「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第30回目の講師は、日本女子ホッケー界をけん引してきた藤尾香織さん、永井友理さん、永井葉月さんの3人だ。藤尾さんは国際ホッケー連…

「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第30回目の講師は、日本女子ホッケー界をけん引してきた藤尾香織さん、永井友理さん、永井葉月さんの3人だ。藤尾さんは国際ホッケー連盟が選出する世界オールスターチームの18名に選ばれ、日本人として初めてオランダリーグにフル参戦するなど世界のトッププレイヤーとして活躍。現役を引退した現在、ホッケーの普及活動に取り組んでいる。また永井友理さん、葉月さん、姉妹は、ジュニアユース年代から世界を経験し、日本代表の中心選手として活躍。海外チームでのプレー経験もあり、現在はソニーHC BRAVIA Ladiesでチームメイト。姉・友理さんはエースストライカーとして、妹・葉月さんは司令塔として活躍している。全国高校ホッケー部の現役部員約55名や顧問の教員が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

「失敗をしてもいい」

3人は画面越しに挨拶をし、参加者とコミュケーションを図ると、それぞれがホッケーに打ち込んだ高校時代を振り返った。

藤尾さんは「学生ならではの思い出よりも、ホッケーしかやっていない女の子だった。遊びの延長上で苦ではなかった。その時にスポーツを楽しむ心を養えた」と話した。友理さんは「高校時代は四冠を目指すことを目標にしていたし、そのため練習も年に1度しか休み(元旦)がなかった。夢については、藤尾さんがオランダに留学したことを聞いて憧れていた」と言うと、葉月さんは「1日しか休みはなかったが、ホッケーが好きだったので気にならなかった。夢は姉と一緒で海外留学で、U‐16代表時にオーストラリアに行った時にうまい選手や環境に感動をした。だが家族からは『姉が最初に行く』と言われたので、私の夢は遅くなるだろうと感じていた。姉に対しては、ずっと早く海外に行って欲しいと思っていた(笑)」と続けた。

技術面に関するコーナーからスタートする。その中で「試合中、前にいくためのドリブルが出来ない。どうすればスピードを持って前にいけるのか?」という質問が届くと、藤尾さんは「自分では、なぜ前にいけないと思う?」と逆質問。すると「自分で色々と試行錯誤をして、自分なりのコツや研究をしてもらい、それでも分からなかったら聞くというスタイルが好きなんですが、今日は特別に」と前置きした。それは失敗を繰り返し自分で掴んだ技術こそモノになる積み重ねの大切を知って欲しかったからである。藤尾さんは、こう続けた。「私の場合は目の前の敵は見ていない。裏のスペースを見て前に行く。相手の後ろのスペースに行くためドリブルコースを考えて、ボールを持つ前に敵の裏のスペースを見れたらいいし、持った時にドリブルのイメージが出来ていれば相手に左右されずに、自分で主導権をもったドリブルが出来ると思う。失敗をしてもいいのでやってみて欲しい。特別ですよ(笑)」。

「自分がやってきたことに自信を持てるマインド」

次にメンタル面を中心とした質問へと移った。「試合中に緊張をしてしまう。それをほぐす方法について?」の質問が飛ぶ。ここまで30回を数えるオンラインエール授業の中でも必ずと言っていいほど話題となるのが、この“緊張やプレッシャー”についてでもある。それほど高校生アスリートにとっては大きな問題なのだ。

友理さんは「高校生の頃、緊張しすぎて自分のプレーが出来ず先生に怒られて泣いたこともあった。ある人から『人よりも練習を何倍、何十倍もやることで自信がつくし、これだけやったから大丈夫だという気持ちになる』という言葉をいただいた。とにかく練習をして、試合では『これだけやったから大丈夫だ』と思えるようになった」と練習が克服法となったことを明かした。

