欧州遠征第2戦。ラグビーキャピタルのひとつと言っていいカーディフでおこなわれるウェールズ代表とのテストマッチ。この1月に、このビッグマッチが発表された時点で、日本代表FWの屋台骨を支えるLOのひとりとして、“第3の男”が旧名であるミレニアムの方が通りがいいプリンシパリティ・スタジアムのピッチに立つことを想像できた人はそうはいないだろう。

 11月5日のアルゼンチンとのホームゲーム、同12日のジョージアでのアウェー戦、さらに場所をカーディフに移してのウェールズ戦。海外出身組との競争も制するかたちで、3試合連続で先発の座を勝ち取っているのが梶川喬介だ。

 ジェイミー・ジョセフ体制以前は日本代表経験なし。エディー・ジョーンズHC時代から、一部からは「ジャパンでも活躍できる」(FLマイケル・リーチ元日本代表主将)というようなラブコールもあったが、今年6月のテストシリーズでもLOのポジションで選ばれたのは東芝の先輩である大野均や後輩の小瀧尚弘などで、梶川自身は桜のジャージとは縁のない選手生活を送ってきた。

 そんな、東芝LO“第3の男”を3戦連続で先発起用する理由に関して、ジョセフHCは「とてもたくさんの仕事をしてくれているし、大きなLOを相手にプレーすることにも慣れている」と説明。梶川本人も「しっかり動いて、ワークレートの質を上げる」ことが自分の仕事という認識でいる。

 大先輩である大野に関しては、当然のように「憧れの存在」であることを認める梶川。それでも、一度、掴んだポジションは誰にも渡したくない欲も芽生えてきてもいる。
「できることならば、ジャパンのLOとして試合に出続けたい気持ちはある」

 日本代表として98キャップを誇る大野がこの秋、日本代表に選ばれていれば、カーディフでのウェールズ戦が記念すべき100キャップ試合となる可能性もあった。その大先輩からはジョージア戦後、「いい試合だった」という連絡もあったという。

 2007年ワールドカップでウェールズ代表と同じ場所で戦った際、大野が起点となった日本代表のトライが大会ベストトライにも挙げられるなど、日本代表にとっても、大野にとっても馴染み深いスタジアムで百戦錬磨のウェールズ代表と対峙することになった梶川は当然ながらセットプレーでもキーマンになる。
「スクラムでは前1列に壁をつくってあげて、後ろからの力を伝えてあげる。ウェールズはラインアウトの技術も高いので、しっかりジャパンのラインアウトをして、ボールを確保するのが目標」

 自ら「緊張するタイプ」と言うが、試合であがらないためのルーティーンなどは持ち合わせていない。「1試合、1試合、経験を重ねていくしかない」
 ラグビープレーヤーなら憧れない選手はいないだろう、“ミレニアム”でのウェールズ戦。当然、梶川自身の、そしてジャパンの将来にとって、かけがえのない経験となることだけは確かだ。(文:出村謙知)