「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第28回目の講師は、“ソフトテニス界の若きエース”で、2015年全日本シングルス選手権で史上最年少優勝を果たし、同年には日本代表…

「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第28回目の講師は、“ソフトテニス界の若きエース”で、2015年全日本シングルス選手権で史上最年少優勝を果たし、同年には日本代表として世界選手権国別対抗戦で金メダルを獲得。2019年にはソフトテニス界初のプロ選手となり、国内外、数々の大会で活躍をする船水颯人さんだ。全国高校ソフトテニス部の現役部員約25名や顧問の教員が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

「休む勇気」

画面に登場した船水さんは、早速、この授業に参加した高校生に「最近は練習が出来ていますか?」と話しかける。すると「はい。週6日、練習しています」と元気良い返事が届くと

「僕よりやっている。(笑)」と冗談を飛ばし緊張を和ませた。そして「僕は自粛期間、一切練習が出来ていなかったので久しぶりに練習をして最近は夏バテです(笑)。今日は高校時代のことを、色々と思い出してアドバイスをしていきたい」と話した。

その中、船水さんは高校時代を振り返り「いわゆる、テニス馬鹿だった」と口にした。家族がソフトテニスをしていたこともあり、ラケットを握ったのは3歳の頃。小学4年時に始めると、そこからのめり込んだ。「当時はインターハイに憧れていた。日本代表に入るためには、インターハイで勝つことで代表入りのチャンスが掴めると思ったので必死で頑張っていた」と振り返った。その高校時代に培ったのは“休む勇気”だった。「思い返せばやりすぎていた。勝ちたい気持ちが強かったこと、休んだら弱くなってしまう、他人に差をつけられないなどの理由で練習を休む怖さがあった。120%でやっていたので大学2年の時に怪我をしてしまった。そこから自分の中に(プレー強度を計る)メーターが出来た」と自身の中に指標を作ったことを明かした。リカバリーをし、休むことも練習の一環なのだ。

まずは技術面についての質問から。「ファーストサーブとセカンドサーブに違いを作るには?」との質問が飛ぶと、耳を傾ける高校生に船水さんは「僕はファーストは70%、セカンドは50~40%の力で打っている。最初から100%で打ってしまうと確率も悪くなり、サービスエースを狙う時だけ90%の力を出す。力の指標は自分にしか分からないと思うので、例えばサーブ練習の時に、一番サーブが入る力の確率を探すことがベストだと思う」と答えた。

そして船水流の緊張の解き方を次のように語った。「僕も大事な大会で手が震えたりする。緊張すると思った以上に余計な力が入ってしまうことがあるので、練習ではそれを計算して逆に力が入ってしまった場合でも80%ほどの力に抑えられるようにしている。試合の時にプラス10%近くの力が余計に入ってしまうと感じているのであれば、練習の段階では50~60%の力で打つことで、試合中に緊張しても良い感じでサーブが入ると思う。その代わりに練習では50%の力でミスをしないように心がけることが大切。例えばダブルフォルトをしてもポジティブな思考にすることが大事になるので思考を変えて練習して欲しいし、サーブは数を打てば、何とか自分で掴めるようになるので」と、ソフトテニスではサーブが唯一自分から始まるショットになるからこそ、日頃の練習で感覚を掴むことを説いた。

「レジリエンス力」

オンラインエール授業は進んで行き、メンタルを中心とした質問へと移った。

「うまくいかない時、結果を残せなかった時など、モチベーションを上げるためには?」との質問に対し、船水さんは冒頭でも触れた“休む勇気”の重要性を交えながらアドバイスを送った。「自分が弱いと分かっていたので、高校生から大学2年までは、とことん練習をした。ただ結果が出ると“休む勇気”も必要になってくる。停滞期にやり過ぎてしまうと逆に怪我をしてしまう。大学2年の冬に『躓いて何かうまくいかない、モチベーションも上がらない中で、人一倍頑張って練習してやるぞ』と思い、練習をやり過ぎて膝を怪我してしまった。そこから思い切って2カ月間、休んだら新鮮な感覚があり、気持ちを切り替えられた。辛抱や追い込むことも大事だが、自分は小さなことを考えるのではなく、いつか来るチャンスのためにやっている。うまくいかず凹むこともあるが、実際に第三者が見ても映像を見直しても、何も変わっていない。自分で自分を責めすぎないことも大事で、ずっと同じ気持ちでいることが大切。今は大事な試合の前では、どん底まで落とし、そこから休んでテニスに飢えている気持ちを作っている」。

オンとオフのメリハリを付けながら、モチベーションコントロールと底から這い上がるレジリエンス力を磨いたのだ。

「夢を追いかけてきたが、本格的に将来のことを考えるようになり、それが本当にやりたいのか分からなくなった。今一度、夢を考え直すべきか?」と質問を受けると、船水さんは自身がプロを目指した理由を話した。「プロになろうと大学3年の冬に決めて、ゼロからのスタートだった。周りもネガティブで『無理だろう』と厳しいことを言われたが、それをエネルギーに代えて『やってやろう!』と。それで今がある。一度決めたことがブレるとうまくいかないし、何事も自分の芯を持ち続けることが大事で、頑固になり過ぎてもいけないのだが、最終的に夢があるのであれば色々なことを吸収して行くことも大事だと思う。それぞれが目指す夢は違ったとしても臨機応変に対応し最終的にはそこを目指せばいい。信念を貫いてもらえばチャンスが来た時にチャンスを掴めるようになる」と夢に進んで行くための熱い想いと言葉を響かせると「全国の舞台も知らない田舎のテニス少年がいつか日本代表になりたいと思って、まさかのチャンスが来た時に一発で掴めた。いつかチャンスが来ると信じてポジティブに捉えてブレずに頑張って欲しい」と応援した。

船水颯人さんが語る“明日へのエール”

最後に“明日へのエール”を求められた船水さんは「(新型コロナウイルスの影響で)僕も当たり前のように練習できていたことが出来なくなったことで、今の環境があることを感謝し練習をしている。必ず突破口は見えてくるので、いつか来るチャンスのために頑張ろうと決めている。みんなも大会が中止となり出来なかったことなど色々な感情があると思うが、それをエネルギーに代え爆発して欲しい。引き続き一緒にソフトテニスを頑張ろう」と渾身のエールを送ると、最後に親指と人差し指を重ねてハートの形を作って記念撮影をし、オンラインエール授業は終了した。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

これからも、全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、「今とこれから」を少しでも前向きにしていけるエールを送り続ける。