「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第26回目の講師は、高校時代からアーチェリーを始め、3年時にジュニア選手権に出場し、第57回国民体育大会では優勝。そしてアテネ、…

「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第26回目の講師は、高校時代からアーチェリーを始め、3年時にジュニア選手権に出場し、第57回国民体育大会では優勝。そしてアテネ、北京、ロンドン、リオデジャネイロオリンピック4大会連続出場し、2012年ロンドンオリンピックでは個人銀メダルを獲得。2015年世界選手権大会個人銅メダル、2018年アジア競技大会ミックス金メダルを獲得した日本が誇る“アーチェリー界のエース”古川高晴さんだ。全国高校アーチェリー部の現役部員や顧問の教員など約30名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

「誰よりも練習することを心がけている」

古川さんは、参加した高校生に挨拶をする。「インターハイが中止になり、なかなか練習も出来ないもどかしい気持ちやネガティブな気持ちもあると思うが、それをポジティブな気持ちに変えられるよう、今日は皆さんの質問に答えていきたい」。

まずは古川さんの高校時代の話題に。「弓道部に入りたかったが、入学して高校にはアーチェリー部しかなく、いざ入部して始めると弓道のことなど忘れ、アーチェリーにのめり込んでいた。練習を見学をし、先輩が弓を射る姿がカッコよくて、早く自分も弓で矢を飛ばしてみたいと思った(笑)」。と話した。

穏やかな顔の古川さんだが実は相当の負けず嫌いでもあった。「当時、大きな目標というのはなく部活のライバルに負けたくなくて、負けて悔しくて練習し、勝って嬉しくて次も勝てるように練習をした。目の前の相手に勝ちたいだけだった」と明かした。

高校3年時に国体で優勝したのだが、一歩も引かない強い気持ちが、その後のキャリアにも大きな影響を与えていた。古川さんは「負けず嫌いで、とにかく人よりも練習をしたかった。ライバルが帰宅すると5分、10分、30分でも残って練習をしていた。人よりは努力したと思うし、今も、それは一緒で誰よりも練習することを心がけている」と話した。

早速、技術的な質問からスタートする。「道具のメンテナンス、そして交換時期について?」を質問されると、古川さんは「道具を使って、道具を飛ばすので管理はとても大切。弦は1万射で1カ月で交換し、矢は1年100本使っている。羽はちょっと壊れたら直ぐに変えて欲しい」と言うと「試合前には道具の準備を確実にして、羽を張り替える。道具のチェックをすることを忘れない」と続けた。

そして「疲れを翌日に持ち越さないためには?」という質問に対しては「バランス良く食事を摂ること、十分な睡眠をとること。横になるだけでも体は休まる。特に連戦では試合運びを考えている」とアドバイスを送った。

「自分より緊張している人を見つけることで余裕が出来る」

後半は、メンタル面や将来についての悩みについて。

「試合中、緊張して力んでしまい弓が引きにくくなってしまう」という悩みに対し、古川さんは「メンタルの質問が一番好き(笑)。緊張というのは、みんな興味があると思う。一度してしまうと緊張を解くことは出来ないので事前準備が必要になる」と切り出す。「試合にたくさん出れば緊張は少なくなる。深呼吸や事前準備をしっかりするなどの対処法もあるが、先ほど『一度した緊張は解けない』と言ったが1つだけ秘訣がある。それは自分よりも緊張をしている選手を探すこと。2007年北京五輪のリハーサル大会で1対1の勝負時に、自分は緊張で足が震えていた。しかし、ふと相手選手を見たら僕よりも足が震えていた。『自分たけじゃない』と思ったら気持ちが楽になった。試合では自分より緊張している人を探してみて欲しい。気持ちに余裕が出来るので試してみて欲しい(笑)」と古川さんは答えた。

次に「オリンピックに出たい、メダルと取りたいと意識したのは?」との質問には「2004年アテネオリンピックに出場した後に、オリンピックに出たいと意識をした(笑)。(アテネでは)ただ目の前の大会に頑張ったらオリンピックに出場することが出来て、夢舞台でもあり楽しいという思いが一番だったが、個人では2回戦で敗退し、それから『この舞台で戦いたい』と思った。メダルを取りたいと思ったのは、心の奥底ではあったかもしれないがメダルは意識していなかった。自分の力が世界で通用するのかを意識して、少しずつ実力がついてきてベスト16、そして8まで行ける力が上がってきた」と当時の思いを振り返った。

また「進学先に近畿大学を選んだ理由について?」を訊かれると「体育の教員免許を取って地元に帰ろうと思っていたが、近畿大学には体育の免許課程がなかった。でも近畿大学はアーチェリーの強豪校。まず4年間、一番強いところでアーチェリーして勝負を賭けてみようと思った」と語った。因みに古川さんは公民の教員免許を取得したとのことだ。

古川高晴さんが語る“明日へのエール”

最後に“明日へのエール”を求められた古川さんは「インターハイだけが勝負の場ではない。アーチェリーを続ける限りはもっと大きな舞台を目指して欲しいし、辞めてしまう人も大きな目標や夢を描いて、その夢を叶えるために日々、努力すれば結果はついてくる。自分が決めたことに対し努力をし続けて欲しい」とエールを送ると、最後に弓を引いたポーズを取り記念撮影をし、オンラインエール授業は終了した。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

これからも、全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、「今とこれから」を少しでも前向きにしていけるエールを送り続ける。