「試合を通じ、乾(貴士)は際立ったプレーを見せ、久保(建英)も与えられた少ない時間で存在感を示していた」 スペインを代表…

「試合を通じ、乾(貴士)は際立ったプレーを見せ、久保(建英)も与えられた少ない時間で存在感を示していた」

 スペインを代表する指導者のひとりであるミケル・エチャリは、今シーズン最初の"日本人対決"となったビジャレアル対エイバルをそう総括している。

 エチャリは過去にレアル・ソシエダ、エイバル、アラベスという有力クラブで、監督だけでなく、ヘッドコーチ、強化部長、育成部長、戦略分析、スカウトなど、あらゆる職務を経験してきた。昨年、15年以上にわたって務めたバスク代表監督の座をハビエル・クレメンテに譲って退任。現在はバスクサッカー連盟指導者委員長として、指導者養成にあたっている。

 そのエチャリは、この一戦を通じ、乾、久保の2人をどのように分析したのか――。『Sportiva』では、日本代表に関するスカウティングリポートを10年以上にわたって続けているが、今回はリーガの日本人選手についての番外編である。



試合後に握手をかわす乾貴士(エイバル)と久保建英(ビジャレアル)

「ビジャレアルは4-4-2、エイバルは4-1-4-1の布陣で激突している。ビジャレアルは縦への速さに特徴のあるスタイルで、パスをつなぎ、ボールを運び、プレー方向を変化させ、ペースをつかむ。一方、エイバルは両ワイドの選手が絞って中盤の守備に厚みを加え、自由を与えず、高いラインを保つことで多くのオフサイドを取るなどし、ダメージを最小限にしていた。

 後半になって、粘り強い守備でリズムを作っていたエイバルが先制点を決めている。中盤で相手からボールを奪うと、乾がそれを拾い、ターンから確実にエドゥ・エスポジトへつなげる。そして、スルーパスからキケ・ガルシアがGKとの1対1を決めた」

 エチャリは試合の流れを簡潔に明快に説明し、乾について詳しく記述している。

「乾はエイバルの戦術において、キーマンになっていた。左サイドをスタートポジションにしつつ、守るときには中央のコースを封鎖。また、相手右サイドバックのマリオ・ガスパールの攻め上がりも封じ込めていた。先制点における守から攻のつなぎも満点だった。

 攻撃でも積極的に前に出て、ダイアゴナルの動きで敵を幻惑していた。後半途中、ディフェンスの背後を取って、飛び出してきたGKと交錯。本来なら、退場に相当するプレーだったが、オフサイドの判定になってしまう。乾自身はオンサイドだっただけに、この判定は勝負も分けたと言える。

 乾はカウンターでも脅威となり、前半には味方GKからのロングキックを完璧にコントロールし、ディフェンスより前に出て、GKと1対1になっている。90分間、機敏さを見せ、クロスの質も高く、ハードワークは賞賛に値する。エイバルのマン・オブ・ザ・マッチを選ぶなら、乾になるだろう」

 逆転して勝利したビジャレアルについても、エチャリは見解を述べている。ちなみに、エチャリは監督時代にビジャレアルのウナイ・エメリを選手として指導しており、エイバルのホセ・ルイス・メンディリバル監督とは同じバスク出身で昔からの友人である。

「ビジャレアルは後半になってペースが落ち、失点を喫した。ここでエメリ監督は、中盤にビセンテ・イボラ、左サイドバックにペルビス・エストゥピニャンを投入。再びゲームを押し返すと、エリア内でボールを受けたジェラール・モレノが完璧な切り返しで鋭いシュートを放ち、同点に成功した。また、エイバルのわずかなゆるみを見逃さず、モレノが裏にスルーパスを送り、それをパコ・アルカセルがオフサイドギリギリで抜けだし、確実に仕留めた。

 ビジャレアルは選手の質と層の厚さで逆転した格好だろう。モレノはこの試合のベストプレーヤーだった。パウ・トーレスも水準の高い守りを見せ、ダニエル・パレホ、サミュエル・チュクウェゼ、モイ・ゴメスも高い評価を与えられるプレーだったと言えよう。結果そのものは、先述したように乾のプレーに対する判定次第で変わり得たが......」

 そしてエチャリは最後に、久保のプレーにも及第点を与えた。

「久保は84分から、右サイドを中心に逆足(利き足と違うサイド)でのプレーになった。ディフェンスと対峙した時、非常に優れたテクニックを見せている。マリオ・ガスパールからのパスを受け、完全にディフェンスの背後を取って、緩急の変化で抜き去り、シュート性のクロスも際どかった。

 基本的に俊敏で、容易く方向を転換できるため、(ディフェンスより)前に出られる。ビジョンも明晰で、左のエストゥピニャンからのパスをインサイドで受け、モレノのシュートをアシストしたプレーも際立っていた。終了間際、カウンターからのシュートはうまく当たらなかったが、シュートの角度がほとんどなく、最後のところで味方へのパスを迷い、半端なキックになったのかもしれない。

 わずかな出場時間だったが、ほぼ完璧なプレーを見せた。中盤に下がってのプレーも得意で、その可能性を示したと言える」