「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第29回目の講師は、高校時代は名門、桜花学園でインターハイに優勝し、ナショナルチームAメンバーとして2006年アジア大会と2007年アジア選手権では3位入賞。2015年5月に現役引退し、現在はバスケットボールの中継やリポートを中心に活動をしている中川聴乃さんだ。全国高校バスケットボール部の現役部員約30名や顧問の教員が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

「大スランプを乗り越えた方法とは」

明るい笑顔と共に画面に登場した中川さんに、早速、高校時代を振り返ってもらう。

「バスケット一色でしたし、部活にかける3年間だった(笑)」と話す。他校からも声がかかっていたが地元・長崎の高校に進学。長崎でインターハイが行わることもあり、「ここでやろうと決心をしていたが、ある時、日本一を目指したいと思うようになった」。自分を成長させ、さらなる高みを目指したいと思った中川さんは「地元の高校では日本一になることが難しいと思い、私自身の意思で国体後に転校を決めた。こうと決めたら一直線のタイプ。周りの協力もあって転校という行動に出た」

転校後の半年間は公式戦への出場が出来ない規定があるが、「インターハイ出場に向けてスケジュールを組んだ。周りが送り出してくれたからこそ、ここで結果を出さなければいけないという思いだったが、最初で最後の大スランプを起こした。ボールに触ることも怖い、自分の失敗が怖くなった。今、振り返れば、色々な人たちの応援や思いを背負い込み過ぎて、プレッシャーで自分をがんじがらめにしてしまい、120点満点失敗が許されないところまで気持ちがきてしまった。試合にも出場し、大会にも優勝したが、自分にプレッシャーをかけてしまった最悪のインターハイだった」と心と体のバランスが崩れたことを話した。

だが、この経験が後のバスケットボール人生に生かされたと中川さんは、こう語った。「インターハイが終わってからもプレッシャーから抜け出せずにいたが、一旦、目標を置いて、目の前のことを繰り返しやることに専念したことで、少しずつ小さな目標が生まれてバスケットが楽しくなった。それが今につながっているし、ターニングポイントだったと思う」

そして技術面に関する質疑応答からスタートした。「周りの状況を良く見える方法については?」というコート視野についての質問が飛ぶと、中川さんは「私は周りを生かすプレーが好きなタイプで、プレー中に視野を広げて見ることも大事だが、コート外の時に『周りがどういう動きをしているのか、どういう目線なのか』をずっと観察して欲しい。練習外を見るとヒントがある。私は目線や足先、体の開き方や閉じ方など見えていたタイプ。意識的に周りがどう動いているのかを見ることで、最初は1人しか見えなくても、2人、3人、そしてディフェンスまで見えてくる。そうなるとコツを掴んだところまで行く。実戦の中で、毎日、積み重ねることが大事になる」とアドバイスを送った。

「夢を叶えるための3点」

終盤になるとメンタルを中心とした質問へと移った。

「公式戦でチームが負けている時に意識することや、どんな声をかければいいのか?」という悩みに対して「負けている時こそ焦らない。負けをイメージすると、みんながその方向に引っ張られてしまうし、プレーにもつながってしまう。『絶対にこの試合に勝てる』と自分と仲間を信じることで良い方向に向いていく。バスケットボールは15点差がついても勝てる競技。『負けるかもしれないではなく、みんなで練習してきたからこそ絶対に勝てる』と信じる気持ちが大事。また、負けている時は、自分で行かずに人にボールを渡してしまう。人頼みになると悪いペースになるので、自分からシュートに行って、周りに『大丈夫、まだいける』という言葉を発信して欲しい。そうすることで、みんなは積極的にシュートに行くし、声も出る。負けているけど『ここからいける』と会場の雰囲気も変えて行くので頑張って欲しい」とメッセージを送る。

「ミスをするとミスが続き、気持ちが落ち込んでしまってチームに迷惑をかけてしまう。気持ちを戻す方法は?」に対しては「ミスをするとミスをしてはいけないと体が硬直してしまい、練習で積み重ねていることが失敗したことに意識が向いて忘れてしまう。『次も失敗していいから思い切ってやろう』という開き直りが大事。自分で攻めて失敗した時は、体が慣れていないケースが多いので、自分の体の動きが伴うまで周りにボールを振りながら、『これ行けるぞ!』というタイミングで仕掛けて行くのも大事。消極的なプレーはミスにつながりやすいし、思い切りの良いプレーは自信につながりやすいので意識して欲しい」と失敗を恐れずにプレーをすることの大切さを説いた。

また、将来の夢や進路に関する質問も届いた。「夢を叶えるために大切にした方がいいことは?」。中川さんが心がけていたのは次の3点だった。1つ目は「夢を叶えることは一人では難しいと思っている。夢や目標を叶えるときに家族の存在が大きかった、そして仲間や恩師を喜ばせたい気持ちも大きかった。自分のためだけに(バスケットボールを)やっていたら超えられない壁があった。周りを喜ばせたい想いは、自分自身の頑張りよりも何十倍、何百倍のエネルギーを発揮するので、その気持ちを大事にしていた」。

そして2つ目が「目標をブラさないことを大切にしていた。学生の頃から大きな目標ではなく、小さい目標を立てていた。小まめに小さい目標、中くらいの目標、大きい目標と三段階で目標を持っていた。小さい目標は『今日の練習で3ポイントを必ず決める』、中くらいの目標は『バスケットボール専門誌に名前が載るように頑張ること、白黒からカラー、そして表紙に載るようにと』。小まめに目標をクリアーして行くことで、大きい目標の『日本代表』に到達できた。夢を叶えるためには小さい目標を積み重ねることが大切だと思っている」。

最後の3つ目が、周りへの感謝だ。『恩返しやこの人のために頑張りたい』という気持ちが出てきた時に、自分がやっていることを想いに乗せると、それがもっともっと頑張る源になる」と力強く話した。

中川聴乃さんが語る“明日へのエール”

最後に“明日へのエール”を求められた中川さんは「一つひとつの積み重ねが大きな成功につながると思っている。これから先、色々な目標が出来たり、時に、その目標が変ることもあると思うが、いつも前向きにトライをして行く強さを意識して欲しい。私自身もまだまだ色々なことにトライをしていて、壁にぶつかることも多いが、その度に学びがあって成長につながる機会が大きい。『ピンチこそチャンスだと思っているし、悪い時こそ、学んでいるんだ』と前向きに取り組んで欲しい」とエールを送ると、参加者それぞれが得意なシュートポーズを取り記念撮影をし、オンラインエール授業は終了した。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

これからも、全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、「今とこれから」を少しでも前向きにしていけるエールを送り続ける。