那須川天心×清宮海斗 異種格闘技対談(後編) 思わぬ形で実現した、キックボクシング界の"神童"那須川天心とプロレスリング・ノアの清宮海斗の対談。お互いのYouTubeチャンネルにもゲスト出演し、意気投合したふたり。前編に続き、話題は那須川が…

那須川天心×清宮海斗 異種格闘技対談(後編)

 思わぬ形で実現した、キックボクシング界の"神童"那須川天心とプロレスリング・ノアの清宮海斗の対談。お互いのYouTubeチャンネルにもゲスト出演し、意気投合したふたり。前編に続き、話題は那須川が出場する「RIZIN.24」(9.27 さいたまスーパーアリーナ)から、清宮にとって因縁のアノ選手へーー。



「那須川さんとプロレスのリングで一緒にやりたい」と語る清宮海斗(写真左)

対談前編はこちら>>

── 那須川選手、9月27日(日)に「RIZIN.24」で対戦する皇治選手にかなり煽られています。

那須川 これまで喧嘩を売られるような形で試合をしたことがなかったので、どうなるかなあとは思いますけど。でもリングですべてを出したい。向こうのほうが年上ですけど、わからせてやろうかなとは思っています。

── 清宮選手はいつも拳王選手に煽られていますね(笑)。

清宮 僕がなにかやるたびにですね、どんな小さいことでもいちゃもんつけてくるんです。

那須川 そんな人がいるんですか(笑)。

清宮 適当なのに、かなり巧みに言ってくるんですよ。だからお客さんもちょっと納得しちゃうんです。

那須川 なるほど、なるほど!

清宮 僕の中学時代の写真とかをどこかから見つけてきて、「こんな丸坊主が!」みたいなことを言ってくるんですよ。

那須川 マジですか! めっちゃ好きじゃないですか! ファンなんじゃないですか?

清宮 もはや、そうですよね! 

那須川 じゃあ、たぶん、この記事のことも言ってくるんですね。

清宮 ちなみに蹴り使いなんで、那須川さんにまで影響するかもしれない......。

那須川 すげえ(笑)。

清宮 僕はキャリアで言ったら全然下なので感情的になりますけど、那須川さんは完全なチャンピオンじゃないですか。もっと余裕があるので、煽られてもドーンと構えている感じだと思うんですよね。

那須川 それはありますね。別になんとも思わないです。「あ、そうですか」みたいな。

清宮 那須川さんは、煽ってみたいとかありますか?

那須川 いやあ、ちょっと無理ですね。僕、平和主義なんで。人生で一度も喧嘩したことないんですよ。怖いですよね。「おい、コノヤロー!」とか言うんですか?(笑) どうやってやればいいかわからない。ビビりですしね。

清宮 ビビりなんですか!?

那須川 超ビビりです。

清宮 へえ、ホントですか? 闘っている時は?

那須川 闘っているときはもう、腹くくって。だって普段、腹くくらないじゃないですか。腹くくって生きてたら、疲れちゃいますよね。いざとなったら、みたいな感じですね。

清宮 コーナーのトップに立って、ピューンとかやってるじゃないですか。

那須川 ああいうのは大丈夫ですけど、オバケとか、ヤンキーとか。そういうのはちょっと......ってなりますね。

清宮 僕は普段の生活でもだいぶ腹くくるようになりましたよ。帰宅部でしたし、格闘技とはまったく関係ないところから来ているので、最初は「こういう世界があるんだ! あり得ない!」みたいな感じでしたけど、中に入ればそこに慣れてきて、私生活から腹くくってないとやっていけないなと。先日も嫌いなワインをしこたま先輩と飲みました。

那須川 アハハハハ!

清宮 いまだに「プロレス向いてないなあ」と思う時もありますね。ただ、睡眠ってすごく大事だなと思っていて。寝たらだいぶケロっと楽になるタイプなんで、そこはレスラー向きかなと思いますね。

那須川 僕もケロっとしていますね。他の人から見たら「失敗してるんじゃない?」とか思われることもあるかもしれないけど、僕からしたら「失敗なんて当たり前っしょ」みたいな。ストレスとか感じたことないです。毎日ハッピーです。SNSとかで叩かれても、まったくもって無敵です。

清宮 叩かれることあるんですか?

那須川 ありますよ。めっちゃ言ってくる人もいる。「おまえはもうそろそろ負けるっしょ」とか、「YouTubeやってないで格闘技の練習しろ」とか。けど、まったく気にならない。

清宮 僕も気にならないですね。批判的な意見が1で、肯定的な意見が1で、それを足して2になったらいいなと思ってるんです。全部合わせて、合計が大きければ大きいほどいい。それにしても那須川さんは、YouTubeをやりながら練習もしてすごいですよね。どういうスケジュールなんですか?

那須川 朝練習して、休んで、昼過ぎから練習して、夕方空くのでそこから撮影してます。



 

清宮 プライベートがないですね。

那須川 ないですね、たしかに。プライベートはYouTubeじゃないですかね。「趣味=YouTube」みたいな。いろんな人に会えますし、楽しいですよ。今日、「清宮海斗チャンネル」も生まれたじゃないですか。

清宮 いやぁ、ちょっと更新できなさそうですね......。

那須川 アハハハハ! でも年間100試合あったら、試合後に「今日のカラダ」みたいな動画もできそうですよね。YouTubeって、ひとつのことに絞ったほうが伸びるんですよね。ただご飯を食べるだけでも伸びるし。趣味はなにかあるんですか?

