世界3大レースにも数えられるルマン24時間レースが19、20日にかけて仏ルマン郊外のサルトサーキットで決勝が行われ、中嶋一貴(35)らが駆るトヨタ8号車が3連覇を果たした。大会3連覇は過去に8人しかおらず、一緒に「トヨタTS050ハイブリ…

 世界3大レースにも数えられるルマン24時間レースが19、20日にかけて仏ルマン郊外のサルトサーキットで決勝が行われ、中嶋一貴(35)らが駆るトヨタ8号車が3連覇を果たした。大会3連覇は過去に8人しかおらず、一緒に「トヨタTS050ハイブリッド」を操ったセバスチャン・ブエミ(スイス)とともに3連覇ドライバーの仲間入りを果たした。

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表彰台で総合3位を表彰される小林可夢偉らトヨタ7号車のメンバー(トヨタ提供)


 その陰で涙をのんだドライバーもいた。チームメートで7号車をドライブした小林可夢偉(34)だ。ポールポジションから首位を独走していたが、スタートから12時間経過後に排気マニホールドの破損によるターボトラブルに見舞われ、修復による長時間のピットストップで後退。トップから6周遅れの総合3位でフィニッシュした。

 不運だったのは今年だけではない。昨年もトップを快走しながら、残り1時間でタイヤのスローパンクとセンサートラブルに見舞われ、一貴らの8号車に勝利を譲る形となった。2017年も首位走行中にクラッチが壊れてリタイアを喫した。

 チームの総代表を務めるトヨタ自動車の豊田章男社長も「7号車のマイク(コンウェイ)、ホセ(マリア・ロペス)、可夢偉の3人には、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。可夢偉は『忘れ物を取りに行ってくる』と言って、この決勝に向かっていきました。ここ数年の彼のル・マンを見ていれば、そんな気持ちでいることも、よく分かります」と慰めた。

 トヨタが複数のマシンで臨むのは、1台よりも2台の方が実走データが多く取れるということもあるが、1台のマシンに不測のトラブルが起きた時に、もう1台のマシンでバックアップ対応ができるため。今年の大会はまさにそれだった。

 16年に初優勝がかかっていた一貴の8号車がゴール目前でスローダウンし、ポルシェに逆転勝利をさらわれた。そのときは可夢偉の7号車が総合2位に入った。トヨタがルマンに復帰した2013年以降にトップ争いで波乱が起きなかったのはトヨタが初優勝とワンツーを飾った18年だけ。24時間レースは車両の耐久性も試されるため、速さが際だっていても勝てないことが多い。


中嶋一貴らが駆るトヨタ8号車がルマン3連覇を果たした(トヨタ提供)


 一貴はトヨタのルマンプロジェクトに初年度の13年から携わっている。一方、可夢偉がトヨタの一員となったのは3年遅れの16年。チームは日本人を別々のマシンに乗せる方針のため、どちらかが優勝すれば、もう一方は必ず優勝を逃すという運命にある。一貴が3連覇したということは可夢偉が3連敗したことも意味している。

 2人はジュニアフォーミュラの時代からしのぎを削ってきた同志であり、ライバルだ。ともにトヨタの育成プログラムを通じて、F1シートを射止めた。F1の最高位は2012年日本GPで3位表彰台を獲得した可夢偉に軍配が上がる。が、F3、GP2(現F2)、F1と先にステップアップしたのは一貴の方だ。F1を退いた後に参戦した日本のスーパーフォーミュラで一貴は3度タイトルに輝いた。一方の可夢偉は未勝利&無冠だ。

 一貴、ブエミと組んでルマン優勝を経験したのは18、19年が元F1王者のフェルナンド・アロンソ(スペイン)。今年はブレンドン・ハートレー(ニュージーランド)。2人ともF1時代にホンダとゆかりの深かったドライバーで、しかもトヨタへの加入は可夢偉より遅い。

 だからこそ可夢偉は余計に悔しい思いをしていることだろう。ルマンのレース後に「3位という結果は望んでいたものでも、予想していたものでもありません。我々は今年もここルマンで非常に速かったのですが、レースというのは残酷です。我々はよく戦いました」とコメントした。

 トヨタは来年から導入される新規定のルマンハイパーカー車両で4連覇を目指す。可夢偉にとっては「忘れ物」を取りに行く戦いが再び始まる。

[文・写真/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)


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