライドしたと発表されています。その辺りは懸念されますね。

 ディープボンドは、2200m戦のGII京都新聞杯(5月9日/京都)を勝っていますし、初の左回りのレースとなったダービーでも5着と健闘。その実績は評価に値しますが、さすがにコントレイルを逆転するのはどうか。夏を越して、想像以上の成長を見せていないと難しいでしょうね。逆に成長がなければ、新興勢力に屈してもおかしくありません。

 結局、コントレイルの取りこぼしは考えられない神戸新聞杯ですが、3着までに与えられる菊花賞への優先出走権争い、つまり2、3着の残り2枠を巡る争いは熾烈です。



およそ10カ月の長期休養明けで神戸新聞杯に挑むグランデマーレ

 ということで、今回の「ヒモ穴馬」は、菊花賞出走のためには3着以内に入ることが必須となる2勝馬の中から、ピックアップしたいと思います。最も食指が動くのは、長期休養明けながら、2戦2勝と無傷のグランデマーレ(牡3歳)です。

 コントレイルとは格的に大きな差がありますが、グランデマーレも同じ"無敗馬"。2歳秋に1勝クラスの葉牡丹賞(中山・芝2000m)をレコード勝ちした素質馬で、その後の骨折がなければ、クラシックでも有力候補に挙げられていたと思います。

 今回、何より魅力を感じるのは、骨折して10カ月ぶりの実戦ながら、クラシックの前哨戦である神戸新聞杯に参戦してきたことです。

 通常、こういう長期休養明けの馬は、もはやクラシックにはこだわらず、条件戦を一つひとつクリアして、「勝負は古馬になってから......」という選択をするケースが多いです。にもかかわらず、グランデマーレはぶっつけで神戸新聞杯、それもコントレイルがいるレースへの参戦を選択してきました。この点において、陣営の同馬に対する期待というか、熱意が感じられます。

 万が一、今回コントレイルに負けがつくとすれば、グランデマーレのような未知の部分が多い馬が実はとんでもなく強かった、というパターンしか考えられません。はたして、グランデマーレにそこまでの力があるのか、興味深いところです。

 そこまでの力がないにしても、菊花賞への出走権争いにおいて、グランデマーレの走りからは目が離せません。コントレイルとともに、今年の神戸新聞杯は2頭の無敗馬のレースぶりに注目したいと思います。