清宮 ゲームですね。

那須川 じゃあ、「清宮ゲームチャンネル」! プロレスラーでゲームチャンネル持ってる人、いないんじゃないですか?

清宮 戦争ゲームが大好きなんですよ。戦争ゲームが大好きすぎて、高校時代の3年間はずっと部屋にこもってやっていました。

那須川 マジっすか!(笑) 高校生からやってるということは、うまいんですよね?

清宮 そうですね、自信ありますね。

那須川 ほらっ! なかなかいないですよ! プロレスラーで他にいないっていうのが一番強いですよね。上半身裸でやりましょう!

清宮 やるしかないですね(笑)。

那須川 いま個人の時代だと思うんですよ。試合が決まりました、そこで会見あります。それだけじゃダメだと思うんです。個人でプロデュースするっていうのが大事になってくる。自分のチャンネルを持ったりとか、自分で発信したりとか。それにみなさんがついてきてくれて、そこで試合をするっていうのが主流になってきてますよね。

清宮 ノアのYouTubeチャンネルは試合の煽りとかだけなんですよ。こういう個人の配信って初めてだと思います。自分がもしゲームチャンネルを作るとしたら、那須川さんとコラボしたいですね。

那須川 いいですね! 僕もゲーム好きですし。

清宮 今回はコラボというより、完全に那須川さん主導で無理やり「清宮海斗チャンネル」が生まれたっていう流れだったので(笑)。

那須川 筋肉ムキムキのレスラーがゲームする配信、めっちゃギャップがあっていいと思うんですよね。オンラインの待ち時間は「いまから筋トレします」とか、絶対面白い!



 

── 「那須川天心チャンネル」は、トレーニング動画やオモシロ企画にとどまらず、試合直後の那須川選手に独占インタビューする動画まであって、振り幅が本当に大きいですよね。そのインタビューの中で、出世試合について話していたのがとても印象的でした。

那須川 この試合をやることによって人生が変わるとか、勝つことによって人生が変わるとか、絶対にあると思うんですよ。やっぱり、男は挑戦しないといけない。メイウェザー選手との試合が決まった時も、「まじか!」と思いましたけど、そういうチャンスって何度も巡ってこないんですよね。それを掴みに行く姿勢は大事ですよ。それ次第で人生が変わる人もいれば、よくなる人もいれば悪くなる人もいますけど、そういうストーリーは大事ですよね。

── 清宮選手にとって出世試合は?

清宮 自分のなかでは、海外遠征から帰ってきた時の拳王選手との試合が手応えありましたね。お客さんもすごい盛り上がって、そこでベルトは完全に自分の視野に入っていると感じて、そこから年末にベルトを獲るという目標を掲げて、実際にベルトを獲ることができたので。そこはひとつのターニングポイントだったかなと。あと近い試合だと、武藤(敬司)さんとの試合は、自分のプロレスに対する考え方をあらためて見直すきっかけにもなりましたし、これは必ず今後の自分のプロレス人生を左右するなっていう試合でした。

── これからのキック界、プロレス界の未来を担うおふたりの夢とは?

清宮 僕は、那須川さんとプロレスのリングで一緒にやりたいです。

那須川 マジっすか(笑)。

清宮 タッグマッチがあるのって、プロレス界くらいですよね。これを機会にやりたいですよ。僕と那須川さんが組んで、相手チームは那須川さんのライバルと拳王が組むとか。見たことないようなことをやりたいです。

那須川 やりたいですね! 面白い! 僕は、目標はいっぱいあるんですけど、夢っていうのはまだないんです。見えないんですよ。自分で言うのもなんですけど、可能性がありすぎて。世界の中心人物になりたいっていう気持ちはすごくあります。格闘技で世界に名を轟かせたい。

── まずは、9月27日(日)の「RIZIN.24」ですね。

那須川 久しぶりに地上波で試合が放送されるので、しっかりと差をつけたいです。いま格闘技も新しい時代を迎えていて、選手自ら発信して、口も巧くて、それでファンがついてきてくれて、盛り上がる。それはそれでいいんですけど、原点はそこじゃない。やっぱり強くなりたくてやってるわけなんで、そこを疎かにしてはいけないというのはあります。そこをわからせる試合をしたいなと思っています。

(了)

【プロフィール】
那須川天心/1998年8月18日、千葉県生まれ。5歳から極真空手を始め、小学校5年生でジュニア世界大会優勝。キックボクシングに転向し、アマチュア戦歴は105戦99勝5敗1分。キック界の"神童"と呼ばれる。14年7月、RISEバンタム級ランカーを1R58秒KOで下し、衝撃のプロデビュー。史上最年少16歳でRISEバンタム級王座を獲得、19歳で初代RISEフェザー級世界王者となる。2016年12月、RIZINに初参戦し、総合格闘技デビュー。2020年7月、プロ40連勝(31KO)を達成した。165cm、58.6kg。Twitter @TeppenTenshin
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清宮海斗/1996年7月17日、埼玉県生まれ。幼少期から三沢光晴に憧れ、高校卒業後すぐプロレスリング・ノアに入門。15年12月9日、ディファ有明大会にてデビュー。17年6月、海外遠征のためカナダへ出発。同年12月、後楽園ホール大会で凱旋帰国。18年12月、王者・杉浦貴を下し、GHCヘビー級王座を戴冠(戴冠最年少記録を更新)。20年1月まで防衛を続け、ノアの次世代エースとして期待されている。2018年、2019年、プロレス大賞・敢闘賞受賞。180cm、98kg。Twitter @noah_kiyomiya
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