葉月さんは「あまり緊張しないタイプだが、色々な感情を落ち着かせるために、試合の10秒前に目を閉じ深い深呼吸を吐いている。そして3、2、1で目を開けて試合に挑んでいる。姉も言ったが『自分は誰より練習したし、誰よりもうまい』と思ってプレーすることで緊張がほぐれると思うので、自信を持ってやってきたことを作れば試合でもうまくいく」と試合前のルーティンを通して気持ちをフラットにしていることを口にした。

藤尾さんは「自分のことが見えなくなる緊張や相手が強く感じる緊張、怪我をして不安がある時の緊張など、緊張には色々な理由がある。ただ自分を信じられるのは自分だけ。自分がやってきたことに自信を持てるマインドを日ごろから持つことが大事になる。私は国際大会などウォーミングアップ時に緊張することが多く、ダッシュをして『緊張でドキドキしているのか?』、それとも『ダッシュでドキドキしているのか?』が、分からない状態にしていた。落ち着いて自分がやるべきことだけを考え、集中することが良いと思う」と自身の経験を語った。

次に将来、体育教師に就きたいという生徒から「体育の先生は色々なスポーツの楽しさを教えることが仕事だと思うが、スポーツをしていて辛いこともあるが、スポーツの楽しさは?」という質問が飛んだ。

藤尾さんは「現在、普及活動を行っているが、体を動かすことに興味がない子に楽しさを教えるのが私の課題。体育が苦手な子や興味がない子が、チャレンジをした一瞬や、やってみた瞬間を見逃さずに、それを褒めて声掛けすることが大事だと思う」と前向きな姿勢へのコミュケーションの大切さを伝えた。そして、友理さんは「団体競技なので、周りと何かをやり遂げた達成感が楽しい。みんなで勝ち負け関係なく一緒になってきた過程から楽しく素敵な時間だったと思うことが多い」と団体競技でしか味わえない醍醐味を口にすると、葉月さんは「みんなで1つの目標に向かって頑張れることが楽しい。負けた時にどうやってチームが立ち直るかも楽しいことで、次に勝てるように考えながらやることも団体競技の楽しみなところ。みんなで何かを成し遂げるのがホッケーの素晴らしさだと思う」と楽しさを言葉で表現した。

参加した高校生に今日の感想を求めると「今日、学んだことは明日からチャレンジが出来ることばかりだった。コロナで大会が2つ消え、あと1つしかなくなったが悔いが残らないように頑張っていきたい」と、大きな刺激を受けた様子だった。

藤尾香織さん、永井友理さん、永井葉月さんが語る“明日へのエール”

最後に“明日へのエール”を求められた藤尾さん、友里さん、葉月さんは、次のエールを送った。

「2年生の時に選抜大会がなくなり悔しい思いをしたし、東京五輪も延期となり辛い思いもある。とにかくホッケーが出来ることを楽しんで欲しいし、試合に出場できる時は自分が一番うまいと思ってプレーをすることと、みんなと出来る時間を楽しんで欲しい」(葉月さん)。

「私はエールを送る立場だが、みんなの頑張っている姿を見て逆にエールをもらっている。大会が中止になり練習が思うようにいかず辛い状況だと思うが、諦めずに頑張っていることが多くの人に希望や夢を与えるていることを忘れないで欲しい。家族や友だち、チームメイトを大切にして、その分、自分も大切にして欲しい」(友理さん)。

「どんな道に進もうが自分の歩みを止めないこと。前に進めば新しい出会いがあり、新しい発見がある。自分をチャレンジする場所がある。スポーツを通じてもそうだし、社会に発つ子もいると思うが、夢や目標を見失わらずに前に進んでいって欲しい」(藤尾さん)。

 

そして、オンラインエール授業の締めくくりとして3人は参加者とガッツポーズを取り記念撮影をし、オンラインエール授業は終了した。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

これからも、全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、「今とこれから」を少しでも前向きにしていけるエールを送り続ける。