「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第27回目の講師は、8歳から剣道を始め、インターハイでは個人・団体で優勝。全日本選手権では3度の優勝を誇り、世界選手権の団体戦で…
「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第27回目の講師は、8歳から剣道を始め、インターハイでは個人・団体で優勝。全日本選手権では3度の優勝を誇り、世界選手権の団体戦でも3度の優勝を果たすなど国内外の大会で活躍をする内村良一さんだ。全国高校剣道部の現役部員約80名や顧問の教員など約90名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。
「人は逆境の時に真価が問われる」
画面に登場した内村さんは、この授業に参加する高校生に挨拶をする。「新型コロナウイルスの影響でインターハイが中止となり、苦しく悔しい思いをしていると思う。自分も悔しい思いをしてきたが、自分が出会った言葉の中に『年寒くして松柏の凋むに後るるを知る』があり、その意味は『人は逆境の時に真価が問われる』というもの。今日は逆境の中で一歩を踏み出せるヒントになる授業になればと思っている」と話した。
まず内村さんが剣道に打ち込んだ高校時代のエピソードに。「憧れていた九州学院高校に入り、365日稽古に打ち込み、稽古をしなかった日はなかった。日本一を目標に頑張っていた」と振り返った。
その中、高校時代に得たモノが“諦めない”ことだった「2年生の時に大将の役目を担っていたが勝てない時期があり、先生や先輩、仲間に迷惑をかけてしまった。そこから学んだことは絶対に諦めないことだった。禅の言葉に『窮して変じ、変じて通ず』がある。それは、一生懸命にやれば必ず壁にぶつかり、逃げるのではなく何回もぶつかることが力になることを高校時代に学んだ」と、人生の土台と言うべきものを青春時代に培った。
そして技術面についての質問からスタートする。「攻め方のバリエーションを増やすには?」との質問には「中心を攻めることが大事で、相手が来るのか、避けるのか、それだけでもパターンは増える。もう1つは、技は自分で作るもので、真似をしたり、ヒントを得て作って試す。失敗をしても、そこに成功のチャンスはあるのでチャレンジして欲しい」と答える。続いて「高校時代に成長したと思った練習方法は?」と訊かれると、内村さんは「今に至るまで続けてきたのは素振り。稽古の時、稽古以外の時にも隠れて素振りをし、そして努力をすることが大事。私の師匠である森島健男先生には『剣道の修行は平凡なことの繰り返し、誰にでも出来ることを誰も出来ないくらいにやること。これが剣道の修行だ』と教わった。人が見ていない時に、どれだけ出来るのか、それが一番の近道だと思う」と基本の素振りを繰り返し、体に染み込ませることの大切さを語った。
「苦しさ、悔しさに意味を持たせる」
メンタル面でも多くの質問が飛んだ。
「試合前に緊張して自分の技が出せない。試合前はどういう気持ちで臨んでいるのか?」と問われると、内村さんは医学的根拠をベースに「人は安静時心拍数が1分間に70前後と言われているが、この状況では力は発揮できない。心臓がドキドキし、息がハアハアしている時は150以上になり、うまくはいかない。(一般的に)一番実力が発揮できる120から150に持っていくために呼吸法がある。プレッシャーを感じた時に呼吸を落ち着けてベストな状態にする。剣道では稽古の時に正座をし黙想しながら呼吸を整えるが、そこに持っていく手段を稽古からやることで、緊張した時に『これは実力を発揮するために必要な条件なんだ。誰にでも緊張は来ることなんだ』と、考えることで第一歩が進めると思う」と冷暖自知が一番大切なことだと話した。
また「高校3年の自分は、コロナウイルスの影響で引退試合がないまま引退を迎えた。追い込まれた状況で、どう新しいステップに行くのか?」との悩みに対し、内村さんは「今、起こっている苦しいことや悔しい現実に意味を持たせるのも自分自身。未来に立った時に『この経験があったから今があるんだ』と言えるように一歩を踏み出す。現実に意味を持たせるためにも、しっかり受け入れて頑張って欲しい」と日本一の剣士はエールを送った。
「試合に勝って顧問の先生を喜ばせたいが、目標達成が出来なかった時に、どんな恩返しをしたらいいのか?」と、感謝の気持ちを伝える方法を問われると、内村さんは優しい口調で次のように言った。「もちろん勝って喜ばせたい思いは大事だが、先生方は、みんなが一生懸命に頑張ることで喜んでくれる。私も色々な先生に教わってきたが恩返しは出来ていない。ただ受けた恩を忘れないことは出来る。教えてもらった恩を胸に刻み頑張ることが一番の恩返しになると思う」。
内村良一さんが語る“明日へのエール”
最後に“明日へのエール”を求められた内村さんは「この苦しさや悔しさに意味を持たせる。この逆境がったからこそ、今があると言えるように毎日を頑張って欲しいし、みんなと会って剣を交えることが来る日を楽しみにしている」とエールを送ると、最後に剣道らしい正座の姿勢ポーズを取り記念撮影をし、オンラインエール授業は終了した。
今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。
これからも、全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、「今とこれから」を少しでも前向きにしていけるエールを送り続ける。